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野乃姫(3)

野乃姫様が6歳の時、御前様は二人目のお子をお産みになった。
元気な男の子だった。
ところが、今度は御前様自身が命を落とされてしまったのである。

家中が悲しみに包まれたが、
お世継ぎを立派に育てなければ、という大義のもと、
皆の耳目は男の子に集まった。

こうなると、実子ではない野乃姫様は厄介者となった。

だれにも相手にされず、ポツンと一人でいることが多くなった。

そんな姫の元へ、家の者の目を盗んで、やってくる者があった。
屋敷に、野菜や花や魚を届けにくる童だった。


(つづく)