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最後の夏休みに過ごす、みんなとの思い出…君とはしょっぱくて甘い思い出…


〇〇:はぁ…なんでだよ…

明日から夏休み。

ウキウキな気分で長期休み前の最後の授業を受けるはずが、

朝から鬱な気分で登校しなければならなかった。

〇〇:なんで今日に急に言うのかな…

独り言を呟いて、またため息を付いた。





茉央:おはよー、〇〇!

〇〇:・・・・

茉央:おーい、もしもーし?

〇〇:・・・・

茉央:〇〇!!

〇〇:うわぁ!?

大声を出され、ようやく幼馴染の茉央がいることに気がついた。



茉央:なんや、んな暗い顔して?

〇〇:んな、別になんでも…

茉央:ははーん、さてはお母さんに成績悪過ぎて怒られたとかやろ?

〇〇:ざんねーん、全然違います〜

茉央:あ、わかった!好きな人に告ってフラれた!?

〇〇:ああ??💢

茉央:え、あたり?

〇〇:違うわ!

茉央:なんやもどかしい!!はよ教えてや。

別にここまで騒がなくても、言うつもりだったけど…

と思いながらも茉央に伝えた。




茉央:そ、そうなんや…

〇〇:うん、父さんの転勤が決まって俺たち家を引っ越すことになったの。

茉央:なんか、ほんまごめんな…

〇〇:いいって謝らなくて。

茉央が寂しそうな表情になっているのを見たら、そう応えていた。



茉央:なぁ、その引越しっていつにするん?

〇〇:え、ああ…8月の中頃には家具とか全部新しい家に送り終わる予定だってさ。

茉央:そっか。

茉央:じゃあ、それまで思い出沢山作っとかなあかんな!

〇〇:茉央…

茉央:よし、明後日からみんなで沢山遊びに行くで!

ポンッ

肩を叩いてきた茉央は、いつになく笑顔になっていた。


茉央:で、どこ行こうか?

〇〇:は、決めてないのかよ?

茉央:今言い出したばっかやん、決まっているわけないやろ!

〇〇:ま、そ、それもそうか…

茉央:今日学校終わったら、みんなで会議やな。

こういうところが昔から変わらなくて、それにいつも助けられていたんだろうなぁ…と改めて思った。

〇〇:ありがとうな。

茉央:ええって、ええって。


〜放課後〜


大毅:まじか、〇〇転校しちゃうのかよ…

奈央:え〜、さみしいな…

茉央:てなわけで、今年の夏はみんなで〇〇と沢山思い出作ろうって話や。

〇〇:悪いな、集まってもらって。

大毅:おいおい、なんで謝るんだよ笑

〇〇:え?

奈央:そうだよ、奈央たちだって〇〇くんと沢山遊んで思い出作りたいし。

茉央が俺のためにしてくれた提案に、みんな快く乗ってくれた。

それが嬉しくて…


茉央:どした〇〇?

〇〇:え、あぁ…

大毅:はは、泣くのはまだ早いだろ?笑

〇〇:ご、ごめん。

奈央:良いんだよ、泣いたって。

〇〇:うん、大丈夫。

〇〇:本当、みんなありがとう。

大毅・奈央・茉央:うん。


そして、みんなと過ごす最後の夏休みが始まった。




(波の音)

大毅:ウヒョーーー!!海だぁああ!!!

奈央:もう、そんなはしゃいじゃって笑


最初は、みんなで海に行った。



茉央:見てー、〇〇!

茉央:海めっちゃ綺麗やで!

〇〇:あぁ、そうだな。


爽やかな風景が、上にも下にも広がっていた。


〇〇:わっ!?

茉央:ほら、海入るで。

〇〇:あ、ちょっ…速いって笑

茉央:〇〇が鈍臭いねん笑

〇〇:おい、あんまりだぞ!

茉央:あはは。

茉央に手を引かれ浜辺を走らされて、海に入った。


大毅:〇〇、あの岩まで泳いで競走しようぜ。

〇〇:は、乗ったわ。

大毅:勝ったら、負けた奴に焼きそば奢らせるってのはどうだ?

