ライブの席運無かったけど、幸運なことになった話。
〇〇:はぁ〜、ハズレ席かよ!?
バイトから帰ってきて、急いでコンビニに行き乃木坂のライブのチケットを発券した。
モバイル先行1次で申し込んで無事当選したから、それなりに良い席を期待した。
アリーナだったら一番良いけど、そうじゃなくてもステージに近い席とか、
トロッコの通路付近の席とか、とにかく何かしら利点がある席に当たればと願って発券した…
けれど、結果は天空席だった。
ステージから遠いのは勿論、その上席からはステージの端しかほぼ見えなくて正面が見えない場所で、ほぼ見切れ席と言ってもいいくらいの場所だった。
〇〇:1次でこれとか有り得ないだろぉお!?
〇〇:はぁ〜、クソすぎる。マジでクソすぎる…
大学4年になって一人、アパートの一室で愚痴っていた。
ー大学の教室ー
教授:え〜つまるところ、この研究においては…
〇〇:(はぁ〜、だるいな…)
いつもなら苦に感じない講義の話も、退屈に聞こえてしまい溜息が都度出ていた。
教授:では、今日はここまで。
〇〇:(やっと終わったのかよ、長かったわ…)
体感時間がいつもより長く感じて、今日受けるべき講義の一個だけを過ごしただけで既に疲労感が漂っていた。
ーゼミー
?:いや〜来週中間発表あるじゃん?原稿がまだ終わってなくてさ…
?:マジ?やばくない??
?:やばい、誰か助けて〜笑笑
〇〇:おい、うるせーぞ!!
いつになく、大声で怒鳴ってしまった。
?:え、あっ…すまん。
?:あ、〇〇はどうなの?
〇〇:あぁ?何が?
?:え、中間発表のやつ。
〇〇:んなの終わらせたに決まってんだろーが。
?:おお、流石…
?:あ、良かったらさ…
〇〇:手伝わねーからな??
威圧的になっていて、ゼミ仲間たちに怖がられているのも無理なかった。
ー塾ー
生徒:すいません、宿題やるの忘れてて…
〇〇:えぇ…
〇〇:ちゃんとやってこいって言ったじゃん!
〇〇:お前ここの分野苦手なんだからさ!!
生徒:すいません、本当に…
〇〇:やる気あるの?
〇〇:無いならやめても良いんだからな?
などと、生徒のやる気を削ぎかねない発言もストレスからかしてしまった。
チケットの結果は、日常生活にも影響が出ていた。
〜三日後〜
〇〇:(ちょっとやばいかな…)
ここ数日の自身の悪態に関して、流石に我ながら危機感を感じられたのはまだ救いがあるのかと勝手に思っていた。
悪態を晒していたのは変わりないが…
ー構内 カフェテラスー
〇〇:スゥ〜
コーヒーを片手に、自信を鎮めようと休んでいた。
と、そこに…
?:あ、〇〇先輩!!
久しぶりに聴いた声がして振り返ると、
〇〇:おぉ、池田!
3ヶ月ほど留学に行っていた後輩の池田が、手を振ってこちらに向かってきていた。
〇〇:あれ?今日帰ってきたの?
瑛紗:はい、本当は明日のはずだったんですけど…
瑛紗:飛行機のチケット取る時間を間違えちゃって。笑
〇〇:えぇ!?大変だったじゃないのそれ。
瑛紗:もう本当大変でしたよ〜
瑛紗:でもキャンセルも出来ないから、仕方ないんで一人でブチギレながらなんとか帰るのに間に合わせて…
瑛紗:あぁ!!本当だったら、ハリウッドとか観光行けたのにー!!!
〇〇:はは、ドンマイすぎるなそれ!
瑛紗:めっちゃショックで飛行機の中で一人で号泣してましたよ…
〇〇:あちゃ…
そんな後輩の話を聞いていると、自分が情けなく思えてきた。
〇〇:おし、池田。
瑛紗:ふぇ?
〇〇:焼肉奢ってやる!
瑛紗:え、叙々苑ですか!?
〇〇:ばか!今から行くわけないだろうが!
瑛紗:冗談ですって笑
〇〇:まぁ…いつかは連れてってやる。
瑛紗:じゃあ、約束ですよ〜?
〇〇:おう。
そんな約束を交わして、食堂の方に二人で向かった。
ー食堂ー
瑛紗:く〜、美味い!!!
瑛紗:3ヶ月ぶりのここの焼肉、たまんないです!!
〇〇:良かった、奢りがいがあるよ。
瑛紗:やっぱ学食は日本が一番ですよ。
〇〇:え、あっちではどんなの食べてたの?
瑛紗:え、それはもう…
などと、留学先での食糧事情やその他の話を聞いて二人で盛り上がっていた。
瑛紗:あ、そうだ!
