姉に溺愛されているお嬢様を助けただけなのに… 7話
ー彩の屋敷ー
彩父:じゃあ、今度の土曜日に畠山財閥の息子さんと縁談だ彩。
彩:縁談…
美波:待ってお父様。
戸惑いを見せる彩を見て、姉の美波が口を挟んだ。
彩父:どうした美波?
美波:まだ彩には嫁入りするのは早すぎるんじゃないでしょうか?
彩父:そうかもしれないが…ん、しかしこんな良い話も滅多にないからな…
美波:良い話?ビジネスの話ではそれは。
彩父:そうだとも、それにビジネスが上手くいけば私たち家族の幸せにとっても良いこと…
美波:そうでしょうか?
彩父:?
美波:それが本当に家族にとっての幸せなんでしょうか?
彩:(お姉様…?)
美波の一言で、会話の空気が一気に重たくなっていた。
彩父:何が言いたい美波?
美波:少なくとも、私は納得できないんです。
彩父母:!?
彩:!
美波:お父様、あなたは彩の幸せのことを考えて…
バァン!!
美波が言いかけた時、彩と美波の父がテーブルを拳で叩いた。
彩父:私が彩の幸せを考えていないだと!?
彩父:ふざけるなぁ💢
彩父:時期会長になる者の発言とは思えないな💢!!
父が美波を睨みつけたが、
美波:時期会長の前に、私は彩の姉です。
美波も負けずと睨み返して立ち去った。
彩母:二人ともいい加減にして!!
妻に諭されて拳を緩めたが、目つきは変わらず険しかった。
彩:!
二人の喧騒を見て、彩は顔を隠しながら走り去っていった。
彩母:彩…
美空:よし、今度のライブで〇〇も空ちゃん推しにさせてやるから!!
〇〇:わざわざ宣言するな。
〇〇:でもま、今週の休みは楽しくなりそう。
美空:でしょ?日曜日にライブでバァーーっと盛り上がって、その前の土曜日に・・・
美空:ん?待って、〇〇土曜日の方もライブ参戦するの??
〇〇:は?違うけど??
美空:じゃあ何なのよ、土曜日どこ行くの?
〇〇:ん〜…
〇〇:秘密。
美空:ケチ、教えてくれてもいいじゃんか。
〇〇:言う義務なんかないし。
コツン
〇〇:痛っ!
少しして美空が先に帰ると言って、〇〇は美空と別れた。
まだ家に帰るつもりがなかった〇〇は街の方を散策しようと向かった。
〇〇:は〜、賑やかだな。
夜になり街明かりに照らされて行き交う人々を見て、〇〇はテンションがあがった。
〇〇:せっかくだし、今日はどこかで食べ…
そう言いかけた時、〇〇の視界に見覚えしかない姿が入った。
〇〇:彩ちゃん!?
急いで駆け寄った。
久しぶりに会えた嬉しさからでもあったが、今はそれより心配が勝っていた。
ハンカチで顔を抑えて涙を拭いているのが見えたから…
彩:はぁ…はぁ…
屋敷のあの場にいるのが耐えられなかった彩は逃げてきて、気づいたら街中にいた。
彩:(私のせいだ…)
彩:(私のせいで、お父様とお姉様が喧嘩しちゃった…)
彩:(どうしたら良いの…)
ハンカチで顔を覆い彩はしゃがみ込んだ。
道行く人々は、そんな彩を怪訝そうな目で見つめてきた。
その視線に気がついた彩は、初めて家出した日のことを思い出した。
あの日も外で転んで、周りの人は冷たい視線しか向けてこなかった。
けど・・・
〇〇:彩ちゃん!!!
そんな彩に優しく手を差し伸べた人がいた。
その人の声が今、彩の耳に入った。
彩:!
〇〇:大丈夫かい?
