簿記1級の独学はやめたほうがいい
こんにちは。2024年11月17日に日商簿記1級168回試験を受けてきました。同じく受けた方はお疲れ様です。結果は2ヶ月後ですが、ここでは受験生活を振り返っての感想や反省を共有出来ればと思います。
勉強開始から試験まで
元々簿記2級までの学習は済んでいたのですが簿記2級は取得しておらず、今年7月に簿記2級の勉強(復習)を始め今年8月にネット試験を受けて合格、そこから簿記1級の勉強を始めました。2級がすんなり受かったことで1級もいけるだろうという油断と、お金をかけたくないという気持ちがあって独学の道を選びました。受験勉強もほぼ独学で乗り切ったので簿記1級もいけるだろうとたかをくくっていました。
テキストはスッキリわかるシリーズを使いました。まずテキストをみて思ったことが、「量多すぎない?」でした。商業簿記4冊、工業簿記4冊の計8冊、ページ数にして2000ページを超える分量で、2級が商業簿記1冊、工業簿記1冊の2冊だったのに対してその4倍です。この時点で「見通しが甘かったか?」とよぎります。
テキストは3周しました。1周目はまともに理解できなかったですが、2周目3周目と回していくにつれ、どんどんと問題を解けるようになっていく感覚が楽しかったです。はじめはテキスト2周で切り上げて過去問に進もうという気でいたのですが、テキスト2周目が終わった時点で過去問を解いてみたら結果は34点で、「基礎を固めないと話にならない!」ということで、追加で1周回すことにしました。3周目を終えるころにはテキストの問題はほとんど解けるようになってました。「よし、今度こそいけるぞ!」となって過去問に進みます。ちなみに過去問を解き始めたのが試験3週間前です。(やっぱり時間足りてないじゃないか!)
過去問を解き始めると、50点台〜70点台で点数が推移します。3周目をやったおかげで初めて解いた時より点数は上がりましたが、それでも合格点に届くことは少なかったです。3周もやったのになかなか合格点が取れなかった要因は出題形式への対応力とテキスト読み込み量の不足です。出題形式への対応というのは、たとえば商業簿記の問題で「配当金を仮払金として処理している」といった記述があったときに、すぐに仮払金を繰越利益剰余金の減少額に振り替えることを思い浮かべられるかどうかといったものです。一度経験してしまえばなんてことのない仕訳ですが、初めてこれを見た時にはどう処理していいか分からず時間をかけてしまいました。次に、テキスト読み込み量の不足に関して、簿記1級はテキストの隅から隅までが出題されます。例えばテキストで参考程度に小さく載っている事業分離や貸手側のリースの処理の問題についても解けなくてはなりません。また、テキストに細かく載っている言葉の定義に対してまで正確な知識が求められます。例えば段取時間は直接作業時間に含むだとか、外部副費には何が該当するかだとか、そういう細かな知識で数点や十数点が変わってしまいます。前者に関しては独特の問われ方のパターンを経験すれば対応出来るようになりますが、後者に関してはテキストの簡単な問題を解くだけなら必要のない知識までも過去問では要求される事がわかって、いよいよ時間が足りないとなってしまいました。
反省点
①必要勉強時間の見立ての誤り
ネットでは簿記2級の必要勉強時間が300時間、簿記1級の必要勉強時間が600時間というふうに言われていますが、体感ではこれとは大きくズレている感じがします。簿記2級は200時間もかければ余裕を持って受かると思いますが、簿記1級はその4倍の800時間を費やしても合格するかどうかは怪しいんじゃないかと思います。それだけ簿記1級は範囲が広大で、しかも一つ一つに正確な知識が求められるということです。僕はこのネットの情報を鵜呑みにして!3ヶ月という無茶なスケジュールで挑んでしまいました。簿記1級を受けるなら少なくとも半年前から余裕を持って勉強を始めるべきです。べきでした。はい。
②独学の非効率性
次に、独学の効率の悪さについても痛感しました。簿記1級は相対評価の試験です。だから皆が出来るところは落としてはならないし、皆が出来ないところは落として良いのです。そしてこれはテキストには載ってない情報で、独学の人がこれに対する細かい情報を手に入れるのは難しいんじゃないかと感じました。逆に資格学校に通う人は、皆が出来る論点を確実に得点出来るように、皆が出来ない論点を流す事が出来るようになります。この力の入れ具合が分かるか分からないかで効率はかなり違うんじゃないかと思いました。
③知識問題への対応
これも独学の非効率性と通ずるところがありますが、テキストを読んだだけでは知識問題への対応は難しいのではないかと感じました。テキストに載っているのは主に仕訳や問題の解き方で、その背景にある会計知識を得られることは少ないです。よって、会計知識の問題が出たときに(毎年10点くらいは出る)テキストだけではなかなか太刀打ちが出来ないと感じました。10点は十分合否を分けます。これは独学云々よりテキストへの不満かもしれませんが、資格学校に通えば重要なところは絶対習得出来るので、独学者にとって知識問題が不利なことには変わりないです。工業簿記原価計算についても、テキストでは触れられていない原価計算基準についての出題が頻出だったり、過去問を解いていて「おいおい習ってないぞ」となることが多かったです。
結論︰独学はやめよう!
タイトルの通りです。どうしてもお金が足りないといった事情がない限り、独学はおすすめしません。数万かけて学習時間の短縮と合格率の向上が得られるのなら安すぎる。独学でやってきて少なくとも僕はそう思いました。合格発表までは少しのんびりしつつ、簿記論と財務諸表論の勉強に取り掛かろうかなと思います。それでは。