普段は強面で凶暴な彼女は、僕の前では嘘みたいに優しい。4話
ー高校 教室内ー
担任:えー、来週から期末試験だ。
担任:赤点のやつは、春休みに毎日補習受けてもらうからな。
生徒たち:えー!?
女子:そんなのないですよー、先生!!
男子:そうっすよ、俺から青春を奪うなーー!!
担任:良いから静かにしろ。
担任:あ、今回は飛び切り難しいからな?
男子:はぁあああ!?
男子:横暴だぁーー!
女子:卑怯です先生!!
担任:といっても、ちゃんと今までやった範囲だからな。出来て当然なはずだ。
生徒たち:えぇ…(本当かよ??)
担任:では、これにて解散。
終礼が終わり、〇〇はカバンに教科書などをしまって瑛紗の元に向かった。
〇〇:瑛紗ー。
瑛紗:んお、〇〇。
〇〇:なんか今度の期末、大変になっちゃったね。
瑛紗:あ〜、なんかアイツ余計なことしてきたからな〜
担任:ほ〜、担任に向かってアイツ呼ばわりとは良い度胸だな、池田。
瑛紗:げっ!?
いつの間にか瑛紗の背後に担任が立っていた。
担任:よし、お前は赤点だった場合は他の生徒の倍補習の時間とってやるからな。
瑛紗:な、権限乱用してんじゃねーぞ!!
担任:ま、お前みたいなだらしない格好の奴は、もうほぼ補習確定なようなもんだな。
瑛紗:何を…この!?
〇〇:瑛紗、落ち着いて。
担任:野上、お前も付き合う友だちを考えた方が良いぞ。
〇〇:え?
担任:こんな品の無い奴となんか一緒だと、この先お前もダメになるかもしれないからな。
瑛紗:テメー、好き放題言いやが…
我慢の限界に達した瑛紗が拳を振り上げようとした時、〇〇がその拳を抑えて担任の前に立った。
〇〇:僕はそんな風に思いません、先生。
担任:何?
〇〇:確かに瑛紗は少し乱暴な言い方が多いですけど、根は凄く真っ直ぐで友だち思いな優しい子です。
担任:は、脅されているんじゃないか野上?
〇〇:違います。僕が本当に思っていることを言っただけです。
瑛紗:〇〇…
〇〇:それに、見た目だけで人を馬鹿にするような発言をする先生こそ、どうなんですかね?
担任:く…
決まり悪そうになって担任は去っていく。
〇〇:(うわぁ…どうしよう、ついあんなに言っちゃったけど…)
態度が出すぎたことを〇〇は気にしていると、
瑛紗:うぅ…
〇〇:え、どうしたの?
瑛紗が目をウルウルさせて〇〇を見つめていた。
瑛紗:良い奴だぁあああ、〇〇はぁぁぁ!!!
〇〇:うわぁ!?
瑛紗に飛びつかれて、〇〇は壁に激突した。
ドオぉン!!
瑛紗:はっ!〇…〇〇?
〇〇:うぅ〜〜…💦
我に帰った瑛紗の前で、〇〇は目が回っていた。
瑛紗:しっかりして〇〇!!!
〇〇:う、うん…
瑛紗:こんなとこで死ぬなぁああ!!
〇〇を起こそうと、瑛紗が〇〇のからだを揺らした。
〇〇:うう、ごほ、ごほ…
瑛紗:良かった、息してるね!
〇〇:うん、死んでないから。
〇〇:あと、落ち着いて。ね?
瑛紗:すまん、つい…
それから、2人は校舎を出た。
瑛紗:けど、ぜってぇーに許さねーぞ!あの先公が…
〇〇:うん、僕も流石にちょっと腹が立ったな。
瑛紗:よし〇〇。
〇〇:ん?
瑛紗:一緒に勉強しよう。
〇〇:あ、うん。そうだね、あんな言われっぱなしじゃ嫌だし。
瑛紗:んじゃ、用意出来たら〇〇の家に行くね。
〇〇:え、ああ良いけど。
瑛紗:じゃ、またあとでね〜♪
瑛紗が手を振って、〇〇と別れた。
〇〇:瑛紗が家に来る…
〇〇:どうしよう、こういう時ってお茶とか出した方が良いんだよね…
ピンポーン
〇〇:うわ!もう来たの⁉️
思ったよりも早くに瑛紗が来たと思い、〇〇は慌てて玄関に向かう。
ガチャッ
〇〇:ごめん瑛紗❗️まだお茶用意できてな…
瑛紗:お茶?ふふ、大丈夫だって。勉強しに来ただけだからさ。
〇〇:そ、そう?
