
野乃姫(5)

姫は15歳になり、縁談がもちあがった。
相手は翁と言っていいほど年齢を重ねた大臣だった。
いいも悪いもなかった。
(運命を受け入れるしかないのだ。)
そう思っていた。
☆ ☆ ☆
「本当によいのですか?」
いつのまにか、風丸がそばにいた。
いつものように。
風丸は、もう童ではなく立派な若者になっていた。
「あなた様は、野に捨てられていたのを、
この家の女房に拾われてきたと聞きました。
もし、あなたさえよければ、外の世界へ戻りませんか?
私といっしょに。」
(つづく)