普段は強面で凶暴な彼女は、僕の前では嘘みたいに優しい。10話
(鳥の囀る音)
〇〇:くあ〜、いい天気だな〜
雲ひとつない青空を眺めながら、〇〇は通学路を歩いていた。
?:お嬢ちゃん、俺らと遊ばね〜か??
爽やかな朝に似つかわしくない声が聞こえてきた。
〇〇:うわ、ナンパかな…?
恐る恐る〇〇は近づいて様子を見た。
チンピラたちが一人を囲んでナンパしていたが、その囲まれた人の顔と服装が見えた瞬間、〇〇は手を出さない方が良いと思った。
瑛紗:あ?興味ねーんだけど?
チンピラA:何?
瑛紗:邪魔だから、さっさと失せな。
チンピラB:おい、てめー女だからって調子に乗んなよ?
チンピラBが瑛紗のパーカーの首根っこを掴もうとした。
〇〇:(あ、それやっちゃマズいんじゃ…)
ガシッ
チンピラB:!?
伸ばした腕を瑛紗にガッチリ掴まれ、チンピラBは怯んだ。
瑛紗:んふふ〜
チンピラA・C・D:なっ!?
さっきまで眉間にシワを寄せていた瑛紗が急に笑顔になり、周りのチンピラたちは恐怖を覚えた。
〇〇:(瑛紗???)
彼氏である〇〇でさえも、理解できず困惑したが…
チンピラB:(か、かわぇええええええ!!!!)
瑛紗のアイドル顔負けのスマイルに、チンピラBはメロメロになっていた。
瑛紗:へ〜、良い腕してますね💕
チンピラB:えへへ、そ、そうかなぁ〜♪
瑛紗:腕差し出してくれてありがと〜💕
チンピラB:いえいえ、これくらい〜♪
瑛紗:あのね、今からね…
瑛紗が言いかけると…
チンピラB:!?
瑛紗:砲丸投げの球になってもらうからな?
瑛紗の表情が豹変し、キラキラしていた瞳から光が無くなった。
チンピラB:え!?
ガシッ
チンピラBの両腕を強く握り締めた瑛紗は、そのまま勢いよ腕を振り回してチンピラBの体を宙に浮かせた。
〇〇:(あ、終わったあの人たち…)
ブォンッ
チンピラA:いや、ちょっ待っ…
ドォンッ
チンピラA:ぐへぇ!??
チンピラC:嘘だろ…おま…
ズシュッ
チンピラC:ンゴォ!??
チンピラD:コイツ…化けも…
グキッ
チンピラD:ウゲェェ!??
バタンッ!
瑛紗が振り回すチンピラBの足と衝突したチンピラたちは、地面に倒れて気絶した。
チンピラB:ギャァぁぁああああ!!!
瑛紗:オラァああああああ!!
チンピラB:ゃめてぇええええええ!!!
瑛紗:るせぇええええええ!!!
チンピラB:怖いよぉおおおお、かあちゃあああああん!!!
〇〇:(マズい、これ以上は…)
草木に隠れていた〇〇が顔を出して、瑛紗に向かって叫んだ。
〇〇:ストぉおおおおップ!!!瑛紗ぁああ!!!
瑛紗:え?
〇〇の叫び声に気づいて、瑛紗はチンピラを振り回す腕を止めた。
が…
ヒュンッ
チンピラB:へ?
〇〇:へ?
勢い余って瑛紗の腕からチンピラBの体が離れて、〇〇の方に向かって飛んできた。
〇〇:マズい!ぶつかる!
咄嗟に〇〇は再び草木に隠れ、飛んできたチンピラBを避けた。
チンピラB:いやぁああああああああ!!!!
バコォォオオオン
飛んでいったチンピラBは、そのままゴミ捨て場にダイブしていった。
瑛紗:ごめんよ、〇〇ーー!!
瑛紗が駆け寄ってきて、〇〇は草木から出てきた。
〇〇:あ、僕は大丈夫だよ。
瑛紗:良かったぁ、〇〇が怪我してなくて。
〇〇:まぁ…あの人が飛んできてびっくりしたけど笑
瑛紗:いや〜コイツらがさ急に出てきて、ちょっとイラッとしちゃって〜
瑛紗:だから、投げ飛ばしちゃった♪
〇〇:そ、そう…すごいね…笑
チンピラA:くっそぉ…テメぇ…
ボコッ
チンピラA:ぐはぁ…
一瞬意識を取り戻して口を開いたチンピラAは、瑛紗につま先で腹を蹴られて再び気絶した。
〇〇:と、とりあえず行こっか。学校に…
瑛紗:んふふ、そうだね〜
二人はいつも通り学校に向かった。
〇〇:そういえば、もう6月だね。
まだ学校まで距離があるところで、ふと〇〇が呟いた。
瑛紗:う…6月か…
〇〇:どうしたの?
瑛紗:うげぇ…嫌な月になっちまったよ…
〇〇:なんで?なんか6月にあったの?
瑛紗:だってぇ・・・
祝日、全く無いじゃああああああん!!!!
瑛紗:うぅ、瑛紗は悲しいよぉ…
〇〇:そ、そうだね。確かに6月は祝日なくてちょっと萎えるよね。
瑛紗:〇〇とまた休みの日にどこか行きたいのに〜
少し寂しそうな顔をしていた瑛紗だった。
〇〇:(瑛紗・・)
奈於:あら、おはよーお二人さん!
〇〇:弓木先生。
奈於:何話してたの?
〇〇:あ、いや6月って祝日無いなーって話をしていて。
瑛紗:もう、6月って最悪ですよね。
奈於:ん、まぁ〜そうだね。
奈於:でも6月も悪いことばかりじゃないんだよ?
〇〇:そうなんですか?
奈於:うん、ほら聞いたことない?ジューンブライドって。
瑛紗:何です、そのジューンブライドって?
瑛紗が身を乗り出して聞いた。
奈於:6月にね結婚すると縁起良いって話だよ。
〇〇:へぇ…
奈於:じゃ、またね〜
〇〇:はい、また。
そのまま、奈於と別れた〇〇たちは学校の校門に着いた。
瑛紗:ジューンブライド…
放課後…
〇〇:ふぁ〜、やっと終わった〜
瑛紗:〇〇ーッ
〇〇:瑛紗。
〇〇:なんかテンション上がってない?
瑛紗:そうかな?
〇〇:うん、だって朝の時と違うよ??
瑛紗:まぁまぁ。それよりさ、一瞬に行きたいところがあるんだ〜
〇〇:行きたいとこ?
瑛紗:ほら、行くよ〜
〇〇:え、あっ…
瑛紗に手を引かれ、〇〇は瑛紗とともに飛び出した。
瑛紗に連れられ、たどり着いた場所は丘の上だった。
〇〇:へぇ〜、凄く見晴らし良いねー
瑛紗:でしょ、ここ好きでさー
瑛紗:座ろ?
〇〇:あ、うん。
瑛紗:んふふふ♪
〇〇:それにしても綺麗だね〜
〇〇:ね、てれ…⁉️
横に向いた瞬間、〇〇は瑛紗と唇が重なった。
瑛紗:ふふ。
〇〇:ふふ。
微笑んできた瑛紗を見て、〇〇も微笑み返した。
10話 完
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?