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普段は強面で凶暴な彼女は、僕の前では嘘みたいに優しい。5話

〜放課後〜

ドッ ドッ ドッ

瑛紗がバスケットボールをバウンドさせる音が、公園に響く。

〇〇:…💦

そんな瑛紗の前で、〇〇は緊張しながら構えていた。


瑛紗:!

瑛紗の脚が動いた瞬間、瑛紗の姿は既に〇〇の横にいた。

〇〇:(は、速い…)

ドリブルする瑛紗を追いかけようとした〇〇だったが、既に息切れを起こして脚を躓かせてしまった。

〇〇:うわ!?

ドサッ

そのまま〇〇は額を地面にぶつけてしまった。

〇〇:イタタタッ…


ボンッ


バスケットゴールの前に着いた瑛紗が投げたボールが、ゴールの網に入った音がした。

瑛紗:っしゃーー!!!

〇〇:ウゥ〜、おめでと…

瑛紗:はっ!

瑛紗:〇〇ーーー!?

額を押さえながら顔をあげた〇〇を見た瑛紗が、〇〇のもとに駆け寄る。


瑛紗:そんな血を流して…

瑛紗:うぅ…〇〇…

瑛紗:死ぬなぁあああ!!!

〇〇:う、うん…痛いけど。

〇〇:死にはしない、かな…


?:なんだアイツら。

?:あの男、だせ〜な。

と、通りがかりのチンピラたちが瑛紗に介抱されている〇〇を嘲笑していた。


瑛紗:あ??

?:え??


シュンッ


豹変した瑛紗がチンピラたちの方に高速で移動し、いつものように瑛紗がチンピラたちにパンチを食らわせ、チンピラたちの身体は宙に舞っていた。


ドガッ


ゴミ捨て場にダイブしていくのを見届け、瑛紗は清々しい顔をしていた。

瑛紗:ふ〜、今日も飛んだぜ。

〇〇:お見…事…


長期休み前のテストを乗り切った〇〇と瑛紗がバスケットゴールが設置されている公園で特訓をしていたのには、ワケがあった。





ー数日前ー


男子A:今度の球技大会の優勝したら、賞品はなんと…

男子B:叙々〇の食事券がなんと10万円!!!

女子A:それやばくない!?

女子B:マジで頑張ろうよ!!


〇〇と瑛紗のクラス中が、球技大会の優勝賞品で騒ぎまくっていた。


〇〇:すごいね今回の賞品、瑛紗。

瑛紗:…

〇〇:瑛紗?

瑛紗:欲しい。

瑛紗:絶対欲しい!!

〇〇:うんうん。

瑛紗:〇〇。

〇〇:何?

真っ直ぐな眼差しを〇〇に向ける瑛紗。

瑛紗:特訓だ。

〇〇:ふぇ??

瑛紗:行くぞ〜

〇〇の肩を掴んで、瑛紗はそのまま教室を出て行った。


叙々〇の食事券ゲットのために、それからは放課後になると〇〇は瑛紗に連れられて、バスケットゴールが設置されている公園で球技大会に向けて特訓をさせられていた。



〇〇:あっ…

〇〇の額の傷を消毒液をつけたガーゼで瑛紗が拭くと、傷が染みて〇〇は額を押さえた。

瑛紗:ごめん、染みた?

〇〇:あ…大丈夫だよ。

〇〇:ありがとう。


瑛紗が〇〇の額に絆創膏を貼ってあげ、〇〇はお礼を言った。


瑛紗:うん。

瑛紗:また無理して付き合わせちゃったね。

〇〇:大丈夫だよ。

〇〇:なんか楽しいからさ。

〇〇:あと、叙々〇にも行きたいし笑

瑛紗:うん、絶対優勝するんだから!!

ガッツポーズしながら瑛紗は言った。


〇〇:はぁ〜、でも僕がこんなんじゃ出来ないよね…

〇〇:どうしたら良いのかな…

瑛紗:ん〜、まずはやっぱりドリブルからかな。

〇〇:ドリブルか。

瑛紗:うん、なんだかんだ基本だし。

瑛紗:あとは、相手の動きをよく見る。

〇〇:相手の動きか…

瑛紗:うん、ちょっといつもより私遅めに動いてみるからさ。

瑛紗:私の動きを読んでみて。


瑛紗がボールを持ち、バウンドさせて構えていた。


〇〇:(瑛紗の動きは速いけど…)

〇〇:(やってみるか。)


瑛紗の方を見ながら、〇〇もボールを取るために視線を凝らしていた。




〜3日後〜


〇〇:ふ〜、授業疲れたな〜

いつもなら授業が終わってから瑛紗と帰るはずだった〇〇だが、今は体育館の方に向かって歩いていた。

ガラッ

体育館の扉を開けると、中では〇〇のクラスの男子たちが球技大会に向けてバスケの練習をしていた。

〇〇:(凄い、みんな真剣だ…)

雄二:ん?