〇〇:良いぜ、俺が勝つからな。

大毅:言ったな?後悔すんなよ?笑


位置について、女子たちの掛け声とともに俺と大毅は泳ぎをスタートした。


茉央:がんばれー、二人とも。

奈央:溺れたりしないでねー!


数分後・・


〇〇:だぁーー、くっそぉおおお!!!

大毅:よっしゃぁああ、俺の勝ち!

大毅:んじゃ、約束通り…

〇〇:わーったよ、んなニヤニヤすんな。買ってくるから。

約束通り、負けた俺は大毅に焼きそばを奢って自分の分も買った。



〇〇:ああ、悔しい!!!

茉央:はい、〇〇。

〇〇:え、これ…

茉央が自分で買ってきた焼きそばを、俺のもとに持ってきた。


茉央:うちの分、分けたる。

〇〇:良いよ、茉央の分が少なくなっちゃうじゃん。

茉央:平気や、それより〇〇泳いだからその分お腹空いとるやろ?

〇〇:あ、うん…

茉央:なら遠慮せんといて。

〇〇:ありがとう。

茉央から焼きそばをもらおうとした。


茉央:あ、食べさせたる。

〇〇:いや、そこまでしなくて…

茉央:ほら、口開けて。

〇〇:いや良いって…

茉央:グダグダ言わんといて、ほら!

〇〇:え、あっ。

ぱくっ


茉央:どや?うまいやろ?

〇〇:うん、うまい…

本当やめて欲しいと思った…

そんなことされたら茉央がすっごく可愛く見えて仕方なくなるんだから…


その後は、なぜか大毅がでっかいスイカを持ってきてみんなで目隠ししてスイカ割りをしたり…


スンッ


〇〇:外してんぞ、大毅ー!笑

大毅:だっ、くっそぉおお…


バゴッ ブシャーンッ


茉央:え?奈央すごない!?

奈央:へ?うわ、やったぁあああ!!!


大毅が盛大な空振りをした後、奈央ちゃんがスイカを綺麗に真っ二つに割った。




〜1週間後〜


今度は遊園地に4人で来た。


大毅:グッパーで乗る組み合わせ決めようぜ。

乗り物の列に並んでいる間、そんなことをして誰と誰で乗るか決めたりして…


奈央:わ、〇〇くん一緒だね。

〇〇:そうだね、よろしく。

大毅:茉央ちゃんとか。なんか新鮮だな。

茉央:ふふ、そうだね。


バッシャーーーン!!!


〇〇:ブホォ、やば濡れすぎでしょ。

大毅:ほんとだよ…

茉央:あはは、男子二人とも髪の毛やばっ笑

奈央:ぶふっ、ほんとだ!笑

一同:あははは。


高いところから急降下して、ずぶ濡れになってみんなで笑ったり…



茉央:い、一緒やね〇〇。

〇〇:おお、そうだな。

茉央:手、繋いでくれへん?

〇〇:え?

茉央:その、ちょっと怖くてな…

〇〇:良いよ。

ぎゅ

茉央:えへへ。

〇〇:おい、本当は平気だろ??

茉央:違うって、〇〇が手握ってくれるから安心しただけや。

〇〇:そ、そうか…

茉央:うん。

ジェットコースターで茉央と隣になって、手を握らされて胸がドキドキしたり…



楽しすぎて、その日もあっという間に一日が終わった。





そして、祭りにみんなで行く日がきた。

日付は引っ越す日の3日前。

実質、今日はみんなと過ごせる夏休みの最後だった。


そして、茉央とも過ごせる最後の・・・


大毅:ほい、チョコバナナ買ってきたぞー!!

奈央:ありがとー!

〇〇:こっちは焼き鳥な。

茉央:うわぁ、うまそうやなー!


賑わう屋台の並びを見ながら、それぞれが買ってきたものを食べながら歩いた。


大毅:くあー、うめぇ!!

〇〇:うん、めっちゃうまいな!

奈央:なんか、〇〇くんと行く場所の最後がここって良いよね。

茉央:ふふ、そうやな。


毎年ここの祭りには来ていたから、安心感があったし最後にはふさわしいかもしれない。



大毅:そう言えば、そろそろ花火の時間じゃないか?