瑛紗:どうかした?
〇〇:あ、いや…なんか…
目の前にいる瑛紗が、いつもみたいなヤンキー風な格好でなく、華奢な女の子といった感じの服装で、〇〇はそんな瑛紗を見つめてしまった。
〇〇:いつもと格好違うな〜、って…
瑛紗:あ、ああ!そうだよね、普段こんな格好見せないし、似合わないよね私なんかが笑
〇〇:そんなこと、ないと思うよ?
瑛紗:へ?
〇〇:凄く可愛いなって…
瑛紗:え…
〇〇:あ…
2人して顔を赤くしていた。
〇〇:ああ、寒いのにずっと外に立たせてごめん。中に入って。
瑛紗:あ、うん…
瑛紗を家の中に招いて、〇〇はリビングに連れて行く。
〇〇:あ、ここで良い?勉強する場所。
瑛紗:うん。
リビングの机に教科書などを置いた瑛紗が、ソファーに置いてあったち〇〇わのぬいぐるみを持ち上げた。
瑛紗:うわ〜、ハ〇ワレじゃん!可愛い。
〇〇:あ、うん。前にゲーセンで1発で獲ったんだ。
瑛紗:え、すごっ!
瑛紗はハ〇ワレの腕を持って、〇〇の顔に擦りつけてきた。
〇〇:ちょ、くすぐったいって笑
瑛紗:ふふ、ごめん。なんか可愛くてつい笑
〇〇:でも癒されるよね、この感じ。
瑛紗:でしょ?
そう言うと、瑛紗はハ〇ワレの頭を〇〇の頬にスリスリさせてきた。
瑛紗:なんとかなれ〜
〇〇:それ、ハ〇ワレの真似してるの?
瑛紗:そーだよ。上手いでしょ?
〇〇:うん、凄く似てる声が。
瑛紗:えへへ。
〇〇:ふふ。
このまま遊びかけた2人だったが、〇〇が勉強しようと提案して、リビングで〇〇と瑛紗は期末試験に向けての勉強を始めた。
瑛紗:う…間違えた、悔しいよ〜
〇〇:どこ?
瑛紗:この問題。
〇〇:ああ、積分して面積求めるのだね。
瑛紗:間違えて微分しちゃったよ!もう。
〇〇:それ前の問題だね。
瑛紗:う〜、ちゃんと読んでいたら出来たのにー!
〇〇:まぁまぁ、まだ本番じゃないから。
瑛紗:でも悔しい。
〇〇:でも良いじゃん、これで気をつける所が分かったんだし。
瑛紗:ん〜、そっか!良いか。
〇〇:うん。
瑛紗:んふふ、ありがとう〇〇。
〇〇:いえいえ。
それから、テストの日まで〇〇と瑛紗はお互いの家を交互に勉強場所としてテスト勉強してきた。
そして、期末試験の日が来た。
〇〇:ふ〜、手応えはあったかな。
宣告通り、担任が担当する科目は物凄く問題が難しくなっていた。
そうでなくても、他の科目もいつもより引っ掛け問題的なのが増えていた。
瑛紗:お疲れ〜、〇〇。
〇〇:お疲れ、瑛紗。
瑛紗:なんか今回はいけた気がする!
〇〇:うん、僕もなんか思ったより出来た気がする。
瑛紗:二人で勉強した甲斐があったね。
担任:浮かれているのも今のうちだがな。
瑛紗:うわ!?
担任:お前ら二人は特に厳しく採点してやるからな。
〇〇:えぇ…
奈於:ダメですよ先生、差別は。
担任:え、ああ…いや、そんなことしませんよ弓木先生。笑
奈於:ちゃんと公平に採点しませんと。
担任:も、もちろんです…
英語の科目を担当している奈於が〇〇たちの担任に注意すると、担任はそのままいなくなった。
〇〇:あ…
瑛紗:あ…
2人して呆気に取られていた。
奈於:大丈夫?
〇〇:あ、全然。
瑛紗:弓木先生、ありがとうございます。
奈於:ふふ、今日はお疲れ様。テストって大変だよね。
奈於も、そのまま職員室の方へと向かった。
瑛紗:ふ〜ん。
〇〇:どしたの?
瑛紗:いや、あの先公にも好きな人いるんだな〜って笑
〇〇:なんか、みたいだね。
そして翌日、テストが返却された。
〇〇:うわ…やっちまった…
テストが返却され、担任の担当する理科のテストで〇〇の点数が50だった。
その理由は…
〇〇:裏に問題あるなんて…
肩を落としながら〇〇は瑛紗のところに行く。
〇〇:瑛紗〜
瑛紗:ああ、もう許さねー‼️
〇〇:瑛紗?
