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肩想い

〇〇:はぁ…


教室の窓側の席で、校庭を眺めながらため息をついていた。


陽子:一人で何黄昏てんのよ?笑

〇〇:ん?別に、ただ外の新鮮な空気吸ってただけだし。

陽子:いーーや、絶対違うね!顔見れば分かるし。

〇〇:疲れているから。だからこーして外の空気吸ってんの。

陽子:あ〜、確かにここ最近ずっと大会とかで忙しかったもんね〇〇。

陽子:よし!

〇〇:へ???


ため息ついている俺のところに来た陽子が、いきなり肩を揉んできた。


〇〇:痛っったぁああああああ!?

陽子:うわ〜、結構凝ってるじゃん!!!

〇〇:違う、陽子が力強すぎなの!

陽子:良いからじっとしてって!

〇〇:ぎゃぁああああ!!


と、何気ない戯れ合いスタートから今日も過ぎていった。




〇〇:はぁ…


授業受けて、部活やって、帰り道を歩く。

いつも通りなことをしている筈なのに、

ここ最近は肩が重く感じるのだ…


〜1ヶ月前〜



〇〇:(ふ〜、緊張してきた…)

高校生になって、人生で初めての告白をすることを決心した。

相手は、同じクラスの清水さんだ。

今年4月に高校生になって陽子と同じクラスにはなったけど、清水さんを初めて見た時に一目惚れしてしまった。


〜7ヶ月前〜

陽子:〇〇〜

陽子:おーい。

〇〇:・・・

陽子:ねぇ、聞いてるの!?

〇〇:わ、ごめん!

陽子:どした?ぼーっとして。

〇〇:いやぁ、ちょっと眠くて…

陽子:ん??

陽子:ふ〜ん、そういうことか〜

〇〇:な、なんだよ??ニヤついてさ…

陽子:好きなんだ〜、清水さんのこと。

陽子:!?

〇〇:べ、別にそういうんじゃ…

陽子:全く、素直になりなさいよ〜笑

俺の肩を軽く叩いて、陽子はニヤついていた。


けど陽子はそれから俺の為に、清水さんと関係が作れるように協力してくれた。


清水さんの趣味のことを教えてくれたり、好きな芸能人のことだったり。

話の話題になりそうなことを次々と持ってきてくれて、おかげで清水さんとはよく話すようになって次第に仲良くなった。


〜1ヶ月前〜


〇〇:(今日のために準備してきた。)

〇〇:(きっと大丈夫。)

そう思い込んで約束した場所に行き、さんに告白した。


清水:ごめん、無理かな…

〇〇:あ、ああ…

清水:あのね、誤解しないで欲しいの。

清水:〇〇くんは優しい、一緒にね喋っていて楽しいし。けど、好きかって言われると…違うかなって。

〇〇:そっか、わかった。

清水:本当ごめんね。

〇〇:いや、良いんだ。気にしないで。


あんなに準備の期間は待ち遠しくてワクワクしていたのに、一瞬でその気持ちは枯れてずっしりとおもりが肩にのしかかった。




陽子:で、どうだったの?

〇〇:ダメだった…

陽子:そ、そっか…

陽子:残念だったね…

〇〇:まぁ、仕方ないよな…

陽子:我慢しないでよ。

〇〇:へ?

陽子:涙出てるよ。

〇〇:あ、いや…目にゴミが…

陽子:意地張んないの!



告白した次の日、学校からの帰り道で陽子に清水さんにフラれたことを報告すると、陽子は俺の肩に腕を乗せて頭を撫でてきた。


陽子:泣きたい時は思いっきり泣くの!

〇〇:ば、別にそんなんじゃ…


誰か知らない人がいたら情け無く見られていただろう。

我慢出来ず陽子の前で大号泣してしまった。

けど、そんな俺をただ黙って見守ってくれた。


その日からだろうか。

前にも増して、陽子が俺に明るく振る舞ったりしてくれているのは。

放課後に一緒に勉強に付き合うようになったり、帰り道にゲーセンやプリクラに寄りにいったり、
休みの日にはどこか一緒に出掛けたり。


そして、いつの間にか…


陽子を好きになっていた。

友だちとしてだけじゃなくて、それ以上に…




〇〇:はぁ、でもアイツは友だちとしか思ってないよな、俺のことなんか。

そう思うと、余計言えない。

陽子に対しての、本当の気持ちなんて…



そんなことを思いながら、部活からの帰り道を歩いていた。



陽子:結構です。

?:んだよ、良いだろ少しくらい。

?:ノリ悪いね、嬢ちゃん。

〇〇:え?


声が聞こえた方を見ると、耳や鼻にピアスをつけた男の人たちに陽子が囲まれていた。


陽子:いや!離してください!

?:おら落ち着けって。

?:暴れなきゃ、痛くしないからさ。


トンットンッ


?:あ?

?:⁉️

陽子の腕を掴んでいた男の肩を叩いて振り向かせて、顔面に目掛けて拳骨を喰らわせた。



陽子:⁉️

〇〇:逃げるぞ!