奈央:わ、そうだった。早く場所取らないと!

茉央:あっ。あれがまだ…


茉央が言った「あれ」。

その言葉だけで4人は通じ合えた。


〇〇:俺、買ってくるよ!

大毅:おお、サンキュー!

奈央:じゃあさ、二手に分かれよ?私は大ちゃんと場所とってくるから、茉央は〇〇くんと一緒に買ってきなよ。

茉央:え、ああ…うん。そうしよっか、〇〇。

〇〇:おう。

大毅と奈央ちゃんと別れた後、俺は茉央と一緒にその「あれ」が売っている場所まで向かった。




茉央:ふふ、危なかったな。

〇〇:そうだな、いつもならシーソルトアイス最初に買って食べていたのにな笑

そのシーソルトアイスが売っている場所に着くと、


おじさん:おお、待ってたぞ!!

〇〇:おじさん、こんばんは。

茉央:今日も賑わってますな〜

おじさん:そりゃそうだよ、シーソルトアイスはこの祭りの名物なんだからさ。

〇〇:じゃ、シーソルトアイス4本お願い。

おじさん:あいよ!800円頂戴するよ。


昔からこの祭りに行くと、必ずこのおじさんからシーソルトアイスというアイスバーを買って茉央たちと一緒に食べるのが決まりになっていた。


茉央:良かった、売り切れになりそうだったみたいやし。

〇〇:だな。

茉央:はぁ〜、なんか寂しいな。

〇〇:え?

茉央:もうこうしてシーソルトアイスを〇〇と買えないんやな…

〇〇:・・・・

寂しげなその顔を見て、少しこちらも黙ってしまった。


コツンッ

茉央:痛っ!?

〇〇:ほら、大毅と奈央ちゃん待っているから行くぞ。

茉央:あ、うん…

〇〇:それに、いつかまたここの祭りには来ようぜ。

茉央:え?

〇〇:引っ越しても、お盆とかには戻ってきてまたシーソルトアイス買って食べようよ。

茉央:〇〇…

そう提案したら、茉央の顔が明るくなった。


茉央:うん。




大毅:あ、〇〇たちだ!

奈央:おーい、こっちだよー!!


大毅と奈央ちゃんが場所を取ったところに合流して、二人にシーソルトアイスを渡した。


〇〇:ほい。

大毅:サンキュー。

奈央:やっぱり、これがないとね。

茉央:うん。


そして、4人で草原に腰掛けてシーソルトアイスを食べた。


大毅:しょっぱいな、相変わらず。

奈央:でも甘いよね。



その不思議な味覚が人気で、この祭りではいつもシーソルトアイスは売り切れになっていた。


〇〇:うまいな…

茉央:ね。

茉央と顔が合って、微笑み合った。




さっき茉央にはまた食べようだなんて言ったけど、

もうこのアイスを食べられないかもしれない…


と、正直自分でもそう思っていたのを隠して…




ヒュ〜〜〜ン  ドカァーーーーン!!


茉央:花火、綺麗やな〜

〇〇:ああ、本当にな。

花火師が打ち上げる色んな形の花火を見ながら、

一発一発が、刻々と迫る最後の時間を表しているように感じてしまった。


ぱくっ


シーソルトアイスを頬張った。

さっきよりしょっぱく感じた。


隣に座る茉央の横顔を見た時、初めてシーソルトアイスを食べた時のことが蘇った。


(回想)


茉央:はい、これ。

〇〇:え、アイス?

茉央:ただのアイスじゃないんやで?

〇〇:そう、なのか?

茉央:ええから、食べてみ?

ぱくっ

〇〇:しょっぱい…でも、甘い。

茉央:面白いやろ、この味。

〇〇:うん、美味しい。


(ここまで回想)


〇〇:あっ。

シーソルトアイスを食べ終わると、アイスのバーに書かれている文字が見えた。


「あたり」





茉央:ふふ、花火休憩かな。

そうぼやいた茉央に俺はそっと横から寄った。


〇〇:茉央?

茉央:ん、何?

