幼馴染が本当は好きな恥ずかしがり屋さんの本番は…
沙耶香:は、話聞いてくれる?
沙耶香:あのね、沙耶香は…
シーン…
沙耶香:だぁあああ‼️違う❗️
沙耶香:やり直し。
沙耶香:ひ、久しぶり!
沙耶香:〇〇、ちょっと静かなところで話さない?
シーン…
沙耶香:んー、なんかイメージと違う!
そんな独り言が教室から聞こえてきた。
ガラガラ…
その教室の引き戸が開けられ、中に入っていく1人の青年。
〇〇:んだ?デカい声出して。
沙耶香:あ?
〇〇:あ、沙耶香。
沙耶香:な、何しに来たの?
〇〇:いや、声が聞こえたから気になっただけ。
沙耶香:え、あ…
〇〇:ん?
沙耶香:あっ、忘れてた!
〇〇:?
沙耶香が叫んで、奥に置いてあった小道具箱から船員が被っていそうなキャップを取り出して頭にかぶせた。
〇〇:何してんの?
沙耶香:え、あぁ…こ、今度の文化祭で劇やるからよ。
〇〇:あ〜、そう。だからそんな船員みたいなコスプレを。
沙耶香:そういうこと。
沙耶香:はい、分かったらさっさと出てけ〜
〇〇:わ〜。
ぐるぐる回されて〇〇は教室を追い出された。
ガチャッ
〇〇:で、結局何だったんだアイツ?
〇〇:よくわかんねーけど、まっいいか。
〇〇:♪〜
鼻歌を交えて、〇〇は校舎を出て行った。
沙耶香:ハァ〜、危なかった…
沙耶香:よりにもよって、なんで〇〇が…
〇〇を追い出して一人教室にいた沙耶香は冷や汗を拭いた。
沙耶香:絶対見られちゃいけないんだから…
沙耶香:見られたら、きっと馬鹿にされるんだもん!
沙耶香:ああー、最悪!
そして一人で教室で叫んだ。
沙耶香:ふ〜、落ち着け落ち着け〜
沙耶香:何のためにここにいるんだ私?
沙耶香:そう、そうだよね?その為だよね。
沙耶香:〇〇にちゃんと伝える為に。
沙耶香:好きって…
ガラガラ…
沙耶香:⁉️
沙耶香:(嘘、今の聞かれた⁉️)
教室の引き戸がまた開けられ、沙耶香は振り返り目を閉じながら苦笑いして言った。
沙耶香:ち、違うから!誤解しないで‼️
沙耶香:べ、別に〇〇のこと…そんな風にお、思ってないから!
?:どうしたの?沙耶香。
沙耶香:え?
聞こえた声は〇〇のでは無かった。
レイ:すっごい大きい声が聞こえたから気になって来ちゃったよ。
沙耶香:レ、レイ???
レイ:で、何していたの?
沙耶香の親友であるレイから聞かれた。
沙耶香:い、いやぁ…ほら、今度朝礼の時にさスピーチやるじゃん?その練習だよ。
レイ:ふ〜ん、そっか。
レイ:でも、沙耶香なら大丈夫だと思うけどね。
練習なんかしなくても。
沙耶香:あはは、そう?ありがとう。
レイ:で?本当はなんなの?
沙耶香:へ?あっ…
レイ:隠してても分かるよ笑
沙耶香:隠してる??いやだな〜、別にそんな…笑
レイ:分かった、誰にも言わないから!
沙耶香:…
沙耶香:ほ、本当に言わないでくれる?
レイ:うん、信じて。
沙耶香:わ、分かった。じゃあ…
二人のいる教室に、夕陽の光が差し込んでいた。
レイ:え、〇〇くんに告白!?
沙耶香:声デカいってば。
レイ:あはは、ごめん。
レイ:でもさ、沙耶香もやっとだね〜
沙耶香:やっとって何が?
