
17話「デルタ」
ー前回までのあらすじー
クリーニングの配達をしていた飛鳥の目の前で、体に触れただけで人を灰化させる青年と遭遇する。青年の正体は飛鳥の思った通りオルフェノクで、ファイズに変身した飛鳥が挑むも青年のオルフェノクの力はかつてないほど強力で、圧倒された飛鳥はファイズのベルトを青年に奪われてしまう。

飛鳥:はがぁ…ぐっ…
サァ…
青年に掴まれた飛鳥の首から、灰が溢れ落ちていた。
青年:へ〜、君は簡単に消えないんだね。

飛鳥:うっ…
青年:ん?
その時、一つの紙飛行機が青年の上を通り過ぎた。
ドサッ
飛鳥:げほ…げほ…
青年が飛鳥を無造作に手放し、そのまま紙飛行機を追っていく。
飛鳥:(ファイズのベルトが…)
うつぶせになっていた飛鳥が立ち上がって、青年のあとを追おうとするも既に青年の姿は無かった。
啓太郎:もうなんで電話に出ないの、飛鳥さん!!!
配達に行ったきり戻ってこない飛鳥を探しに、啓太郎はバンを走らせていた。
そして、とある橋に差し掛かったところで、啓太郎の目の前にオルフェノクが一人の人間を襲おうとしているのが目に入った。
啓太郎:!?えんちゃん!!!
その襲われているのがさくらと判明した直後、
さくら:!?
オ:ぬわぁ!?

突然現れた別のオルフェノクが、さくらを襲っていたオルフェノクに奇襲をかけてきた。
さくら:(オルフェノクが、私を…助けた?)
啓太郎:えんちゃああん!!!
さくら:啓太郎!
啓太郎:よ、よく分かんないけど、今のうちに逃げよう。
さくら:うん!
啓太郎がさくらの手を引いてバンに戻ると、二人を乗せたバンが走り去っていく。
オ:何しやがる!?
?:…

さくらを襲っていたオルフェノクに、突如現れたスパイダーオルフェノクが飛び掛かり、キックを繰り出す。
オ:ぬあ⁉️
?:消えろ。
スパイダーオルフェノクは右手にチャクラムを生成すると、チャクラムでオルフェノクを斬りつけた。
オ:ぐほぉ…
?:はぁあああ‼️
チャクラムの棘がオルフェノクの胸に刺さると、オルフェノクの身体が青く燃え盛り灰化していく。
?:…
スパイダーオルフェノクが変身を解くと…
由依:…
瑞穂:…
目を覚ました瑞穂の目の前には、何事もなかったかのように食事をする美波と蓮加、そして村上がいた。
瑞穂:貴様ら…!!

抵抗を試みようとした瑞穂だが、鎖で椅子に拘束されて身動きが取れなかった。
美波:あら、お目覚めのようね。

蓮加:食べたい〜??笑。

瑞穂:ふざけるなぁ!!!
村上:まぁ、落ち着いてください。あなたに危害を加えるつもりはありませんから。ただ、聞きたいことがあります。流星塾の同窓会の日、あの日に何が起きたか?ということです。
瑞穂:貴様、その日のことは二度と口にするなぁあああ!!
村上:ふん、やはり何かあるみたいですね。貴女だけが知っている秘密が。

瑞穂:!
突然瑞穂は美波に近づいて、美波の首元にフォークを突きつける。
美波:ぷふっ。
蓮加:あははは。
瑞穂:何がおかしい!?
美波:ふふ、おバカな子ね。そんなの脅しにもならないわ。
蓮加:ね〜。
瑞穂:私は本気だ!
村上:なるほど、仕方ない…
村上が席を立つとオルフェノクに変身し、瑞穂に向かって青いエネルギー弾を飛ばした。

瑞穂:グハァ!?
バタンッ
カイザのベルトがない瑞穂は、成す術無く倒され気絶してしまう。
啓太郎:え!?土生さんが…

さくら:うん、確か前に飛鳥さんが戦ったことのある女のオルフェノクに連れてかれちゃって…
啓太郎:じゃあ、急いで助けないと!
さくら:うん、とりあえず飛鳥さんに連絡して…