瑛紗:今度の土日、ついにライブですよ!乃木坂の!!!
〇〇:そ、そうだな…
瑛紗:先輩ありがとうございます!チケット連番で取ってくださって。
〇〇:ああ、それなんだけど…
瑛紗:何か、あったんですか??
池田には申し訳なく思っていて言わないでいたが、話題になるのは避けられないのは分かっていた。
〇〇:そのな、今度のライブなんだけど。
〇〇:席、天空席なのよ…
瑛紗:天空席?
〇〇:まぁ、要はステージからめっちゃ遠いところなのよ。
瑛紗:あらら…
〇〇:折角池田が初めて行くライブなのに、良い席当てられなくて本当ごめんな…
留学の最終日あたりで観光行けなくなって落ち込んでいたところに、更に追い討ちをかけるようなことを伝えることになった。
と思っていたが…
瑛紗:大丈夫ですって、先輩。
瑛紗:だって、ライブに行けるって決まっている時点ですごく嬉しいですよ?
〇〇:池田…
瑛紗:まぁ、実はちょっと期待していたんですけどね。先輩なら良い席当てられるってのは。
瑛紗:ほらよく言ってたじゃないですか、アリーナ当てたことあるとか、トロッコ目の前通る席当たったとか。
〇〇:言ってたな。
瑛紗:だから、正直今回その…天空席って言うんですか?そこになっちゃって悔しいのって先輩ですよね。
〇〇:!
瑛紗:もし私だったら、数日くらいブチギレ状態続いてたかもしれないですね。
瑛紗:って、なんか知ったような口聞いてすいません。笑笑
〇〇:いや、全然。
ここ数日の自分を言い当てられたような気がして、流石だなと思って笑いそうになった。
瑛紗:でもステージ全体が見えづらかったりしても、ライブって楽しいんだろうな〜って思ってますよ。
瑛紗:その推しタオルをかけたり。
瑛紗:ほら、あのペンライトとか振ったり〜
池田がエアでペンライトを振る真似をした。
瑛紗:あとは、コールって言うんですか?あれをファンみんなでするのとか、すっごい憧れですよ。
瑛紗:あの一体感ってすごいな〜っていつも思っていたから、それに加われるのが凄く嬉しいですよ、私は。
そんな話を聞いていたら、なぜか瞼が熱くなっていた。
瑛紗:え?
〇〇:え?
気づいたら、頬が濡れていた。
瑛紗:もしかして、感動のあまり…
〇〇:かもな。
瑛紗:ふふ、熱いですな〜先輩は。
〇〇:茶化すなって笑笑
今になって、最初にライブに参戦した時のことが蘇ってきた。
ステージの周りの客席が全部埋まっていて圧巻されたこと。
ライブが始まると必ず流れるあのOvertureで、初めて聞くのに一気に世界観に飲まれていったこと。
画面越しの存在でしかなかったメンバーたちが、ステージに立って歌って踊って輝いているのを生で見れたこと。
曲に合わせてペンライトを振ったり、コールしたりしたこと。
どんな席でも、みんながライブの参加者でライブを盛り上げるために必要な存在だということを…
〇〇:ありがとう、池田。
〇〇:すっごく元気でたよ。
瑛紗:いえいえ、これくらいしか出来ませんし。
俺には勿体無いくらい、良い後輩だなと思った。
そして、ライブ当日。
ライブ開始前に天空席に二人で座り、ライブが始まると立ち上がってペンライトを振ったり、コールをして盛り上がって。
あんなに席のことでグダグダ言っていたのが嘘みたいに、今までで一番ライブを隣の池田と一緒に楽しんでいた。
〜ライブ終了後〜
瑛紗:あーーー、もう最っ高でしたよ!!!!
拳をグーにしてガッツポーズしていた。
〇〇:だよな!
〇〇:はぁ〜、まだ興奮冷める気がしないな〜
瑛紗:まだ踊れますよ、私。
そう言って、表題曲のサビ部分のメンバー踊りを二人で真似たりしてライブ後の抑揚に浸っていた。
瑛紗:わ、すごい人だかりですね。
〇〇:まぁ、ライブ後は大体こうだからな〜
今でこそ慣れたが、初めてライブに参戦した日も帰りが人が多くて圧倒されたのは懐かしかった。
瑛紗:あ、あっちの方行きません?
〇〇:ん?
池田が指差した方は、駅とは真逆の方だった。
〇〇:え、でもあっちは反対だよ?駅と。
瑛紗:人だかりが落ち着くまで、あそこで休みません?
賢っ!
と感心していた。
〇〇:じゃあ、そうするか。
移動していった先に、ベンチがあったので二人で座って休憩した。
〇〇:はぁ〜、疲れたな〜
瑛紗:ですね。
〇〇:こりゃあ、明日筋肉痛かもな。
とぼやいていると…
瑛紗:あの、〇〇先輩。
瑛紗:聞いてもらえますか?
