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意味のないもの(4)
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その人は、私に話しかけてきました。
「おもしろい形ですね。」
「ええ・・・まあ・・・。」
「おいくらですか?」
(えっ? 買って下さるの?)
「500円です。」
私は適当に答えました。
その人は500円を払うと、板を持ち上げました。
「あのう・・・これをどうなさるのですか?」
「えっ? ああ・・・。」
その人はちょっぴり恥ずかしそうに笑いました。
「苔を植えようと思って・・・・。」
「苔ですか・・・。」
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「ええ。苔玉はたくさんあるのですが、
こんな形も面白いなって思ったんです。
よいものをありがとう。また、ご縁がありましたらお願いします。」
500円を手にした私の脳内に流れてきたのは
ラジオで聞いたあのフレーズ。
「・・・あなたにとって不要なものでも
だれかにとっては必要なものかもしれません・・・」
(つづく)