啓太郎:それがさ…飛鳥さん、さっきから連絡取れなくて…
さくら:え…?
啓太郎からの話を聞いて、さくらは不安になった。
さくら:(まさか、飛鳥さんまで…)
啓太郎:とにかく、一度家に戻ろう。もしかしたら、飛鳥さんが帰ってきてるかも。
さくら:そ、そうだね…(今は信じるしかないか…)
そして、啓太郎が走らせていたバンが菊池クリーニングの前に着くと、配達用のバイクが止まっていた。
啓太郎:ほら!飛鳥さん、帰ってきてたんだ。
さくら:は〜、良かった…
啓太郎:またズル休みしてたんじゃないと良いんだけど…
さくら:ああ…
啓太郎との話で、さくらはこの前のことを思い出した。
〜1週間前〜
さくら:な〜に、してるの?飛鳥さん。
飛鳥:ぎく!?
啓太郎:ダメだよ、飛鳥さん。配達中なのにコンビニでサボってちゃ。
飛鳥:違う、これは休憩だから。

啓太郎:勝手に休憩取らないで。給料下げるよ?
飛鳥:な、ケチな!そっちが全然休憩作ってくれないから、こうするしかないんじゃん!!
啓太郎:しょうがないじゃん。うちだって人手が足りないんだしさ…
さくら:もう分かったから、はい。喧嘩はなし。
飛鳥:違うさく、これは労働環境の問題よ。
さくら:んまぁ…確かに啓太郎の経営の仕方は。
啓太郎:え、えんちゃんまで…???
さくら:でもあれは、啓太郎が悪かったじゃん。8時間の拘束で休憩30分って…
啓太郎:そうだけど、今はちゃんと1時間以上取らせて…
ガチャッ
裏口のドアを開けた瞬間、飛鳥が床に倒れているのが2人の目に入る。
さくら:飛鳥さん⁉️
飛鳥:うぐ…
啓太郎:凄い熱だ…とにかくベッドに!
さくら:うん。
ー櫻丘研究所ー
友香:瑞穂と連絡が取れない⁉️
隊員:はい、土生さんがお友だちと会いに行くと言ってからずっとです。
友香:(さくらちゃんが…危ない。)
友香はすぐさま、飛鳥の番号にかける。
ー菊池クリーニング店ー
(飛鳥のスマホの着信音)
さくら:誰からだろう?
飛鳥のスマホに出ると、
「菅井友香」
の文字が表示されていた。
さくら:え?
すぐにさくらは電話に出た。
友香:もしもし、齋藤さん?
さくら:友香姉…?
友香:さくらちゃん?さくらちゃんなの⁉️
さくら:うん…
友香:良かった、無事で…瑞穂のことなんだけど、さっき会ってたよね?
さくら:みず姉が…オルフェノクに攫われたの。
友香:瑞穂が…
さくら:それに、今飛鳥さんも凄い熱で倒れていて…
友香:それは、まずいね…
久しぶりの再会が慌ただしくなってしまったさくらと友香。
友香:齋藤さんの容態を確認したいから、今からそっちに迎えに行くよ。
さくら:友香姉、もしかしてお医者さんなの?
友香:んまぁ、どちらかというと研究員かな?でも医療設備くらいはこっちで用意できるから。
さくら:分かった、ありがとう。
ーBAR CLOVERー
カランッ
村上:お久しぶりです、北崎さん。
北崎:久しぶりだね、そう畏まらないでよ。

飛鳥からファイズのベルトを奪った青年こそ、
ラッキークローバーの最後のメンバー・北崎だった。
村上:失礼、つい。
美波:元気そうで何よりだわ、北崎くん。
蓮加:やっぱり強いね〜、北崎くんは。
北崎が持つファイズのベルトを見て蓮加が言った。