すかさず陽子の手を引いて、その場から走り出した。


陽子:はぁ…はぁ…

〇〇:大丈夫か、?

陽子:う、うん。

〇〇:しんどいけど、頑張れ。


後ろから追いかけてくる男たちを振り切るために、を連れて曲がり角などを駆使して走り続けた。




陽子:キャッ!

逃げている途中で、段差に足を躓けさせてしまいは転んでしまった。

〇〇:陽子!

?:見つけたぞ、おい!

〇〇:⁉️

その間に、男たちに距離を一気に詰められてしまった。


?:お前ら、もう逃げられねーぞ?

〇〇:・・・

陽子:〇〇??

陽子の肩に手を添えて立ち上がり、男たちの方に正面を向けた。


?:あ?

?:なんのつもりだテメぇ⁉️

〇〇:・・・、




親友に触るな。



?:⁉️

〇〇:❗️

全速力で男たちに突っ込んで殴りかかった。


(パンチが当たる音)

(壁に激突する音)

(脚を振り回す音)



〜数分後〜


?:や、やべぇよコイツ…

?:に、逃げるぞ!

降参した男たちが、時々転びながら俺たちから逃げていった。


〇〇:っはぁ…、⁉️

陽子:〇〇❗️

脚がふらついて意識がぼんやりしていて倒れそうになったのを、陽子が肩を貸してくれた。




陽子に補助してもらいながら公園まで歩き、ベンチに座った。

〇〇:ご、ごめん…

陽子:怪我、大丈夫なの?

〇〇:ま、まぁ…なっ笑笑

陽子:もう、馬鹿じゃないの!?

陽子:あんな無茶して‼️

陽子:死んじゃったりしたらどうするのよ⁉️

〇〇:本当、ごめん…

陽子の目をしっかり見て謝った。


〇〇:陽子を守ろうって、それしか頭になくて…

それで身体が勝手に動いて…

陽子:分かってるよ。

陽子:怒ってごめん。

陽子:本当は嬉しかったんだ、親友って言ってくれて。

〇〇:え?

陽子:小学生の時ずっと虐められていて友だちなんて居なかったのに、中学生になって〇〇と出会えて〇〇が優しくしてくれて、それで〇〇っていう初めての友だちが出来て。

陽子:〇〇が居なかったら、私ずっと独りぼっちだったから。だからね、親友って言ってくれて凄く嬉しかったの。

陽子の瞼がうるうるしていた。


〇〇:あ、当たり前だろ。

〇〇:最初に会った時はさ、陽子凄く暗かったのに今は物凄く明るくてさ。毎日馬鹿みたいに騒ぎ合ってさ。

陽子:〇〇のおかげだよ。

〇〇:この前だって俺が清水さんが好きなのを知って色々してくれたし、その後告白して落ち込んでいた俺を助けてくれたし。本当、迷惑かけまくったなって。

陽子:ううん、良いんだよ。だって私、あの時〇〇と清水さん上手くいくと良いなって、本気で思っていたから。

〇〇:陽子…

陽子:言ってなかったけどあの時期、私も好きな人いたんだ。

〇〇:え⁉️

陽子:隣のクラスの高山君だけど。私も〇〇もお互い好きな人が出来て、親友としてすっごく嬉しかったから応援してたんだよ。

〇〇:そ、そっか…


それを聞いた瞬間、また胸が締め付けられた。


そうか、陽子も好きな人出来たんだ…

それなのに俺は陽子に清水さんとのことで迷惑かけて、それから励まされて陽子のこと好きになって…

身勝手だな、俺…



聞きたくなかったけど、気持ちを悟られたくなくて口を開いた。


〇〇:その高山って子とは上手くいっているのか?

陽子:フラれちゃった笑

〇〇:え⁉️

陽子:〇〇が清水さんに告白する前にね告白しに行ったの。けど、ダメだったよ。

〇〇:そ、そんな…それなのに俺のことを…

〇〇:本当ごめん‼️

陽子:あはは、もう謝り過ぎ笑笑

陽子:良いじゃん、お互いフラれたもの同士だしさ!落ち込むより、楽しんだ方が良いのかなって。

陽子:それにね、それだけじゃないんだ…

〇〇:何?

陽子:私ね、



〇〇のこと好きになっちゃったの。



〇〇:⁉️

陽子:親友としてだけじゃなくて、それ以上に…ね。


気がつくと、陽子が俺の手を握っていた。


〇〇:・・・、同じだったんだな。

陽子:え?

〇〇:俺も、陽子が好きになっちゃった。

〇〇:親友としてだけじゃなくて、それ以上に。


そう伝えると、陽子に肩に頭を乗せられていた。



陽子:へへ、なんか恥ずかしい笑

〇〇:だな…笑

陽子:でも、凄く嬉しいよ。

〇〇:俺も。


冬の風に当たっていたから最初はちょっと冷たかったけど、段々温かくなっていった。

そう感じると嬉しくなって口角が上がって、肩の上で頭をの頭にくっつけた。

そして、互いに小さい声でクスッと笑った。


肩思い


fin.

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