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20話「望み」


ー前回までのあらすじー

自分の存在意義に不安を感じていたさくらだったが、飛鳥から出会ったばかりの頃にさくらが飛鳥にかけた言葉をかけられ、飛鳥の居場所になることを再び決心した。

その頃櫻丘研究所がオルフェノクに襲撃され、瑞穂がカイザに変身し襲ってきたスパイダーオルフェノクと対峙する…



「9 1 3  Standing by」

瑞穂:変身!




カイザに変身した瑞穂がスパイダーオルフェノクに向かって突進した。そんなカイザに対し、スパイダーオルフェノクは無言のまま立ち尽くしていた。


瑞穂:はぁあ!!

無防備に見えたスパイダーオルフェノクに、瑞穂は先手のパンチを食らわせようとした。が、スパイダーオルフェノクは最小限の動きでかわし、瑞穂のパンチが空振りした。

瑞穂:何!?

ス:フンッ

静かだったスパイダーオルフェノクが顔を瑞穂の方に向けると、素早い動きで掴みかかり襲ってきた。



瑞穂:!?

反応が遅れた瑞穂はスパイダーオルフェノクからのパンチのラッシュを浴びたが、タイミングを見極めて飛んできたスパイダーオルフェノクの拳を左手で掴んだ。

ス:!?

瑞穂:舐めるなよ。

スパイダーオルフェノクが一瞬狼狽えた隙に、瑞穂は至近距離からキックでスパイダーオルフェノクの腹部に向けて放ち吹き飛ばした。


スパイダーオルフェノクとの距離が取れ、瑞穂はカイザブレイガンを手にし黄色に光る光弾を連続で発射した。

(銃撃音)

ス:グッ!?

カイザブレイガンから放たれた光弾に被弾したスパイダーオルフェノクは自身の武器であるチャクラムを生成して防ぎ、

(銃撃音)

ス:ハッ!!

空高くジャンプして近くの建物の屋上に移動し、姿を消した。



友香:どうして…

スパイダーオルフェノクを見失った瑞穂がカイザの変身を解き、拳を握り締めていた。

瑞穂:奴のせいで…

瑞穂:奴のせいで、あの日私たちは…

低い声で呟いた瑞穂は、その瞳に怒りを宿していた。


(回想)

ー流星塾の同窓会ー

「逃げろぉおおお!!!」

「きゃぁあああ!!!!」

グサッ ズシュッ


「逃げて、さくらちゃん!」

「みず姉!?」

グサッ

「うぐっ!?」

バタンッ

「あ、あ…」

ガシッ

「ん、ぐぅ!?」

ズシュッ


(ここまで回想)




ス:ハァ…ハァ…

カイザとの戦闘から離脱したスパイダーオルフェノクが息を切らして立ち止まり、遠くの方で燃え上がる櫻丘研究所を見つめていると、

蓮加:見つけた〜、人の仕事奪う悪い子〜

村上の指示で櫻丘研究所を襲いに来た蓮加と美波が目の前に立っていた。 

美波:困るわね〜、勝手なことされると。

その場で美波はロブスターオルフェノクに、蓮加はセンチピードオルフェノクに変身した。


しかし、それを見たスパイダーオルフェノクは変身を解除した。

蓮加:なっ!?

美波:あら、闘う気がないのかしら?

スパイダーオルフェノクの全身が灰色の光に包まれ、人間の姿が現れた。


由依:あんたたちの仲間になりたい。


1人と2人の間に風が吹いた。



〜翌日〜

飛鳥:菊池クリーニングです。洗濯物届けに来ました。

届先の家主:はーい、ご苦労さまです。

啓太郎から頼まれた配達をしていた飛鳥が、最後の配達先に洗濯物を届け料金を受け取っていた。

飛鳥:料金丁度で頂きました、ありがとうございました。また、よろしくお願いします。

届先の家主:いつもありがとうね〜


最初の頃はこの仕事に対して嫌悪していた飛鳥も、次第に慣れていき客との会話も最低限は出来るようになっていた。


飛鳥:ふぁ〜、早く終わったし休憩するか!