村上:お見事です、ファイズのベルトを手に入れてくださって。
北崎:へ〜、これそう呼ぶんだ〜面白そうなオモチャだとは思ったけど。
美波:奢るわ、北崎くん。

北崎:ありがとう、美波さん。
北崎が飲み終わると、グラスが灰化して砂の山になる。
村上:さて、これで残るベルトはあと一つです。

美波:デルタのベルト、か。
村上:ええ、このデルタのベルトの奪還は、そうですね…蓮加さん、あなたにお任せしたい。
蓮加:っしゃ、次こそちゃんと手に入れよっと。
北崎:へ〜、良いな〜僕もそのゲームに加えてよ〜
北崎がダーツの矢を投げると、灰になって消えてしまう。
蓮加:あー、普通のじゃダメって言ったじゃん。ほら。

蓮加が手に青い炎を作り出すと、炎からダーツの矢が生み出された。
北崎:あ〜忘れてた、ありがとう蓮加ちゃん。
蓮加:ねぇ、デルタのベルトを手に入れるのは私だけど、その後ベルト使って良いからさ、今回は我慢してくれない?
北崎:う〜ん、わかった。その代わり約束しよっか。
蓮加:へ?
北崎:ほら、指切りげんまんだよ?笑
蓮加:うぐ…わ、わかった。
サァ…
蓮加:あわわ…
北崎と指切りげんまんをした蓮加の手が灰化し始めた。
美波:ふふ、北崎くんとの約束は命懸けね?笑
蓮加:ちょっと笑ってないで、美波姉さん…早く!
慌てる蓮加の手を美波が触れると、蓮加の手の灰化が止まった。
村上:北崎さん、あなたには別のゲームを提供しますよ。
北崎:へ〜、どんなのかな?
村上:裏切り者を狩る、ゲームですよ。
ー櫻丘研究所ー
友香:今、齋藤さんをMRIで検査しているわ。

さくら:大丈夫かな、飛鳥さん…
友香:きっと大丈夫だよ。
さくら:みず姉も…
友香:…
啓太郎:今は無事だって信じるしかないよ。
さくら:そ、そうだよね。みず姉だって強いもん。飛鳥さんも。
啓太郎:うん。けどこんな凄い研究所に勤めているんですね、友香さんは。
友香:まぁね。ここは普段は微生物研究所として活動しているけど、その裏でオルフェノクのことを研究したり人間を襲おうとするオルフェノクから人間を守ったりしてるの。
さくら:でもどうしよう…カイザのベルトはみず姉と一緒にオルフェノクたちに。ファイズのベルトも、飛鳥さん持ってなかったから多分…
友香:まだいるわ。
さくら:え?
啓太郎:どういうことですか?
友香:オルフェノクと戦えるのはファイズやカイザだけじゃない。もう1人…
麻衣:こら、そこの赤い車止まれー‼️
?:ちぇー、なんだって俺が。
パトカーに乗っていた麻衣が、前を走るワゴンに停止を促した。
麻衣:はい、良いから免許証見して。

?:はいはい。
ワゴンを運転していた男は、財布を取り出すと
不気味に笑い出した。
麻衣:まさか、免許証持ってな…⁉️
男の顔に模様が浮かぶと灰色の光に包まれ、フロッグオルフェノクに変身した。

麻衣:お前!
すかさず麻衣は拳銃を取り出し、発砲した。
オ:うっ…なんてね?笑
怯んだフリをしてフロッグオルフェノクは麻衣に襲いかかった。
麻衣:うわぁ⁉️
オルフェノクからキックを腹に受けた麻衣は、
歩道の柵に身体をぶつけた。
麻衣:ぐっ…
オ:命もらうね。
倒れた麻衣のもとにオルフェノクがゆっくりと近づく。
(バイクの音)
そのフロッグオルフェノクの背後から一台のバイクが追突してきた。
オ:ぐわ⁉️
麻衣:⁉️
?:…

そのバイクから、白いラインが特徴的なライダーが降りてオルフェノクの方にダッシュしていく。
オ:ぐお‼️
白いライダーはオルフェノクにパンチとキックを交互に浴びせ、オルフェノクは地面に叩きつけられた。
オ:き、さま…
?:Check!
「Exceed Charge」
白いライダーがメモリを装填した銃から紫のマーカーを発射し、オルフェノクを捕捉した。
オ:ぐぉ⁉️
?:はっ!
白いライダーがジャンプして両脚にエネルギーを充電させてキックを繰り出す。
?:はぁあああ‼️