伝えるなら今だと思ってそうした。






〇〇:好きだ、茉央のこと。




そう伝えると、一気に顔が赤くなって目を逸らされた。

けど、


ぎゅっ


手をしっかり握られた。



茉央:遅い、遅いで〇〇。

茉央:もっと早く知りたかった…

〇〇:ごめん。

茉央の目から涙が溢れていた。

茉央:でも、人のこと言えんよな。うちも。

茉央:〇〇にもっと早くに伝えとったら…

〇〇:茉央…

茉央:うちも好きやで、〇〇のことが。

泣きながら笑っていた。



大毅:お、そろそろフィナーレか?

奈央:ね、そうみたい。

こっちには気づかず、向こうは花火のフィナーレを待っていた。



ヒュ〜〜〜ン  ドカァーーーーン!!



フィナーレが始まった。

〇〇:っしゃ、最後はちゃんと楽しむか。

と意気込むと、袖を引っ張られた。

〇〇:ん?

横を向いた瞬間、




〇〇:!

茉央と唇が重なった。





全ての花火が打ち上げれ、花火大会は終わった。


大毅:俺、トイレ行ってくるわ。

奈央:あ、私も。

茉央:うちは平気やで…

〇〇:あ、俺も平気…


大毅と奈央ちゃんがいなくなって、茉央と二人っきりで草原に座っていた。


茉央:ふふ。

〇〇:ふっ。

一言も喋らなかったが、それでもこの二人だけの時間を味わいたかったのでそれで良かった。


しかし、


ブルルゥ!!

持っていたスマホが振動し、雰囲気が壊された。

〇〇:(んだよ、こんな時に。)

起動すると、父からの電話だった。

〇〇:ごめん、父さんから電話だ。

茉央:あ、うん…

少し怒りたい気持ちを抑えて、電話に出た。

が、その直後…



〇〇:マジ!!??

茉央:!?

大声を出して、茉央をびっくりさせてしまった。

〇父:ああ、本当だ。

〇〇:わ、わかった。

父との通話を切った。


茉央:ど、どないしたん〇〇?

〇〇:父さんの転勤が無くなった。

茉央:え、ほ、ほんまに!?

〇〇:ああ、だから引っ越さなくて済む!

そう伝えた瞬間、茉央に飛びつかれた。



茉央:ヤッホぉおおおお!!!!

〇〇:な、落ち着けって!!笑笑

茉央:落ち着けるかいな、こんな嬉しいのに!!

それは、もちろんこっちも同じだ。



大毅:う〜す、ただいま〜

奈央:どうしたの、二人とも?

帰ってきた二人が、こちらを見てキョトンとしていた。

茉央:〇〇の引っ越しが無くなったんや!!

大毅:え、まじ!?

奈央:よ、良かったじゃん!!

〇〇:ついさっき父さんから連絡きたんだよ。



神様のいたずらかと思うくらい、今すごく幸せだった。



茉央:もう、〇〇最高!!!

〇〇:お、おい。やめろって!!苦しいってば!!

興奮気味の茉央に強めに抱きつかれ、窒息しかけた。

大毅:じゃ、これからまだみんなで遊べるな。

奈央:あ、でも今度は二人っきりでとかじゃない?

大毅:へ?なんで?

奈央:良いから、良いから。

大毅:あっ、ちょっ…奈央さぁあん???

雰囲気で察してくれた奈央ちゃんが大毅を連れてってくれたので、また二人きりになれた。



茉央:ふふ、奈央には感謝せんとな。

〇〇:だな。

〇〇:あ、そうだ。

茉央:何?

〇〇:ほら。

茉央に「あたり」と書かれたアイスのバーを見せた。

〇〇:初めて出たよ。

茉央:ほんまや、すっご!

〇〇:もらいに行こうよ。

茉央:うん。


それから、おじさんのところに行ってシーソルトアイスを2本もらった。


おじさん:おまけだ。

〇〇:え?

おじさん:その感じ見てればわかるってもんさ。

〇〇:あっ。

茉央が腕に抱きついているのをおじさんに見られ、恥ずかしくなってきた。



ぱくっ


茉央:ほんま、しょっぱいわ。

〇〇:でも甘いな。

茉央:ふふ、そうやね。



しょっぱくて甘い、二人の時間が始まろうとしていた。


fin.

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