普段は強面で凶暴な彼女は、僕の前では嘘みたいに優しい。9話
駅の改札を出た〇〇と瑛紗。
瑛紗:いぇーい!
瑛紗:夢の国に来たぜー!
キャラクターのカチューシャを付けて瑛紗が、はしゃいでいた。
〇〇:瑛紗〜
瑛紗:何?
〇〇:可愛いね、そのカチューシャ。
〇〇:似合ってるよ。
瑛紗:そ、そう?
〇〇:うん。
瑛紗:じゃ、じゃあさ…
瑛紗が鞄から頭に付けているのと同じカチューシャを取り出して、〇〇の頭に付けた。
〇〇:へ?
瑛紗:ふふ、お揃いだ〜♪
〇〇:持ってたんだ。
瑛紗:まぁこれ姉貴のだったけど、アイツ友だちと熱海になんか行ってるから借りてきた。
〇〇:あ、ありがとう!
〇〇:なんか良いよね、こういうの。
瑛紗:でしょ?
瑛紗:折角夢の国に来たら、まずはこれしないとね!
この前の駅前での似顔絵とマッサージサービスの営業で2人は3万ほど稼いできた。
そのお金の使い道で…
〜数日前〜
〇〇:どうしようか?
瑛紗:ねぇ、〇〇?
〇〇:ん?
瑛紗:夢の国行こうよ。
〇〇:ああ、良いね!
2人は夢の国に行くことにしたのだ。
開園時間になり、ゲートを通り抜けると…
瑛紗:わーい、テンションあがるぜー!
瑛紗が駆け出すポーズを取る。
〇〇:ふふ、気持ちは分かるけど走っちゃダメだからね。
瑛紗:ふふ、冗談だって。
〇〇:でも、ワクワクしてきたよね!
瑛紗:でしょ!ねぇ、最初何に乗る?
〇〇:やっぱり絶叫系からとか?
瑛紗:じゃあ、ビッ〇・サン〇ーマウン〇ンから乗ろうよ!
〇〇:良いね!
ビッ〇・サン〇ーマウン〇ンまで、瑛紗と手を繋ぎながら歩いていた〇〇は微笑を浮かべていた。
瑛紗:ねぇ〇〇〜
〇〇:何?
瑛紗:今こうして歩いているだけでも、楽しいね。
〇〇:そうだね、本当夢の国は凄いよね。
瑛紗:ねぇ〜♪雰囲気に凄くこだわっているのが分かるよね。
〇〇:うん。
〇〇:でも…
瑛紗:?
〇〇が顔を上げて少し間を取った。
〇〇:瑛紗と一緒だから、凄く楽しいんだと思う。
そう言って瑛紗に微笑みかけた。
瑛紗:〇〇。
〇〇:何?
瑛紗:瑛紗も同じ気持ちだよ!
瑛紗も〇〇に負けないくらい、満面の笑みを見せてきた。
それからビッ〇・サン〇ーマウン〇ンに乗って、
瑛紗:ひゃっほ〜!
〇〇:うぉ〜い!
叫んでスリルを楽しんだり、
瑛紗:これ可愛いね。
〇〇:ね〜
パクッ
瑛紗:ん、おいひぃ〜!
〇〇:ね、ほっぺ落ちちゃいそう。
瑛紗:ふふ、〇〇可愛いね表現が。
〇〇:そ、そうかな…でも美味しいから、つい。
瑛紗:あ、ほっぺについてるよ〜
〇〇:あ、ごめん…
瑛紗:ふふ、やっぱり可愛い。
キャラクターのデザインがされたフードを食べてイチャついたり、
瑛紗:あ、ミッ〇ーがこっちに手振ってくれた!
〇〇:え、本当!?
瑛紗:ほらー!〇〇も手振ってみなよ。
〇〇:え、あ、やっほ〜ミッ〇ー!
〇〇:凄い、手振ってくれた!
瑛紗:ね?