白いライダーの姿が消え、次の瞬間オルフェノクの正面にライダーの姿が出現すると、オルフェノクにデルタのマークが出現した。
オ:ぬぅああああ⁉️
オルフェノクの身体から赤い炎があがり爆発して灰化し消滅した。
?:…
麻衣:(もしかして、これが噂のオルフェノクと戦う、ライダー?)
(バイクのエンジン音)
麻衣:待っ…

麻衣が静止する前に、白いライダーはバイクに乗って姿を消した。
さくら:飛鳥さん…
ベッドの上で眠る飛鳥の手をさくらは握っていた。
(回想)
さくら:ちょっ、どこ行くんですか!?
飛鳥:1人旅の続き!悪いけど、もうあんな怪物に遭うのはご免よ。
オ:ふざけやがって❗️○んでもらう❗️

さくら:⁉️
オ:ぐはぁ⁉️
飛鳥:ごめ〜ん、これ返しに来たぁ〜!
さくら:齋藤さん!
飛鳥:その前に、アイツやっつければ良い?

飛鳥:はぁああああああ❗️

オ:うわぁあああああ⁉️
飛鳥:飛鳥で良いから。それに、色々考えた
けど…
さくら:?
飛鳥:東京まで、一緒に行くよ。
さくら:!あ、ありがとうございます!飛鳥さん。

(ここまで回想)
飛鳥:ん…?
目を覚ました飛鳥が、目をこすりながら起き上がった。
さくら:飛鳥さん❗️
啓太郎:具合どう?
飛鳥:ん、まぁ…今は平気かな。って…
飛鳥が下に目線をやると、さくらと自分の手が繋がれているのが見えて眉間にシワを寄せた。
飛鳥:なんで繋いでんの?
さくら:なんでって、心配だったんですよ⁉️家に帰ったら、飛鳥さん床に倒れてて!
飛鳥が手を離そうとするのを、さくらが無理矢理止める。
飛鳥:や、離して!もう大丈夫なんだから。

さくら:なんで?良いじゃないですか!
飛鳥:あっ!
啓太郎:どうかした?
飛鳥:ごめん、ファイズのベルト…取られちゃった…
さくら:やっぱり、そうだったんですね。
飛鳥:あのオルフェノク…
飛鳥の脳裏に、青年の姿が浮かぶ。
友香:良かった、気がついたみたいね。
さくら:友香姉。
飛鳥:知り合いなの?
さくら:はい、友香姉も同じ流星塾出身で。
飛鳥:そっか。
友香:齋藤さん、瑞穂がラッキークローバーの1人に攫われた。
飛鳥:!?
飛鳥:土生さんが…
さくら:前に飛鳥さんと私とあやめちゃんでいた時の、あの女の人に…
飛鳥:アイツ…じゃあ、土生さんが持っていたカイザのベルトは…
友香:うん、彼女に取られた。ラッキークローバーのメンバー、梅〇美波に…
さくら:でもね友香姉、あの時私を庇ってきたオルフェノクがいたの。

友香:さくらちゃんを?
啓太郎:僕も見たけど、あのオルフェノクはなんか変わっていたよね。僕らを助けようとしていたような。
飛鳥:(もしかして…)
飛鳥は、さくらを助けたオルフェノクが、美月かあやめだと思った。
麻衣のもとを離れた白いライダーがバイクを停車させ、変身を解除した。


(スマホの着信音)
友香:もしもし、紗耶?
紗耶:友香姉。
友香:ファイズとカイザのベルトがオルフェノクたちに奪われた。気をつけて。
紗耶:…分かった。ベルト取り返してくるよ。
友香:いや、それは危険よ。デルタの力まで奪われたら、私たちはおしまいよ…
紗耶:でも、このままじゃ…
友香:私たちでなんとかする。紗耶はベルトを守って。
17話 完