小動物みたいな後輩ちゃんにストーカーされた話。
本編を読む前にこちらの話から読むとより楽しめるかと思います!↓
それでは、本編へどうぞ!
最近ちょっとした悩みがある。
ザサッ
〇〇:(今日もか…)
道を歩くと、背後から視線を感じるのだ。
バッ
振り返ると、誰もこちらを見ていない。
しかし、また向きを直すと…
ザザッ
〇〇:(やっぱりいる!)
急いでダッシュして、その場を離れた。
初めは気のせいだと思っていたが、段々とそれが日に日に増えていて、間違いなく自分がストーカーされているのだと思った。
〇〇:はぁ〜、一体誰が何のために…
順風満帆な大学生活だと思っていたのに、まさかストーカーに遭うことになるとは…
けど、誰かから恨みを買うようなことをした覚えは無いし…
本当にストーカーをされる心当たりがなくて、困っていた。
ーサークルの飲み会ー
?:なぁ〇〇、この漫画知ってるか?
ジョッキに入ったハイボールを飲み干すと、隣の友人の長谷から一冊の漫画を渡された。
〇〇:何これ?
表紙に書かれたタイトルを読み上げると…
「推しにストーカーされた人生は薔薇色だった。」
長谷:いやこれがさ、めっちゃ面白くてさ。
長谷:昨日初めて1巻から最新の20巻まで一気に買ったんだけど、ハマりすぎて一晩で読み切ったわ。
〇〇:ほ〜、大人買いってやつしてそんなに。
長谷:面白いからさ、〇〇にも読んでもらいたくて貸すわ。
〇〇:いや、俺遠慮するわ。
長谷:な〜んでだよ。良いから読めって、マジで面白いからさ。
〇〇:俺、ストーカー系って好きじゃ無いんだよね〜
そのまま、長谷に漫画を返して飲みの続きをした。
ひかる:どうかしました?先輩。
〇〇:ん?どうって?
ひかる:いや、さっき長谷先輩と話している時になんか元気ない気がして…
後輩のるんちゃんに心配されたので、素直に打ち明けた。
〇〇:いや〜、最近外歩いていると誰かにつけられている気がしてさ…
ひかる:つけられている?先輩がですか?
〇〇:うん、まぁ…気のせいなのかもしれないけどさ。
ひかる:でも先輩カッコ良いですから、もしかしたら先輩のことを…
〇〇:ん?
最後まで言わずに途中で黙ったるんちゃんの頬が、気のせいかいつもより赤い気がした。
ひかる:ん?
〇〇:どうかした?
ひかる:どうか、って?
〇〇:なんか顔赤いから…
ひかる:あ、酔っているからじゃないですかね。
〇〇:ああ。
〇〇:でも今日は奇声あげたりしないんだね〜
ひかる:な、奇声って!
ひかる:私いつもそんな変な声出してませんもん!
〇〇:いや、るんちゃんは酔ったら大体そうなっているから笑
ひかる:なってませーーん!
ゴクッ
ひかる:ぷは〜〜
ひかる:ほら、全然へいk …ヒック!!
〇〇:ちょっ、無理しないの。
〇〇:でも酔って変な声あげるるんちゃんも可愛いから。
ひかる:そんなこと言って〜
ひかる:しぇんぱいこそ、酔ってましぇんか??
言った側から呂律がまわらなくなるるんちゃんを見て、俺は笑ってしまった。
〇〇:ぶふっ、全然ダメじゃん笑
ひかる:だめじゃ、にゃいでしゅ〜〜
目がトロンとしていたるんちゃんが、そのまま頭を俺の肩に乗せてきた。
飲み会が終わって、二次会組と別れた。
〇〇:ふ〜、るんちゃんお疲れ様。
ひかる:お疲れ様です。
〇〇:もう酔ってたりしてない?
ひかる:大丈夫です、ピンピンしてます。
〇〇:そっか、良かった。
そのまま、駅までるんちゃんと歩いていった。
道を歩いていると、
ひかる:〇〇先輩、ごめんなさい!
急にるんちゃんが謝りだしたので、びっくりした。
〇〇:どうしたの!?
〇〇:別に俺、何もるんちゃんにされては…
ひかる:私なんです、あれ。
〇〇:へ?
話の意味が分からず、混乱してしまった。
〇〇:ごめん、どういうことか教えてくれる?
ひかる:その…
〇〇:うん。
ひかる:さっき先輩が教えてくれた、先輩が誰かにつけられているって話。
ひかる:あれ、私なんです…
〇〇:え!?
びっくりに更にびっくりが重なった。
ということは、今まで見知らぬ人にあとをつけられていたと思っていたのが、実は全部るんちゃんがしていたことだったと…
〇〇:そ、そうだったんだ…
〇〇:でも、何で??
ストーカーの正体がるんちゃんと分かったと同時に、疑問が生まれた。
ひかる:それは…
ひかる:もっと、一緒に居たいって…
〇〇:え…
ひかる:私、〇〇先輩と毎回どこか出かけるのすごい楽しくて。
ひかる:この前の佐奈たんのライブとかも一緒に盛り上がったりして。
〇〇:うんうん。
俺とるんちゃんの共通の推しである佐奈たんにレスもらったときのことを思い出して、俺は頷いた。
ひかる:そんな風にしているうちに、もっと先輩と一緒に居たいって思って。
ひかる:でも、あんまりグイグイ行ったら先輩に嫌われるかなって。
〇〇:そんなこと…
ひかる:でも、やっぱり気持ちが抑えられなくて…それで先輩の後をつけるようになって色々見ちゃいました…
〇〇:お、おう…
ひかる:先輩のバイト先で、レジで注文取っている時のカッコ良いところとか…
〇〇:う、うん…
ひかる:あ、あと…先輩がお姉さんとデートしているところとか。
〇〇:うぶっ!?
