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姉に溺愛されているお嬢様を助けただけなのに…(season2) 3話

ー〇〇の家ー


〇〇:(ダメだ…寝られない…)


小川家の屋敷から帰ってきてベッドに入った〇〇だったが、中々寝付けずにいた。


〇〇:(てか、寝られる訳ないよな…)


瞼を閉じても〇〇の頭の中で…


「!」

「おまじない、ですよ?」

「絶対、また会えるっていう」



去り際に見せられた彩の顔が浮かんでいた。



〇〇:(俺、歳上だよな…)

〇〇:(不思議、だな…)



彩とはだいぶ仲を深めた筈。

そう思っていた〇〇だが…



〇〇:(俺、まだ全然彩ちゃんのこと分かってないのかもな…)



今日のことで、自身に対して疑問が生まれていた。



ー彩の寝室ー


彩:…

真美:失礼します。

彩:はーい。

小川家に仕えるメイドの直美が、ノックして彩の寝室に入ってきた。


真美:外から灯りが見えたので、気になって来ちゃいました。

彩:あぁ、ごめんなさい。灯り消すわ。

真美:いえ、構いませんよ。


灯りを消そうとした彩が手を止めて、立ち尽くす。


直美:その様子だと、まだお眠りになれないみたいですし。

彩:うん…

直美:温かいミルクでも飲まれますか?


彩:え、良いよそんな…笑

直美:落ち着きますよ?

彩:じゃ、じゃあ…

恥ずかしそうに笑いながら、

彩:お願い。

直美にホットミルクを頼んだ。


直美:ふふ、かしこまりした。

彩:ありがとう、直美さん。


メイドの直美が居なくなると、笑っていた顔がまた暗くなっていた。




ー翌朝ー


〇〇:…

〇〇:(結局全然寝られなかったか…)

寝室を出て洗面所に行き顔を洗うと、大学に行く前に眠気を無理矢理掻き消そうとコーヒーを淹れにキッチンに向かった。



〇〇:あっ…


キッチンの棚から何気なくドリッパーを取り出した〇〇が、ドリッパーをキッチンの台に置いて手を止めた。







〇〇:!

マスター:どうだ?すげーだろ?

〇〇:う、美味…

マスター:はっはっはっ〜、あったり前だろ?笑

バシッ


〇〇:痛ッ!

マスター:あぁ、わりぃ!笑

〇〇:ったく、カフェのマスターがなんでこんな馬鹿力持ってるんだよ!?

マスター:そりゃ〜、毎日7キロのコーヒー入った袋担いでいるからな〜

〇〇:それ、前も言ってたけど…

〇〇:なんで使わないの?

マスター:教えてやんねーよ。

〇〇:ふーん…



マスター:ま、お前がコーヒー淹れるのが1人前になってからだな、教えるとしたら。

〇〇:本当に?

マスター:あー、ま、無理だろうけどな笑

〇〇:んなこと言うなよ!

〇〇:やってみなきゃ分かんないだろ!?

〇〇:絶対教えろよ、マスターが認めるくらいコーヒー淹れるの美味くなっていたら!

マスター:へへ、良いぜ。




嘘つき…



どっか行きやがって…



どこに居るんだよ…







〇〇:ふ〜

〇〇:苦ッ

〇〇:…

〇〇:やっぱり…


マスターからもらったコーヒー豆とドリッパーで淹れた筈だったが、味の方は断然向こうの方が上だと思い知らされた。


〇〇:(ったく、もうちょい一緒にいてくれよ。)

〇〇:(あんたが作ったのじゃないとダメだわ…)

〇〇:(俺じゃ、まだまだだから…)



ベランダの窓から空を見ながら、コーヒーを啜った。


〇〇:はぁ〜…

〇〇:今頃何してんのかな…



マスター…




ー通学路ー



彩:…

奈央:おはよ〜、彩ちゃん!

彩:…

奈央:彩ちゃん?

彩:…

奈央:彩ちゃーーん!?

彩:ん、あぁ…おはよう。


奈央に3度声をかけられて、漸く反応した彩。


奈央:あれ?まだ元気ないの?

彩:へ?

彩:ううん!

彩:ぜーんぜん、平気!

彩:行こっ

奈央:え、あ…ちょちょっ、うわ!?


急にいつもとテンションが変わった彩に引っ張られ、奈央はこけそうになった。





〇〇:…

美空:おはよ〜、〇〇。

〇〇:…

美空:〇〇?

〇〇:…

美空:もしも〜し!

〇〇:ん、あぁ…

〇〇:おはよう、美空。

大学の、講義が始まる前の教室で上の空になっていた〇〇は、美空に素っ気ない感じに返事をした。



美空:彩ちゃんには会えたの?

〇〇:え?

〇〇:あっ、うん!

美空:そっか、ふふ。

〇〇:な、なんで笑うの?

美空:え、だってこの前話聞いた時〇〇相当落ち込んでいたから。

美空:けど、その感じだともう大丈夫かなって。

〇〇:あ、ああ…



〜昨日〜


〇〇:好きなら、会って伝える…か。

美空:うん、絶対その方が良いよ。

美空:大切な人なら、尚更ね。

〇〇:だな…

〇〇:っし、行ってくるよ今度。

美空:ダメ!

美空:今日行ってこなきゃ!






〇〇:美空のおかげだよ、本当ありがとう。

美空:いえいえ。

美空:その代わりと言っちゃなんだけどさ…

〇〇:うん。

美空:今日の昼奢ってね?笑

〇〇:は、お安い御用だ。笑


〇〇の隣に座った美空が、ノートと講義の資料を机に出した。


美空:♪

〇〇:なんか、楽しそうだな美空。

美空:ん?そう?

〇〇:なんかあったな?

美空:ん〜、秘密!

〇〇:ふ〜ん。

美空:何よ、ふ〜んって?

〇〇:いや、別に。

〇〇:多分、美空が推している空ちゃんのことじゃないんだろうな〜って

美空:ふぇ?

〇〇:は?

美空:い、いやぁ…なんにも??

〇〇:どうした?

美空:だから…

美空:くぁああ〜、空ちゃんからトーク来てる‼️

〇〇:(んだ?ま、良いか…)


少しすると、講義を担当する教授が教室に入ってきて講義が始まった。




彩:はぁ〜、やっぱり屋上でのお昼ご飯って最高だよね?

奈央:うん、そうだね。

彩:はぁ〜


学校の屋上で、彩は腕を広げ息を深く吸った。


奈央:なんか、あるよね?

彩:え?どうしてそう思うの?

奈央:だって、いつもより彩ちゃん元気すぎるし。

奈央:というより…

彩:というより?

奈央:無理してる感じがする。

彩:!


奈央に指摘されると、彩は作っていた表情を崩した。




彩:あのね…聞いても良い?

奈央:うん、何々?

彩:もしもだよ、もしもなんだけどさ…

奈央:うん。




突然大切な人がいなくなったら、

どうしたら良いのかな?



4話に続く

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