レイ:自分の気持ちに素直になってさ。
沙耶香:や、やめてよ。恥ずかしい…
沙耶香がムスッとした顔をしてレイが笑った。
沙耶香:知ってたの?私が〇〇のことを…
レイ:うん、だって沙耶香顔に出てたもん。
沙耶香:へ?
レイ:〇〇くんとクラス別々になってから、なんか沙耶香顔から元気なくなってたし。
レイ:あと、〇〇くんがクラスの女の子とちょっと喋っているのを見ただけで、なんか寂しそうな目してたし。
沙耶香:も、もう良い!!!
聞くに耐えられなくなってか、沙耶香の顔は赤みが増していた。
沙耶香:はぁ…〇〇には、もしかしてもう好きな人が…
レイ:ほ〜ら、そんなこと考えちゃだめだって沙耶香!
沙耶香:だってクラス変わってからもう半年だよ??
沙耶香:私とは真反対で〇〇は誰にでも話せる性格だし。
沙耶香:絶対モテてるんだよ。
沙耶香:はぁ…無理だ…
自分の気持ちを吐露しきって、沙耶香は椅子に座り込んだ。
レイ:落ち着いた?
沙耶香:うん…
レイ:よし、じゃあ明日〇〇くんに告白すること。
沙耶香:は?
レイ:これ、レイとの約束ね。
沙耶香:ま、待ってよ!そんな急に言われても…
レイ:も〜う、いつもの積極的な沙耶香はどこに行ったの?笑
沙耶香:そ、そりゃいつもは別になんも気にすることないし…けど今回は話が違うの。
レイ:じゃあ、良いの?〇〇くんを他の女の子に先に取られても?
沙耶香:いやだ!
レイ:じゃ、決まり。
沙耶香:でも、失敗したら…
レイ:その時は、レイが美味しいのご馳走するから!
ぽんっ
沙耶香:!
レイ:折角の練習、無駄にしちゃダメだよ?
夕陽が沈みかけた頃、二人はようやく校舎を出て帰り道を歩き出した。
〜翌日〜
沙耶香:うぅ…お腹が…
放課後になり、〇〇のクラスに向かおうとした沙耶香。
沙耶香:だめ、今日絶対にするんだから。
沙耶香:よ〜し…
意を決してクラスに行くと、〇〇の姿はなかった。
沙耶香:(もう帰ったのかな?)
そう思って沙耶香は校舎を出て〇〇の家に向かおうとすると、
沙耶香:あっ。
途中の道端で〇〇が同じクラスの女子と立って話をしているのを見つけ、
沙耶香:!
急いで草陰に隠れた。
沙耶香:(どうしよう、先にあの子が〇〇に告白してるじゃん…)
〇〇:話って何かな?谷口さん。
谷口:あの、〇〇くん。私ね、その…
〇〇:うん。
谷口:ずっと君が好きだったんだ。
〇〇:!?
谷口:こんな私で良かったら、付き合ってくれませんか?
〇〇:あっ…
沙耶香:(うわ〜、迷ってる…絶対好きなんじゃん。)
沙耶香:(もう無理だよレイ、ごめん。私やっぱ…)
その場を去ろうとした沙耶香だったが…
〇〇:ごめん。無理かな…
谷口:!
〇〇:俺さ、その好きな人がもういるんだ。ずっと前から…
〇〇:だから、気持ちは嬉しいんだけど…ごめん。
谷口:そ、そっか…
谷口:ううん、気にしないで!私が勝手に言っただけだし。
そう言うと、〇〇に告白した子は走り去って行った。
沙耶香:(と、とりあえずは良かったけど…いや、良くないか。)
沙耶香:(でも、やっぱり〇〇には好きな人いるんだね…)
バキッ
沙耶香:!?
地面に落ちていた枝を踏んでしまい、音が響いた。
〇〇:ん?
沙耶香:(やばい、どうしよう…こっち来る!!)
〇〇:何してんだ?沙耶香?
沙耶香:うわぁ!!?