ここ最近、仕事が早く終わると寄り道していく
ことが飛鳥の日課になっていた。



飛鳥:可愛いな、これ…


ショーウィンドウから見える、マネキンが着た服を物欲しげに見つめていた。



美月:可愛いですよね、これ。

飛鳥:わっ!?

美月:そんなびっくりしないでくださいよ〜笑

飛鳥:するに決まってるでしょ、急に横から声かけられたら…

飛鳥が気づかないうちに横に立っていた美月が、
ケラケラ笑っていた。


飛鳥:てか、大丈夫なの?そっちは…

美月:え、大丈夫って?

飛鳥:スマートブレインだよ。追われているって言ってたじゃん。

美月:あ、あぁ…

うんともすんとも言わない微妙な返事をして、美月は下を向いていた。


飛鳥:話、聞くよ?


ー境内ー


飛鳥:ほい。

美月:ありがとう、ございます。

自販機から買ってきた缶コーヒーを美月に渡した。

飛鳥:で、どうすんの?これから。

美月:それは…まだ、なんとも。けど…

飛鳥:けど?

美月:いつかは、スマートブレインを潰さないとかな…って。

飛鳥:ふ〜ん。

美月:あはは、無謀ですよね。何言ってんだか、私…笑

飛鳥:いや、同じこと考えてたよ。

美月:え?

飛鳥:スマートブレイン、潰そうって。

そう言った飛鳥の脳裏には、櫻丘研究所で友香から聞かされた話が浮かんでいた。


〜数日前〜


ー櫻丘研究所ー


友香:父さんは会社の社長になった後、交通事故に遭いオルフェノクとして覚醒した。それから、
会社で他に自分と同じような境遇の人たちを保護しようとしたの。けど、それを父さんは後悔した。

友香:オルフェノクになった者たちが次々と人間を襲うようになった。まるで野生の猛獣が草食動物を狩るかのように…

友香:だから、父さんはこの施設を極秘に買い取ってオルフェノクを倒す組織を作り上げた。この櫻丘研究所を、人類を守るために。

瑞穂:けど、じゃあ…父さん自身はどうするの?

友香:いずれ死のうとしてるわ…

飛鳥・瑞穂:⁉️

友香:自分もオルフェノクだから存在しちゃいけないって…

場が一瞬静まり返った。

元スマートブレインの社長であり、さくらや瑞穂、友香たちが孤児だった時に流星塾で育てた父親同然の男の覚悟を聞いて…


友香:だからこそ、スマートブレインは潰さなくちゃいけない。あの組織がある限り、人間とオルフェノクは共存出来ないから。

瑞穂:共存⁉️

瑞穂:友香、まさか本気でそんなことを?

友香:だって、オルフェノクが全員人を襲おうとするとは限らないじゃない?

友香:だから、スマートブレインを倒して人間とオルフェノクが仲良く暮らせる世界を…

友香が言いかけた時、


バァンッ‼️


瑞穂が壁を拳で叩いた。


瑞穂:反対だ…

友香:どうして?

瑞穂:分からないの?父さんはオルフェノクがこの世界から居なくなることを望んでいるって。

瑞穂:オルフェノクになった者は、いずれ皆んな怪物になっていく!身体も心も!

瑞穂:だからこそ、私たちはオルフェノクを全て倒す‼️

瑞穂:それが父さんの望みよ‼️

友香:でも…

瑞穂:話は終わりよ。

苛立ちを募らせた瑞穂が立ち去ろうとした。


飛鳥:私は、オルフェノクの中にも人間として生きようとする人もいると思いますけどね。

瑞穂:ぶっ。

飛鳥:な、何がおかしいんですか⁉️

瑞穂:あははは!!

瑞穂:あなたはそうなるわよね?だって、前に私の邪魔してオルフェノク庇っていたから。

瑞穂:どうせあのオルフェノクに命でも助けてもらったんでしょうね。けど気をつけた方が良いわよ?いずれ裏切られて、命を取られても知らないからね?

