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くそゲーマー、母を語る①

私の母は、一言で収めるとドがつく天然である。

齢50を過ぎても尚、時折少女のような笑みすら浮かべてくる。娘の私ですら未だに何を考えているか分からない謎めいた女だ。

ただ確実に言えることは、彼女は仕事人として立派に勤めを果たす社会の構成員であるということだ。

そんな母と私の思い出を任天堂スイッチで9月に発売されたスーパーマリオ3Dコレクションでせっかく思い出したので、夢中になったスーパーマリオサンシャインを巡る当時の記憶を書き留めておきたいと思う。

もう20年近くも前になってしまうのか…。任天堂のゲームキューブ(以下GC)は当時小学生の私の心をときめかせた。

我が家ではゲームは基本的に禁止されていた。本当はファミコンやゲームボーイアドバンスが欲しかったのだが、どんなにお願いしても買ってもらえなかった。友達は買ってもらってるのに、どうしてうちは駄目なのか、いつも疑問で母親を問い詰めていたものだ。

母は「頭が悪くなる。」「目が悪くなる。」などネガティブな理由を主張して、どこにそんな根拠があるのかよく分からない小学生に、いかにもそれが「絶対的な正しい答え」のように異論は許さない口ぶりで「ダメなものはダメ!」「よそはよそ!うちはうち!」と毅然と諭すのであった。

しかしながら、買ってもらえたゲームもあった。それはデジヴァイスである。(これは後ほど書くことにする。)

しかし、突然風向きが変わったのか、何度もせがむ我が子を哀れに思ったのか、兎にも角にも、ゲームなぞ絶対に許されなかった我が家に初めて迎え入れられたハードがGCだった。

同時にGCを迎え入れる条件が提示された。

その条件とは、

•必ず宿題をやってから遊ぶこと。

•GCは1日30分。(後に1時間に拡張される。)

•母の前で遊ぶこと。

私と私の弟たちは母としっかり指切りげんまんをした。

が、約束が破られるのは時間の問題であった。

どの約束から破ったかは忘れたが全ての約束を破ったのは間違いない。ゲームは私たち姉弟を狂わせた。それまで我慢してきたものが一気に爆発したのか、単純にゲームが楽しかったのか、何でも良いけど狂っていたのは間違いない。(JON(仮名:父的な人)はいるのかいないのか分からない毎日。母は夜勤、遅番などで平日はほとんどいない。故にゲームをしすぎても咎める者がいない、と思っていた。)

そして、母にバレることなくゲーム三昧だったのだが、私の中で後世まで心の中で語り継がれるであろう悪女HAYAKO(仮名:祖母にあたる人物)が母にチクるのだった。約束を破ってゲームをしているところをHAYAKOに見られた時、「ママには秘密にして?お願い!(うるうる涙)」と頼んだら、「分かっだ、分かっだ。言わないでおぐからな。」と言われ、HAYAKOは話の分かる奴だなと子供ながら感心していた。

(当時の我が家は同じ敷地内で祖父母と別居していた。)

だが、母は帰ってくると、隠れて私たちがゲームをやっていることを知っているのであった。何故知っているのか一瞬戸惑ったが、HAYAKOのせいだと少し考えたら分かった。母に怒られたことより、重大な約束を破ったHAYAKOへの怒りでいっぱいだった。最初に約束を破った自分たちは棚に上げて。

母は子供たちにゲームをやらせないように、アダプタをどこかに隠した。

しかしながら、我が弟はどこからともなく見つけてくるのだった。何故か見つけられる弟が不思議でならなかったが人間観察に長けていたようだ。

それもバレて、遂に母はGCのアダプタを職場に持ってゆくことになる。しかしながら代理のアダプタを見つけては秘密のゲームを続行した。そして、HAYAKOがチクり、母に怒られるの繰り返しであった。

(遂にアダプタが無くなった時、私は学校から持ち帰った理科の実験道具で手製のアダプタを作り、コンセントを爆発させる事件を起こす。が、これはまた別の話である。)

気づけば母は本体まで職場に持って行ってしまうようになっていた。

ゲームができない日々は退屈だった。当時人口5000人の山村地帯に娯楽などなく、まあまあエキサイティングするのはサワガニ取りかドジョウすくいだった。

数ヶ月経ち、母の怒りが収まったのか規制が緩和された。

遂にGCが子供たちの元に戻ってきたのだ。

GCの中でピクミンやマリオカートなどいろいろあったと思うが、特に熱を燃やしていたのがスーパーマリオサンシャインだった。

スーパーマリオサンシャインのマリオが背負う水の入ったポンプで島の汚れを流しキレイにしてゆくというシステムは、現在、任天堂スイッチでも圧倒的人気を誇るスプラトゥーンのシステムの原型と言われている。(ジェットパックなんかポンプくんの第二形態そのものだよね。)

そして、クッパはもちろん倒すのだが、島に散ったシャインというモニュメント的なものを120個集めるというゲームだった。

120個集めるのは本当に大変だった。最後はマグマを泥舟で渡るステージで青コインの回収だった。青コインは10枚でシャインと交換できる。これが本当に取れなくて何度もくじけていた。

10枚目の青コインを集めてシャインと交換!

遂に120個のシャインがこの手に!

これは…真のエンド…くる…!?

ぼく、最強!ヒャッハァ!!!!!


自分に酔いしれる絶頂で母に見つかり目の前でサンシャインのディスクをハサミで真っ二つに切られ、脅威の強度を誇ったGCを納屋のハンマーでぶっ壊された。

衝撃で涙も出なかったと思うが、そこからの記憶は覚えていない。

よくよく考えると、JON(仮名:父的な人)は不倫に勤しみ仕事もできないクソ野郎で、対して母は家事を全部こなして、仕事も本当に大変そうであった…。だからこそ愛する子どもたちに約束を破られたこと、裏切られたことが本当に許せなかったんだと思う。

ただ、あのGCをぶっ壊したのは凄い。(物理的にも精神的にも。)ちょっとやりすぎな気もするが。


そんなこんなで、とりあえずスーパーマリオサンシャインの真のエンドを知らない。


大人になって親から完全に自立した今(が、現在絶賛無職)、かつて夢中になったゲームの真のエンドと一緒に、過去の事件を精算する時がきたのだろうか。

スイッチのスパーマリオ3Dコレクションはまさにお告げのようにCMとして私の目に飛び込んできた。

だが、かつてほどのエネルギーがない今、シャイン120個集められる自信はない。

サンシャイン、まじで難しいよ。


つづく


#母 #ゲーマー #スーパーマリオ #ゲームキューブ #任天堂 #スーパーマリオサンシャイン #エッセイ







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