キレた瑛紗が拳を握り締めて廊下に出て行った担任のところに向かった。
担任:お前、池田…
〇〇:あれ?先生もなんか怒っている?
瑛紗:やりやがったな…貴様。
担任:こっちの台詞だ、舐めてんのか?
〇〇:え??
瑛紗:裏に問題あるなんて聞いてねーよコラぁ‼️
担任:黙れ、赤点取る心配ないからって裏白紙のまま提出しやがって…
〇〇:あの…(なんだ、2人とも勘違いで…しかも、何?なんか裏に書いてあるし…)
奈於:ほらほら、そんな怖い目しないでください2人とも。
担任:あ…
瑛紗:あ…
奈於:ちょっと聞こえましたけど先生、生徒がそんな悪いことするわけないじゃないですか。
担任:あはは…ですよね。
奈於に宥められた〇〇たちの担任は、そのまま引き下がっていった。
奈於:池田さんも、次からはちゃんと裏も見ないとね。勉強頑張ってたのは分かるからね。
瑛紗:はい…
奈於:あと、テスト用紙に「ふざけんな」はちょっとやり過ぎかな?
瑛紗:すいません…
〇〇:あ、僕もです…
奈於:え、野上くんも裏に「ふざけんな」って書いたの⁉️
〇〇:いや違います、違います!
〇〇:裏に問題があるって気づかなかったことです!
奈於:あちゃ、2人してだったか笑
奈於:まぁまぁ、気を落とさずに。
瑛紗:〇〇もだったの?
〇〇:そうなんだ…
瑛紗:そっか、一緒だね笑
〇〇:そうだね笑
機嫌を取り戻した瑛紗を見て、〇〇は安堵した。
奈於:あ、2人とも英語のさ作文凄く良かったよ。
〇〇・瑛紗:え、ああ…ありがとうございます。
奈於:うん、なんか読んでてなるほど〜ってなったよ。面白かったし。
学校から出て、〇〇と瑛紗は道を歩いていた。
瑛紗:♪♪
〇〇:なんか良かったね、弓木先生に褒められたし。
瑛紗:うん、弓木先生優しいし嬉しかった。
〇〇:そうだね。
?:おいそこの2人。
〇〇:へ?
〇〇が振り返ると、前に自転車で追突したあの暴走族の男たちが3人立っていた。
〇〇:うわ…(なんか見覚えある人たちだ❗️)
?:お前ら、この前は随分と世話…
シュンッ
〇〇の横を風が切ったかと思いきや、次の瞬間男たちが宙に打ち上げられていた。
?:ぎゃああああ⁉️
〇〇:えぇ…???
瑛紗:ふ〜、汚ねぇ花火だ。
〇〇:(なんか聞き覚えのあるセリフ…)
ガシャンッ
瑛紗に打ち上げられた暴走族たちはゴミ捨て場に落下して、気絶していた。
瑛紗:んふふ、〇〇〜焼き鳥食べたいなー
〇〇:え、ああうん…(相変わらず怖い)
久しぶりの瑛紗の豹変ぶりに、〇〇は圧倒されていた。
それから、2人はコンビニで焼き鳥の塩だれを2本買って食べた。
瑛紗:く〜、勝利の肉は美味い‼️
〇〇:そーだね、相変わらずパンチ凄いし。
瑛紗:え、違うよ。そのことじゃなくて…
〇〇:え、ああ、テストの方か。
瑛紗:そうそう!ふふ、〇〇のおかげだね。
〇〇:え、いや別に僕は何も…
瑛紗:何言っているのよ、〇〇が一緒だったからテスト勉強頑張れたんだよ?
〇〇:それは、僕もだよ。瑛紗が一緒だったから頑張れたよ。
瑛紗:ならお互い様だね。
〇〇:うん。
瑛紗:今度、休みの間にどこか行きたいね。
そう言うと、瑛紗が〇〇に肩を組んできた。
〇〇:わっ!?
瑛紗:あ、嫌だった?
〇〇:ううん、全然そんなこと…
瑛紗:こうしたらあったかいかなって。
〇〇:う、うん。ありがとう、あったかいよ。
瑛紗:いえいえ、ふふ。
ニコニコな瑛紗の顔が近くて、〇〇は心臓の鼓動が激しくなっていた。
〇〇:(なんでこんなに可愛いのに、あんな怪力なんだ…?)
とも思いながら…
4話 完
fin.
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