既に見つかったにも関わらず、驚かすポーズを沙耶香は取った。
〇〇:ど、どうした?
沙耶香:はは〜、どうだ〜驚いたか〜?? (汗)
〇〇:いやごめん、ちっとも…あと、そのマイクはなんだ?
沙耶香:え、これはその…爆音で驚かすため笑
〇〇:それは、やめときな?近所迷惑になるし…
沙耶香:で、ですよね〜笑。はい…
〇〇:てか何?俺を驚かすためにずっとそこにいたの??
沙耶香:いや、その…
沙耶香:そ、そうだよ!〇〇を驚かすため…
〇〇:じゃあ、今の聞かれちゃったか…
沙耶香:あっ。
その瞬間、沙耶香は慌てて口を抑えた。
沙耶香:ご、ごめん〇〇!
沙耶香:勝手に見ちゃって…
〇〇:良いよ、全然。
沙耶香:で、でも…
〇〇:ふ、相変わらずだな〜沙耶香は笑
沙耶香:な、何よそれ…
〇〇:なんか安心したわ、相変わらず明るくて。
沙耶香:え?
〇〇:ほら、クラス別々になったじゃん俺ら。
〇〇:だから、沙耶香がどんなかちょっと心配でさ。
沙耶香:〇〇…
〇〇の表情から、沙耶香は本気でそう言ってくれてると思えた。
〇〇:昨日沙耶香が一人で教室で演劇の練習してるのが聞こえて、久しぶりに話したくなって。
沙耶香:あ、あれは…
〇〇:って、おかしいよな。別にそんな離れてるわけじゃないんだから、普通に会いに行けば良いのにさ。
沙耶香:た…確かにね笑
〇〇:でもなんでだろう…俺たちずっと一緒だからか、ちょっとでも離れる期間が出来たらなんか喋れなくなるっていうか…
沙耶香:(分かるよ、私だって〇〇に会いたかったけど…その、恥ずかしくて…)
〇〇:あのさ、沙耶香?
沙耶香:何?
〇〇:伝えたいことがあるんだ。
沙耶香:う、うん…
〇〇:俺、
沙耶香が好きだ。
沙耶香:!?
〇〇:さっき言ってたずっと好きな人、沙耶香のことだから。
沙耶香:う、うぅ…
ぽんっ
沙耶香が軽く〇〇の肩に拳骨を飛ばした。
〇〇:え?
沙耶香:もう!腹立つ!!
〇〇:ご、ごめん沙耶香!俺、そんなつもりじゃ…
沙耶香:違うの、〇〇が悪いんじゃなくて!
沙耶香:今まで悩んでた自分に腹が立って…
沙耶香:うぅ…うぅ…
耐えきれず沙耶香は泣き出してしまった。
が、直ぐに温かく包む腕が…
沙耶香:!
顔を上げた沙耶香は〇〇と目があったが、〇〇は何も言わずにただ微笑んでいた。そんな〇〇を見て、自然と沙耶香も安心したのか笑みが溢れていた。
数分後…
沙耶香:ありがと、〇〇…
〇〇:もう平気か?
沙耶香:うん。
沙耶香は頷いて、〇〇から離れた。
〇〇:ああ、沙耶香?さっきの…
〇〇が聞こうとすると、
〇〇:!?
手を握られた。
沙耶香:好きだよ、私も。
沙耶香:〇〇のことが!
〇〇:沙耶香…
沙耶香:クラス別々になっちゃったけど…
沙耶香:これからよろしくね〇〇。
〇〇:うん、よろしく沙耶香。
クラスが別れてから以来、2人は久しぶりに一緒に帰り道を歩き出した。
手を繋いで、時々顔が合うと微笑んで。
そんな〇〇と沙耶香を草陰から見守る者たちが…
ひょこっ
レイ:うん、良かった良かった。沙耶香と〇〇くんが一緒になれて。
ひょこっ
いろは:青春万歳、ですね先輩。
fin.
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