パレードを観てはしゃいだりして、
楽しく平和に夢の国を満喫していたのだが…
2人がランチを食べた後のこと…
キャスト:すいません、こちらでは座り込みはご遠慮いただいています。お立ちになっての撮影でお願いします。
園内の中心に建つ城前に広場があるのだが、そこでは座り込みが禁止されている。
が構わず、写真を撮るためだったり、ただ疲れを癒したいがためだったりで、ルールを無視して座り込む客たちが大勢いた。
客:あー、すぐに終わりますから。
キャストに注意された客はそう答えたは良いものの、中々立ち上がらず座ったまま雑談していた。
数分後…
キャスト:あの〜
客:もうちょっと待ってください。
と軽く会釈だけして、客はまた座り込み相手と喋り出した。
〇〇:うわ…(中々酷いな…)
客の態度に〇〇が引いていると、
瑛紗:許せん…
見ていられなくなった瑛紗は、キャストの近くに寄っていく。
〇〇:瑛紗、ちょっ…
瑛紗:大丈夫。
瑛紗:いつもみたいに、殴ったりしないから笑
〇〇:それは分かっているけど…
何をするのかと懸念しながら、〇〇は瑛紗を見守った。
瑛紗:あの、すいません。
キャスト:あ、はい!どうかされましたか?
瑛紗:いえ、ちょっと…その首に付けているマイクを借りたいです。
キャスト:ま、マイクを??
瑛紗:今から、あの人たちを説得しますから。
キャストからマイクを借りた瑛紗が、マイクを身につけた。
瑛紗:すぅ〜…
瑛紗は深呼吸すると、
〇〇:あれ?
いつもみたいに目をギラギラさせず、寧ろ明るくしていた。
そして…
瑛紗:皆さぁ〜〜ん、今日はとーっても良い天気ですね!
瑛紗:だから、こうやってお城の前で写真撮りたい気持ち、すっごーく分かります!
〇〇:⁉️
普段のヤンキーな雰囲気の瑛紗からは想像出来ないようなアイドルみたいな声で、瑛紗は客たちにマイクを使って話しかけていた。
「え、めっちゃ可愛いあの子。」
「もしかして、イベント始まるんじゃ?」
「じゃ、あの子キャストさん⁉️」
座り込んでいた客たちが一斉に立ちだし、瑛紗に注目した。
〇〇:(凄い…あんな風にキャストさん無視していた人たちを食い付かせた…)
瑛紗:でも〜、他のゲストの皆さんもここを通るので、座り込みなどはご遠慮してくださると嬉しいで〜す。
瑛紗:もし〜、言うことが聞けない場合は〜
ニコニコなまま瑛紗は少し間を置いていたが…
・
・
・
・
・
瑛紗:全員出てってもらうからな?
群衆:⁉️
〇〇:(あ、やっぱりいつも通りだ…)
瑛紗のアイドル並みの甘々ボイスで注意してからの、瞳に明かりがない目つきで低音ボイスでの警告だった。
瑛紗:夢の時間が終わるってこと、だからな?
キャストの注意をガン無視していた客たちは、恐怖のあまりその場から立ち去っていく。
瑛紗:ふ〜。
キャスト:あの〜、もしかしてキャストの人ですか?
瑛紗:へ?
キャスト:いや、なんていうか凄くパフォーマンスだったので…
客たちに注意していたキャストが、瑛紗を畏敬の目で見ながら聞いた。
瑛紗:あはは、ただの学生ですよ〜
瑛紗:ね〜、〇〇?
〇〇:う、うん…
キャスト:は、はぁ…
キョトンとした顔のキャストをあとに、〇〇たちは園内を再び歩き始めた。
それからか、不思議なことに園内で迷惑行為をする客は現れなかったという…
何故なら…
瑛紗:ふふ〜♪
瑛紗:楽しいね〇〇。
〇〇:うん、瑛紗。
手を繋ぎながらニコニコしている2人が通り過ぎる度に、寒気を感じる者たちがいたのだ…
?:まずい、あの子だ…
?:変なことするなよ…
?:うん、したら…やられる…
ギロリッ
?:⁉️
見た目は可愛いけど中に鬼を抱えた女子高校生と、その彼氏の男子高校生による夢の国での一時でした…とさ。
9話 完
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?