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普段は強面で凶暴な彼女は、僕の前では嘘みたいに優しい。1話

空には雲ひとつなく青空が広がっていた…が…



瑛紗:だ、か、ら…覚えてるっつてんだろおおおお!!!!!!


爽やかな朝に似つかわしくない怒号が響く。



不良:なら、金をはやくわた…

瑛紗:渡すわけねーだろうがあああああ!!!!!!

ボゴッ

瑛紗の渾身のパンチが不良の頬に決まり、宙に浮いてコンクリートの地面に落ちていく。

〇〇:うわ⁉️

ぼ〜っとして歩いていた〇〇の目の前に空から降ってきた不良が目を見開いて倒れていた。

不良:ひぇ〜〜…


瑛紗:あ、〇〇!おはよ。

さっきまでは殺気だった瑛紗の目は〇〇を見た瞬間に変わって、怖いくらいキラキラしていた。

〇〇:あ、お、おはよ…

瑛紗:今日も良い天気だね♪

〇〇:う、うん…これは?

瑛紗:ああ、またカツアゲされただけだよ?

と言いながら、ニコニコうしながら瑛紗は気絶した不良の背中を蹴飛ばした。

不良:ぐほ…

瑛紗:だ、か、ら〜お仕置きしたんだ☆

〇〇:そ、そっか…

瑛紗:んふふ、一緒に行こ?

〇〇:う、うん…笑


さっきまでの凶暴な性格から豹変して、何故か〇〇には優しい瑛紗だった。




〇〇が瑛紗と関わるようになったきっかけは、高校に入学して1ヶ月経ったある日のことだった。


〇〇:うわぁやばい!!!遅刻!!!!


目覚ましをかけ忘れた〇〇は寝坊してしまい、急いで制服に着替えて家を出た時には、朝のHRの時間まであと5分しかなかった。

なので、いつもは乗らない自転車を猛スピードで漕いで行った。

間に合わせる為に、〇〇は途中で坂を下る場所でもブレーキをかけずそのまま突っ走ると、坂を下った先にに人の集団が見えた。

〇〇:!?

慌ててブレーキをかけようとしたが、スピードが速すぎて速度が落ちなかった。

〇〇:うあああ、すいませーーーーん!!!退いてーーー!!!!


バコーーーーーン!!!!!


〇〇:う…イタタタッ…

横転した自転車の横で倒れていた〇〇が起き上がると、〇〇の周りで、刺青が背中に入っていたり頰に傷があったりな所謂暴走族みたいな男たちが泡を吹いて倒れていた。

〇〇:(うわ、これとんでもないことしたんじゃ…)

?:君、確か同じクラスの…

〇〇:へ?

女の子の声がして〇〇が振り向くと、学ランの制服の上に赤いシャツとパーカーを着た少しイカつい風貌な女子が立っていた。

〇〇;あ、池田…さん?

顔を見た〇〇の口からすぐに瑛紗の名字が出てきた。


というのも二人とも同じクラスで、クラスで〇〇が瑛紗を初めて見た時、今の格好と同じで物凄く強面な感じだったのを覚えていたからだ。

正直近寄りがたい存在に思っていた〇〇からしたら、瑛紗と関わりをもつなんてあり得ないと思っていた。



〇〇が話しを聞くと、どうやら瑛紗は道を歩いていたらこの暴走族たちにぶつかって、喧嘩を吹っ掛けられていたという。


瑛紗:助けてくれてありがとう、〇〇くん。

〇〇:あ、いやぁ…助けたというより事故なんだけど…

瑛紗:あ、怪我してる…

〇〇:え…

〇〇の額に傷があるのを見て、瑛紗が応急処置を施した。


瑛紗:もうこれで大丈夫だと思うよ。

〇〇:あ、ありがとう。

瑛紗:ふふ。

クラスで見た時の印象とは真反対に、瑛紗は〇〇に手当てをして笑みを見せてきた。

瑛紗:ねぇ、〇〇くん?友だちになってくれないかな?

