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憂鬱な日曜の夕方が、迷子の美人と出会って変わった話 5話

見知らぬ男の悪夢で怯えていたさくらさんに、ずっと味方だと誓ったあの日から数日経って俺は彼女を連れてとある場所を訪ねていた。


さくらさんの記憶を取り戻すために…


<東乃木警察署>


飛鳥:ふ〜、お待たせ〇〇。

〇〇:お久しぶりです、飛鳥さん。

飛鳥:丁度さっき、別の事件で気持ちが病んじゃった子をカウンセリングしてきたところなんだ。

〇〇:そうだったんですね。

飛鳥:本当は、このあと非番だったんだけど〜

〇〇:え、あ…それは、なんかすいません。折角の休みを潰しちゃって。

飛鳥:ふふ、気にすんなって。困っているなら、遠慮なく先輩頼れって言ったでしょ?

〇〇:ありがとうございます。それで、一昨日飛鳥さんに話した子がこちらです。


横にずれて、さくらさんに前に出てもらった。


さくら:あ、は、初めまして…

さくら:遠藤さくらです。

飛鳥:ふふ、大丈夫だよ。緊張しなくて。

飛鳥:齋藤飛鳥、よろしくね。

飛鳥:そこの、お人好しボーイの大学時代の先輩ってところかな?

〇〇:やめてくださいよ、その言い方。

飛鳥:良いじゃんか、照れるなよ〜笑

飛鳥さんに脇を小突かれた。


さくら:あの、飛鳥さんってその…

飛鳥:ああ、心理カウンセラー兼捜査官だよ。

さくら:ってことは、お医者さんで…警察官?

飛鳥:んまぁ、そんなところ?

さくら:へ〜、凄い…

飛鳥:ま、立ち話もなんだし部屋に行こ?

〇〇:ああ、そうですね。

飛鳥さんに案内され、俺とさくらさんは付いて行った。





<カウンセリング部屋>


さくら:うわぁ〜

飛鳥:ふふ、どう?綺麗でしょ、ここ。

さくら:はい、とても。

飛鳥:〇〇は一度ここにきたことあるもんね。

〇〇:そうですね、結衣と別れた時に相談に…

さくら:〇〇さん、彼女さんいたんですか?

〇〇:ええ、大学時代に知り合った子で1ヶ月前まであの家に二人で住んでいました。

〇〇:でも突然、向こうから別れを切り出されて…

さくら:そんな…

飛鳥:すっごく落ち込んでたもんね。

〇〇:でもここで飛鳥さんに話し聞いてもらえたら、凄く楽になりましたよ。

〇〇:本当、あの時はありがとうございました。

飛鳥:良いってことよ。ま、それより今日はあんたじゃないんでしょ?

〇〇:あ、すいませんさくらさん!

〇〇:つい俺の話に夢中になって…

さくら:いえ、私から聞いたことですし。

飛鳥:とりあえず、ここに座ってみて。


飛鳥さんに手を引かれたさくらさんは、リクライニングチェアに座った。


さくら:うわ〜、ふっかふか!

飛鳥:座り心地いいでしょ?

さくら:はい。

〇〇:じゃあ、飛鳥さんお願いします。

飛鳥:うん。

飛鳥さんにさくらさんを託して、俺は部屋を出ようとした。

さくら:あっ。

出ようとした俺の手を、さくらさんがそっと掴んで引き止めた。

〇〇:?

さくら:あの…

さくら:一緒にいてくれませんか?

〇〇:え、ああ…

本来、こういうカウンセリングの時はカウンセラーと患者が一対一でやるものだが…

飛鳥:いいよ、私は。

〇〇:じゃあ…

飛鳥さんが了承してくれたので、俺はさくらさんの隣にパイプ椅子を置いて座った。

さくら:ありがとうございます、〇〇さん。

隣に座ると、さくらさんがニコっとした。

〇〇:いえ。

飛鳥:じゃあ、始めるよ?


そして、さくらさんの記憶を取り戻すためのカウンセリングが始まった。





飛鳥:へ〜、ギター弾くの好きなんだ。

さくら:はい、高校生の時にバンドを組んでいて。

〇〇:ええ、凄いじゃないですか。

さくら:でもすぐ解散しちゃいましたけど。

さくら:でも楽しかったです、なんか皆とワイワイして。

飛鳥:バンドか〜、懐かしいな。

飛鳥:あれ、いつだったっけ…前に大学の構内でライブして、そしたら〇〇がさライブ終わった後に…

〇〇:え、ああ…

〇〇:その話はやめてください!!!!!


珍しく〇〇さんが慌てふためいていた。


さくら:え、何したんですか?〇〇さん。

〇〇:いや、それは…別になんでも??

飛鳥:もう終わったことだし良いでしょ?