恥ずかしくなって、顔を隠した。
〜2週間前〜
アパレルの店で、姉に2着のワンピースを見せられてどれが良いか聞かれていた。
瑞穂:ねぇ、〇〇。どっちが良いと思う?
〇〇:う〜ん。
〇〇:そっちのベージュのが無難に良さそうに見えるけど…
〇〇:でもそっちの黄緑の方がなんか俺は好きかな?
瑞穂:ほ〜
瑞穂:じゃ、こっちにする!
〇〇:え、良いの?俺の意見なんかで決めて…
瑞穂:うん、私もこっち気になっていたし。
瑞穂:それに、ウチの自慢の弟のセンスを信用することにした!
〇〇:なんか責任重大な気が…
外に出た時、視線を感じて振り返った。
瑞穂:どしたの?
〇〇:いや、今誰かに見られていたような…
瑞穂:え、本当に?
〇〇:うん。
瑞穂:ま、でも〇〇いるし大丈夫でしょ?
〇〇:へ?
瑞穂:もし誰かが私のことストーカーしてても、〇〇が追っ払うでしょ?
〇〇:いやいや、もしそのストーカーがボクサーみたいな体型の人だったらどうするのよ?無理よ、流石に。
瑞穂:え、それはわかんないけど〜
瑞穂:ま、逆に〇〇が誰かにストーカーされてるなら、お姉ちゃんが撃退してやるから!笑
〇〇:お、おう…頼もしいこと。
それから、ワゴンで売っていたアイスを買って二人で食べていると、
〇〇:あ、姉ちゃん付いてる。
瑞穂:え、ああ…
鼻にクリームがついているのを、ウェットティッシュを取り出して取ってあげた。
瑞穂:ふふ、ありがと。
〇〇:いえいえ。
瑞穂:アイス分けてあげる!
〇〇:え、良いって別に。
瑞穂:何だ、水臭いぞ〜
瑞穂:姉ちゃんからの褒美だ、受け取れ〜
〇〇:いや、ちょっ…わ!?
少し離れた草陰では…
ひかる:(はわわ⁉️)
ひかる:(〇〇先輩のお姉さんが、〇〇先輩に…)
ひかる:(う、羨まし過ぎる❗️❗️)
〇〇:(あれ見られてたのか…)
ひかる:ほ、本当にごめんなさい!!
泣きそうになっているるんちゃんを見て、俺はそっと頭を撫でてあげた。
〇〇:そ、そっか…
〇〇:教えてくれてありがとう。
優しく声をかけてあげた。
ひかる:怒らないんですか?
〇〇:うん。怒らないよ。
〇〇:もしこれが、佐奈たんとかにしてたらちょっと怒っちゃってたかもね。
ひかる:そ、それは流石にしないです!!!
〇〇:うん、分かっているよ。
るんちゃんが泣き止むのを待って、しばらくその場にいた。
ひかる:あの、先輩。
〇〇:何?
ひかる:その、こんなやり方でしたけど…
ひかる:先輩ってカッコ良いなぁって、改めて思えたんです。
ひかる:カフェでお客さんにコーヒー差し出す時の笑顔とか。
〇〇:そ、そう?
ひかる:はい、誰に対しても分け隔てなくされているのが本当にすごいなって。
ひかる:あと、お姉さんとデートされている時とか。
〇〇:いや、あれは半ば向こうが強引に…
ひかる:でも、お姉さん凄く楽しそうでしたよ。
ひかる:きっと、〇〇先輩がリードしているから。
〇〇:リードって、そんな…
ストーカーされていたはずだが、るんちゃんに見られて褒められていると思うと、やはり照れてしまった。
それから、また駅まで歩こうとしたが、
〇〇:るんちゃん。
歩みを止めた俺から、少し先に移動していたるんちゃんを呼び止めた。
ひかる:は、はい!
〇〇:その…
〇〇:俺の方こそ、ごめん!
頭を深く下げた。
ひかる:え、そんな…
ひかる:先輩は何も悪いことしてないですよ!?
ひかる:寧ろ、私が…
〇〇:ううん。
〇〇:るんちゃんの気持ちに、俺がもっと早く気づいていれば良かった。
ひかる:〇〇先輩…
〇〇:るんちゃん、聞いてくれる?
ひかる:は、はい!!
ひかる:もちろんです!
背筋を正して、るんちゃんがこちらを向いた。
〇〇:あのね、その…
〇〇:俺もるんちゃんと毎回どこか出かけるの凄い楽しいんだ!
〇〇:この前のライブもそうだし、ポケモンカフェとかでもるんちゃんと一緒だと、ずーっと楽しくてさ。
〇〇:そしたら俺もね、るんちゃんともっと一緒に居たいなって思うようになってたんだ。
ひかる:う、嬉しいです!
ひかる:そう言ってもらえて。
〇〇:うん。
〇〇:それで、るんちゃんが良ければ…
最後の一押しに、深呼吸した。
〇〇:その、付き合ってくれませんか?
ひかる:え…
それから、俺は目を瞑って手を差し出した。
どうなるかは分からなかった。
でも、今俺が気持ちを伝えるならここだと思った。
そして…
ぎゅっ
〇〇:!
ひかる:こんな…私で良ければ。
照れている顔を見せながら、るんちゃんが手を握ってくれた。
ひかる:大好きな、〇〇先輩の隣にいさせてください!!
その時見せてくれた屈託のない笑顔は、
多分一生忘れられないだろうっと思った。
fin.