飛鳥に対して挑発的な発言をして、瑞穂はいなくなった。



飛鳥:っああ!やっと最近思うの止めてたのに、
やっぱりあの人ムカつく💢💢

友香:ふふっ。

飛鳥:菅井さん?

友香:ごめん、笑うところじゃないよね。けど、嬉しかったんだ。

飛鳥:え?

友香:私と同じ考えの人がいるって、改めて思えてさ。

友香:ありがとう、齋藤さん。

飛鳥:いや、別にそんな…



飛鳥:今、オルフェノクと闘うのに協力している人たちがいてさ。その人も同じことを言っててね。

飛鳥:スマートブレインを倒して、オルフェノクと人間の共存を目指すって。

美月:そうでしたか。なんか、嬉しいです。

美月:同じように人間とオルフェノクの共存を望んでくれる人がいて。

飛鳥:私も信じてるからさ、山とあやめちゃんのことを。


(悲鳴の声)


飛鳥・美月:⁉️


叫び声の聞こえた方へ向かうと、やはりオルフェノクが人間を襲っていた。

オ:まずは貴様からだ。

男:ぐっ、おぉ⁉️

女:いやぁああ‼️

カップルのうちの男性の方がオウルオルフェノクに首を掴まれて身体が宙に浮いていた。そんな状況に女性の方はただ恐怖のあまり腰を抜かして動けずにいた。

そこに…



飛鳥・美月:はぁ‼️

オ:⁉️

飛鳥と美月が同時にキックを繰り出して、オウルオルフェノクを吹き飛ばして男性を解放させた。

飛鳥:大丈夫ですか?

男:あ、ありがとう…

美月:早く逃げてください。

飛鳥たちに救助された男性は彼女を連れて避難していった。



オ:邪魔すんな、貴様ら‼️

飛鳥はファイズドライバーを装着して、ファイズフォンに変身コードを入力した。

「5 5 5  Standing by」

飛鳥:変身!

「Complete」

美月:はぁぁぁ!

飛鳥がファイズに、美月がクレインオルフェノクに変身してオウルオルフェノクに攻撃を仕掛けた。

オ:ぬ!

反撃しようとオルフェノクが美月に向かってパンチを繰り出すも綺麗に美月に避けられて、構えていた飛鳥に拳でパンチを止められ代わりに腹部にパンチを喰らった。

オ:ちっ…⁉️


飛鳥・美月:てぁあああ‼️


オ:ぐほぉ⁉️


ファイズとクレインオルフェノクのキックを同時に喰らい、オルフェノクは境内から落下していった。


オ:くそっ‼️


勝ち目がないと思ったのか、オルフェノクが煙幕を生成して姿を消した。


オルフェノクを追い払い、飛鳥と美月はそれぞれ変身を解いた。


美月:あ〜あ、逃げられたか。

飛鳥:ま、良いんじゃない?

飛鳥:人助けられた訳だし。

美月:ですね。


2人は互いの決意を確かめ合うように見つめ合って微笑を浮かべた。



ースマートブレインのビル 社長室ー


(ドアをノックする音)

役員:社長、警察の人間が面会を希望されております。

村上:警察?

村上:一体なんの要件で?

役員:それが、例の高校の体育館で起きた事件のことで…

村上:!

役員:どうされますか?

村上:お通ししてください。私自身が面会の担当をします。

役員:かしこまりました。

村上の指示を聞いた役員が社長室から出た後、村上はデスクから立ち上がり笑みを浮かべていた。


村上:予想通りのことが起きましたか、ふふ。



ースマートブレインのビル 謁見室ー



エレベーターから降りた村上が謁見室の扉を開けると、来客用のソファーに刑事の麻衣と瑛紗が座って待機していた。


麻衣:初めまして、警視庁の白石麻衣と申します。

瑛紗:風都署の池田瑛紗です。

現れた村上に対し、二人は名前を述べてお辞儀した。


村上:お待たせして申し訳ありません。

村上:私が社長の村上です。どうぞ、お掛けになってください。


麻衣と瑛紗に対し、正体とは裏腹に村上は紳士な対応をした。


21話に続く

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