バスケ部のエースの仲田雄二が〇〇と目が合い、〇〇のもとに来た。

雄二:野上じゃん。

〇〇:あ、やああ…

雄二:一緒にやろうぜ。

〇〇:へ?

雄二:練習、球技大会に向けてさ。

〇〇:い、良いの?

雄二:ああ。

雄二:そのためにここに来たんだろ?

そのまま〇〇は雄二たちのバスケ練習に混じった。



〇〇が雄二たちの練習試合に混じってから程なくして、

瑛紗:(〇〇、どこにいるのかな…)

瑛紗:(さっき授業で借りたノートを返したいけど…)

〇〇に返すものを思い出して、〇〇を探していた瑛紗が体育館に現れた。

瑛紗:あっ。

瑛紗:〇〇?

クラスの男子たちに〇〇が混じって、バスケをしているのを瑛紗は見つけた。

瑛紗:(〇〇、もしかして…)


〜数十分前〜

瑛紗:〇〇、一緒に帰ろ〜

〇〇:あ、ごめん。今日ちょっと学校で用があるんだ。

瑛紗:用?

〇〇:うん。だから、今日は先に帰ってて。

〇〇:じゃ、また明日ね。

瑛紗:あ、う、うん。


そんなやり取りをしたのを思い出して、瑛紗はバスケをする〇〇を見ていた。


瑛紗:(きっと、そうだよね。)

瑛紗:(頑張れー、〇〇!)


〇〇に向けて、心の中で応援していた。



雄二:よし、もう学校閉まるし帰るか。

バスケの練習を終了して、雄二たちは帰っていった。

雄二:野上、お疲れ!

〇〇:あ、うん。お疲れ。

雄二と別れた〇〇のもとに、

瑛紗:〇〇〜

瑛紗が笑顔で迎えに来た。


〇〇:瑛紗!

瑛紗:ふふ、気になって見てたよ。

〇〇:そっか。

〇〇:とりあえず扉から出てきたら?

瑛紗:え、ああ、ごめん!笑

〇〇:(なんか可愛いかったから、あのままでも良かったのかもだけど…)

瑛紗:〇〇が一生懸命になってバスケしてるの、カッコ良かった。

〇〇:そ、そう?

瑛紗:うん!

〇〇:瑛紗と一緒に特訓した成果を、ちゃんと実践したいと思ってさ。

瑛紗:ふふ、嬉しいな〜


〜昨日〜

例の公園でバスケの特訓をしていた〇〇と瑛紗。

〇〇:(今度こそ!)

今まで通り瑛紗は素早くドリブルして〇〇を抜かそうとしたが、

シュンッ

〇〇:!

〇は瑛紗の移動する方向を見抜いて、素早くボールを奪った。

瑛紗:⁉️

〇〇:よし❗️


ボールを奪った〇〇が攻める側になり、瑛紗は〇〇からボールを取り返そうとした。


瑛紗:(そこだ!)

〇〇:⁉️

瑛紗に移動先を読まれて、一瞬〇〇は焦った。

〇〇:(なら…)

〇〇:っりゃああ!

瑛紗:え⁉️

〇〇はその場で、ゴールの網に向かって投げ飛ばした。


バシッ


〇〇:は、入った…

瑛紗:すっ…

瑛紗:凄ーい!〇〇ー‼️


点を取られた筈だが、瑛紗は〇〇とハイタッチした。



瑛紗:昨日の、本当に凄かった!

〇〇:うん、瑛紗のおかげだよ。

〇〇:瑛紗が真剣に教えてくれたから。

瑛紗:ふふ、じゃあ…

瑛紗:今度の球技大会、優勝できるかもね!


そのまま体育祭を出て、〇〇と瑛紗は帰り道を一緒に歩いた。




そして、球技大会当日。


〇〇のクラスの男子チームと他のクラスの男子チームとの試合が始まった。

0対0の状態がしばらく続いていたが…

?:野上ー!

〇〇:あ、うん!

クラスメイトからのボールをキャッチした〇〇の前には、相手チームの巨漢が立っていた。

〇〇:(でかい、この人…)

一瞬狼狽えた〇〇だが、応援席にいた瑛紗と目が合った。

瑛紗:(〇〇!)