〇〇:?
瑛紗:ずっと伝えたかったことがあって…
いつになく真剣な表情で見つめられた。
瑛紗:今日、〇〇先輩とライブに一緒に参戦できて凄く楽しかったです!
〇〇:おおう。
瑛紗:先輩にはいつもお世話になっています、今日だけじゃなくて。
瑛紗:この前なんか、私がバイト先で揉め事があった時に一緒に相談に乗ってくれて、その後実際に店に一緒に来て直談判してくれたり。
瑛紗:私が気分落ち込んでいた時に、映画観るのに誘ってくれたりご飯に誘ってくれたり。
ぎゅっ
〇〇:!
感謝を述べられると、手を握られていた。
瑛紗:そんな優しくてカッコいい先輩のことが、
大好きでした。
〇〇:!
瑛紗:いつか言おうと思ってたんですけど、中々言えなくて。
瑛紗:でも言わなきゃって思ってて、それが今日だなって思って。
想いを伝えられ、いつも以上に可愛く見えてしまった。
〇〇:池田…
瑛紗:?
〇〇:俺も、
お前が好きだ。
大好きだ。
ばっ
〇〇:わ!?
瑛紗:これから、よろしくお願いします!
〇〇:うん。
抱きつかれて顔が見えなくなって、お互い顔を見ようとしたら思いのほか近くて、二人して照れ笑いしていた。
瑛紗:じゃあ、これからは…
瑛紗:瑛紗って呼んでくださいね?
〇〇:なんか、恥ずいな…
瑛紗:恥ずかしくなんかないですよ。
〇〇:う…て、瑛紗?
瑛紗:んふふふ、何ですか?
〇〇:かわいいな、瑛紗。
瑛紗:んぐふっ!
〇〇:顔あっか!笑
瑛紗:むぅ〜、いじわるー!!
こつんっ
〇〇:ごめんって。
瑛紗:ん〜、許す!笑
それから、二人で手を繋いで駅に向かったが…
瑛紗:終電…
〇〇:行っちゃったな…
無事終電を逃した。
〇〇:しゃーない、タクシー呼ぶか。
瑛紗:なんかすいません…
〇〇:良いって、電車で帰るより快適だし。
瑛紗:ふふ、それもそうですね。
なんとかタクシーを捕まえて、無事帰ることが出来そうだった。
運転手:お二人さん、ライブ帰りですか?
〇〇:あ、はい。
運転手:良いですな〜、実は私も乃木坂が好きで…
タクシーの運転手さんも乃木坂ファンだと判明し3人で乃木坂の話で盛り上がって、途中で乃木坂の曲をかけてくれたりもしたので、帰り道も楽しさが絶えなかった。
瑛紗:運転手のおじさま、優しかったですね。
〇〇:ね。良いよね、こういうことがあると。
瑛紗:ですね〜
無事自宅の最寄り駅に着き、タクシーの運転手と別れて二人で帰り道を歩いていた。
〇〇:じゃ、またな。
瑛紗を家まで送っていき、自分のアパートに帰ろうとした時。
瑛紗:あ、あの!
〇〇:ん、どうした?
瑛紗:〇〇先輩、泊まっていきません?
瑛紗:ううん、泊まってください。
〇〇:いや、でも…
瑛紗:なんか、まだ一緒に乃木坂のこととか喋っていたいし。
〇〇:…分かった。
瑛紗:やったぁー!
瑛紗の家にお邪魔して、お風呂を交互に使って部屋着を借りた。
それから、お酒を飲みながら眠くなるまで談笑していた。
瑛紗:ふぁ〜…
〇〇:寝るか。
瑛紗:ですね。
〇〇:じゃあ、俺はここで…
瑛紗:じゃ、私も。
〇〇:いやいや、瑛紗は自分の寝るところが…
瑛紗:だめです、一緒に寝るんですから!
瑛紗:恋人同士なんですから。
ぎゅっ
〇〇:そ、そうだな…
瑛紗:んふふ。
瑛紗:やっぱ、ベッドで一緒に
〇〇:わ!?
瑛紗に半ば強引に手を引かれて、結局一緒のベッドで寝ることに…
瑛紗:近い、ですね…
〇〇:めっちゃ照れてるじゃん。
瑛紗:だ、だってぇ…
すっ
瑛紗:!
優しく頭を撫でた。
〇〇:初めてだもんな、こうするの。
瑛紗:はい…
瑛紗:でも、嬉しくて…こうして一緒に…
〇〇:ふふ、俺も。
微笑みかけると、向こうも微笑み返してきた。
〇〇:おやすみ、瑛紗。
瑛紗:おやすみなさい、〇〇先輩。
おでこをくっつけながらそう言って、二人とも目を閉じた。
fin.
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