飛鳥:さくらちゃん、あのね〇〇が…笑

〇〇:おい、やめろ!!いうなぁああ!!!

飛鳥:うっさい!いま、カウンセリング中だぞ!?

〇〇:こっちにはプライバシーってのがあるんだが!?

さくら:ぶふっ。

〇〇・飛鳥:?

さくら:ふふふ。


二人のやりとりを見ていたらおかしくなって笑いだしちゃった。



〇〇:さくらさん?

さくら:ごめんなさい、あんまりに可笑しくてつい…笑

飛鳥:さくらちゃん、耳貸して。

さくら:え?

〇〇:おいコラ、飛鳥さ…ぐほっ!

飛鳥:〇〇くんね、私に告白してきたの(小声)

さくら:!


〇〇:ったたた…

さくら:へぇ〜、〇〇さん飛鳥さんが好きだったんですね〜

〇〇:い、い、止めてくださぁああい!それ言うのは!

飛鳥:うっさい!

コンッ


そして、そのままずっとカウンセリング、というかほぼ雑談が続いた。


さくら:ふぁ…

飛鳥:眠くなった?

さくら:はい…少し…

飛鳥:寝ていいよ。

さくら:はぃ…

そのまま私は目を瞑って眠りに就いた。




さくら:…

…くら。

さくら:ん…

?:さくら。

さくら:え?

目を開けると、そこには…


さくら:嫌っ!

?:どうした?さくら。

さくら:嫌、離して!

?:おれだよ、分からない?

さくら:え?

?:敏樹だよ。

名前を聞いた瞬間、頭に次々と思い出が浮かんできた。


さくら:とし、くん…


最初の頃は、としくんは億劫な私をリードして楽しませてくれた。


映画を観に行ったり、ドライブに連れて行ってくれたり、遊園地に連れて行ってくれたり。


敏樹:さくら、はい。

買ってきたアイスを、としくんがくれた。

さくら:ありがと。

さくら:ん!

敏樹:ふふ、美味しい?

さくら:うん!

敏樹:良かった。


一緒に手を繋いでいると、としくんの優しい横顔が見えた。

さくら:んふふ。

敏樹:ん?どうした?

さくら:え、としくんと一緒で楽しいなぁ〜って。

敏樹:そっか。

敏樹:俺はね、さくらがそうやって笑っているのを見られるのが凄く嬉しいよ。

さくら:ふふ、嬉しいな。


今目の前にいるのは、

まだ優しかった頃の彼。



さくら:え⁉️


突然空間が歪み出し、次に気がついた時には…



敏樹:ああ、くそ❗️イラつく❗️

さくら:大丈夫だって、また次のバイト見つければ…

敏樹:黙ってろ‼️

さくら:⁉️

敏樹:さくらに何が分かるっていうんだよ⁉️




豹変してしまったとしくんが部屋にいた…



敏樹:なぁ、俺のこと愛してるよな?

さくら:う、うん…

怖かったけど、心の底ではまだとしくんを信じていた。

敏樹:ならよ…

さくら:え?

彼の手がブラウスに触れ、次の瞬間引き剥がそうとしていた。


敏樹:俺を助けてくれよ…


そう…


それこそが、彼だった。


あの恐ろしい男の正体…





雑談をしてさくらさんをリラックスさせてから眠りにつかせるという、飛鳥さんの作戦が狙い通りに動いて暫くすると、

さくら:んはぁ!?

息を荒げて、さくらさんが目を覚ました。


さくら:はぁ…はぁ…

〇〇:さくらさん!

さくら:うぅ…

さくら:としくん…

誰かの名前を呼んで、さくらさんは泣き出した。

そんな彼女を落ち着かせようと背中をさすろうとしたら、さくらさんが抱きついてきた。


飛鳥:思い出したのね、多分…




それから暫く経ち、漸く落ち着いたさくらさんを連れて、警察署を出て2人で家に戻ろうとした。



さくら:〇〇さん。

〇〇:あ、はい!

暫く黙っていたさくらさんに急に呼ばれたからか、大声を出してしまった。

さくら:ありがとうございます。

さくら:記憶、取り戻すのを手伝ってくださって。

〇〇:あの、さっき呼んでいた人って…

さくら:草刈敏樹、元カレです。

さくら:最初に出会った時、凄く優しい人でした。

さくら:でもバイトで人間関係が上手くいかなくて、それで辞めてからとしくんは変わってしまいました…


さくら:でも…

さくらさんが何かを言いかけた時、自分のスマホが鳴り出した。


〇〇:あっ。

さくら:あっ。

さくら:良いですよ、見て。

そう言ってもらい、スマホを取り出して起動した。


〇〇:え?


スマホの通知画面に、一件のメッセージが表示されていた。






「助けて、〇〇」





それも、結衣からだった…



最終話に続く。

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