〇〇:(瑛紗。)

それが、〇〇の背中を押してくれたようだった。

〇〇:(やるしかない!)



サッ

?:何!?

練習では上手くいかなかったフェイントを混ぜて、〇〇は目の前の巨漢を通り超した。

雄二:(良いぞ、野上!)

雄二をはじめ〇〇のチームメイトたちが一斉に前に出て、〇〇からのパスを受けようとした。

瑛紗:(凄い、〇〇!)

瑛紗:いけぇーー‼️〇〇ー‼️



〇〇:うわ!?

瑛紗:あっ!?

途中で〇〇は躓いてドリブルしていたボールを手放してしまったが、

?:任せろ、野上!

他の味方チームメイトがボールを素早くキャッチして、ターンを継続した。


そして、

雄二:おらぁあああ!!!


バシッ


雄二のダンクが決まり、〇〇のチームにポイントが入った。


〇〇と瑛紗のクラスメイトたち:うおおお!!!!

瑛紗:よっっしゃあああああ!!!!

瑛紗:ナイス、〇〇ー‼️



そして一回戦の結果は12対4で、〇〇のクラスの男子チームが勝った。


?:ナイス、雄二!

?:それに、野上も!

〇〇:え?

〇〇のチームの男子たちが、点を決めた雄二だけでなく〇〇も讃えた。

?:あのでかい涼ってヤツをさ、よく抜かしたよな。

?:野上、バスケの才能あるんじゃね?

〇〇:そんな、たまたまだよ…

雄二:たまたまで、あんな動き出来ないっての笑。

〇〇の肩を叩いて、雄二はにっこりした。


瑛紗:(うぅ…〇〇が、あんなに男の子たちと…)

奈於:なんか青春だよね〜

瑛紗:わ!?弓木先生?

奈於:ごめん、びっくりさせた?

瑛紗:いえ、全然。

奈於:野上くんたち、勝って良かったね。

瑛紗:はい!





球技大会の全試合が終わり、バスケの部で〇〇たちのクラスは2位だった。


〇〇:瑛紗、ごめん。

〇〇:優勝、逃しちゃった…

瑛紗:んふふ、良いよ。

〇〇:え?

?:池田さーん、おつかれー!

?:負けちゃったけど、楽しかったよー!

瑛紗:うん、お疲れ様ー!

瑛紗が、ともに戦ったクラスの女子たちに手を振っていた。


〇〇:今日、瑛紗大活躍だったもんね。

瑛紗:うん、でもそれより…

瑛紗:なんか皆んなと一生懸命バスケ出来たのが楽しかった!

〇〇:そっか、良かった。

瑛紗:それに、〇〇が背が高い人を抜かしてドリブルしているのカッコよくて、見てて楽しかったし☆

〇〇:うん、時々怖かったけど…

〇〇:でもなんか、瑛紗が応援してくれているって思ったらいけたんだ。

瑛紗:ふふ、友情パワーだね!

〇〇:そうだね!


担任:お前ら。

〇〇:あっ。

瑛紗:あ??

担任:なんだ池田、その目は?

2人のもとにやって来た担任とは犬猿の仲の瑛紗が、担任に睨みつけてきた。

瑛紗:何しに来た、眼鏡。

担任:んだと、ガサツチンピラ女め。

瑛紗:あ??んだとコラ⁉️


奈於:こらこら、やめてください2人とも。

担任:あ、先生…

担任:くっ…


またしても、担任はそのまま黙って去っていった。


〇〇:瑛紗、やっぱり…

瑛紗:うん、アイツ弓木先生がいると雑魚だね。

奈於:こら、先生のこと雑魚とか言わないの。

瑛紗:あ、すいません…

奈於:それより、2人ともお疲れ様〜

〇〇:弓木先生、どうしてここに?

奈於:いや〜、今からご飯食べに行こうと思ったけど他の先生たち帰っちゃったから、一緒に食べる人いなくて困っているんだよね〜

奈於:だから、2人を誘おうかなって。

瑛紗:え、行きまーす!

〇〇:い、良いんですか?

奈於:うん、もちろん!私の奢りで。

瑛紗:いぇーい❗️

〇〇:なんか、ありがとうございます。

奈於:いえいえ。今日のバスケ、2人とも凄かったし。

瑛紗:そうなんです!〇〇がもうカッコ良くて…

〇〇:え?

瑛紗:んふふ♪

瑛紗に腕に抱きつかれ、〇〇は心臓がドキッとした。


叙々〇は行けなくなったが、奈於のおかげで〇〇と瑛紗はご馳走を食べることが出来たとさ…


5話 完

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