〇〇:え…

瑛紗:これも何かの縁だしさ。

〇〇:う、うん。良いよ。

瑛紗:やった〜じゃあ、これからはお互い呼び捨てね〇〇。

〇〇:あ、う、うん。

瑛紗:ほら、呼んでよ。友だちなんだから。

〇〇:よ、よろしくね、瑛紗。

瑛紗:うん、よろしく〇〇。


〇〇:(池田さ…あ、いいや瑛紗って、声凄く可愛いな。)

瑛紗と友だちなって彼女の声を聞いた〇〇は、一人そう思っていた。





〇〇が瑛紗と友だちになったその日、瑛紗と一緒に登校した〇〇だったが、遅刻したことで職員室に瑛紗と一緒に呼び出されていた。


担任:さて、お前たちには反省文を1万文字書いてもらおうか。

〇〇:い、1万!?

瑛紗:ちょっと待てよ。うちらは、暴走族に襲われたんだぞ???

担任:どういう理由であれ、遅刻は許さん。良いから、反省文を今日中に書いてこい。

瑛紗:あ???ふざけんじゃねーぞ、このクソ眼鏡!!!!

担任:おい、そんなこと言って良いのか??追加で1万文字増やしても…

瑛紗:てめー、足元見やがって…この!!


瑛紗が拳を振り上げた瞬間、〇〇がそれを止めた。

〇〇:やめよ、瑛紗。

瑛紗:な、なんでよ!?こいつ無茶苦茶なこと言ってんのよ!?私は別に反省文書かされようが構わない、でも〇〇まではおかしいって!!

〇〇:瑛紗…

少し間を置いて、〇〇は瑛紗に微笑みかけて言う。


〇〇:ありがとう、そう思ってくれて。

瑛紗:あ、当たり前だよ…友だち、だもん。

〇〇:分かってる。だから僕も友だちとして、瑛紗がこれ以上罰食らうのは嫌なんだ…

瑛紗:〇〇…わ、わかったよ。

〇〇の説得で、瑛紗は拳を引っ込めた。




瑛紗:あ、このお花さん可愛い〜

〇〇と一緒に通学路を歩いていた瑛紗が、道端に咲いた花を見つけてはしゃぐ。

〇〇:あ〜、山茶花か。

瑛紗:サザンカって言うんだ、この花。

〇〇:うん、冬に咲く花だよ。

瑛紗:ふふ、〇〇は物知りだね。

と二人で話していると、


?:あの二人、男子の方なんかダサくね??

?:な、彼女はなんか古臭いヤンキーみたいな感じだし。

〇〇と瑛紗を嘲笑う声が聞こえてきた。

〇〇:(うわ、これは…)

〇〇は恐る恐る瑛紗の方を向いた。


サザンカを見つけてキラキラしていた瑛紗の目は一瞬で豹変し、獲物を狩る猛獣のような目つきをしていた。


瑛紗:おい、なんか言ったか??

?:え…(汗)

?:な、なんだコイツ…

瑛紗:面と向かって、モノも言えねーのか??

指をぼきぼき鳴らして、瑛紗は威嚇した。

瑛紗:どうなるか、分かってんだろうな??

?:(やばい…)

?:(殺される…)


〇〇と瑛紗に陰口をしていた二人の男子の顔は真っ青になっていた。


?:すいませんでしたあああああ!!!!!


〇〇:やっぱり…

〇〇は逃げていく男子二人を寧ろ哀れんでいた。


瑛紗:ったく、男のくせに威勢もね〜のか。って、痛っ!

瑛紗が指を抑えていたのを見た〇〇は、瑛紗に駆け寄った。

〇〇:瑛紗、怪我してるじゃん。

恐らく、さっき瑛紗をカツアゲしてきた不良を殴った時に出来たモノだろう。

瑛紗:あ、平気だよ。ただの擦り傷だし。

〇〇:ダメだって、擦り傷でもばい菌入ったらひどくなるんだよ?

瑛紗:そんな心配しすぎだって、〇〇は笑

〇〇:ダメだって、ほら。

瑛紗:あ。

〇〇は瑛紗の腕を引いて、公園の蛇口まで連れてきて瑛紗の指にできた傷口を洗った。


瑛紗:痛っ!

〇〇:ごめん、染みたね。

瑛紗:う、うん…

それから、〇〇は絆創膏を瑛紗の指に貼ってあげた。

〇〇:はい、これで大丈夫。

瑛紗:ありがとう、〇〇。

〇〇:如何いたしまして。


〇〇と瑛紗が公園をあとにして学校に向かおうとすると、瑛紗が〇〇の頭を撫でてきた。

〇〇:へ?

瑛紗:んふふ、さっきのお礼だよ。


冴えない男子高校生と強面な女子高校生の、何気なくない朝の出来事だった。


1話  完



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