あの時と変わらない優しい瞳を彩は向けられた。
彩:〇〇さん…
その瞳を見た瞬間、彩は〇〇の胸の中に飛び込み号泣した。
彩:うぅ…うぅ…
彩:(あったかい…前みたいに。)
(回想)
〇〇:疲れちゃったのかな?
彩:そうみたいです…
〇〇:じゃあ。
彩:え?
〇〇:ほら、背中に乗って。
彩:い、いえそんな…悪いですって。
〇〇:平気、平気!ほら、乗ってって。
彩:で、では…
(ここまで回想)
彩:ふふっ。
〇〇:もう、大丈夫かい?
彩:ええ。
〇〇:でも…、なんかあったんだよね?
〇〇:だからこんなところに一人で…
彩:はい…
場所を移して公園に移動し、ベンチに二人で座った。
〇〇:お見合い⁉️
彩:はい、お父様の方で既に相手の人が決められていて。
彩:私を結婚させたくて仕方ないんだと。
〇〇:は、早過ぎない⁉️
彩:はい…でもそうすれば、家族は幸せだって。
〇〇:(もしかして、所謂政略結婚に近いヤツなのかな…)
まだ高校生くらいの子が大人の事情で結婚を迫られるという、時代を間違えてないかと疑いたくなった〇〇だった。
彩:でも嫌なんです!だってそうしたら…
彩:二度と〇〇さんに…
ぎゅっ
彩:!
暖かい抱擁が彩を包んだ。
〇〇:会えるよ。
〇〇:何度だって会おうよ。
優しい眼差しを向けられ、彩は〇〇の胸の中で再び号泣した。
彩:(やっぱりあったかい…)
彩:(このままずっといたいな…)
美波:彩!
〇〇・彩:!
そこへ、彩を探しに来た美波が現れた。
彩:お姉さま!
美波:もう!また勝手に家飛び出して…
彩:ご、ごめんなさい…
美波:ありがとう、彩のことを。
〇〇に向かって礼を言い、美波は頭を下げた。
〇〇:あ、いえ…
彩:お姉さま、聞きたいことがあって…
美波:何?
彩:その、どうしてお父様にあんなことを…
美波:どうしてって…
美波:2人が、そんな感じだからだよ。
彩:あっ!
既に遅いが、見られてはいけないと思ったからか彩は〇〇から離れた。
美波:良いよ、離れなくて。
美波:そ、それに…私の方が彩とハグ沢山、してるし…
彩:い、言わないで!恥ずかしい…から。
〇〇:ふふ。
彩・美波:?
〇〇:いや〜、仲良いですね。
〇〇に言われ、彩と美波は互いを見て笑った。
美波:そうよ、もう小さい頃から彩は私にくっついていて。
彩:言わないでって笑
美波:なんでよ〜、おんぶしたりお姫様抱っこしたり。
彩:もう、いじわる〜
美波:あ、でもチューだけは嫌がられたんだよね〜
彩:しません、お姉さまとは!
美波:ふぇ〜ん、彩のばか〜
〇〇:(ふふ、やっぱり仲良くて羨ましいな…)
彩:もう〇〇さんとしたから!
美波:え?
彩:え?
〇〇:あっ…
一瞬、時が止まった。
そして…
彩:!
慌てて彩は口を手で覆ったが、
美波:本当か?
〇〇:え…(汗)
眼光が飛んでき、〇〇は怯んだ。
美波:正直に答えろ!
〇〇:は、はい…(汗)
次の瞬間、
ガシッ
〇〇:へ?
ゴン:お前を拘束する。
首根っこを掴まれた〇〇は、宙に浮いていた。
美波:極刑だ。
〇〇:⁉️
彩:待って!お姉さま!
ゲン:さぁ、彩さま。
彩の静止も聞かず、美波はゴンに〇〇を連行させた。
美波:やはり、お前は許さない…
〇〇:(ヤバい、また逆鱗に触れて…)
美波:よくも、よくも…
美波:よくも私の彩のファーストキスを奪ったなぁあああああああ❗️❗️❓
7話 完
8話に続く…
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