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そろそろ、付き合お?



「付き合お」


こんな言葉、もし好きな人に言われたら…

そんなことを想像しただけで、きっと平常心ではいられない筈だ。

直接言われたなら、その瞬間から世界が輝いて見えたり。


とにかく、本当なら凄く嬉しいことの筈なのに…





〜早朝〜


〇〇:ふぁ〜、眠い💤

(LINEの通知音)

〇〇:ん、誰だ?

「朝5時だよ?起きてー!」

〇〇:阿保か!こんな馬鹿みたいに早い時間にLINEして起こしに来るとか。

とはいえ、既読無視は可哀想かと思って返信した。

〇L:おはよう、また後でな。


〇〇:ふぁ〜、寝よ。

布団に戻り目を閉じた。

(LINEの通知音)

〇〇:!(おい、またか。)

いやいや、寝るって決めたんだ。

いちいち気にしなくても良い筈…  


(通知音)

〇〇:⁉️

(通知音)×n回

〇〇:んっ…

〇〇:だぁああ❗️

耐え切れず叫んでしまった。

〇母:〇〇ー、何叫んでんのよ?

〇母:大丈夫なの?

〇〇:ごめん、大丈夫!

いや、大丈夫ではない。


スマホを起動して画面を見ると、


「〇〇ー!」
「おーい、〇〇」
「もう、また二度寝してるでしょ?」
「すみれが〇〇の為にモーニングコールしてるのに」
「こうなったら…」
「〇〇、すみれと付き合お。」


〇〇:ガクッ


拍子抜けして、ベッドから落ちて頭を床にぶつけた。

〇〇:うわっ⁉️

ドンッ

〇〇:う、うぅ…

ガチャッ

〇母:ちょっと、すっごい大きな音聞こえたわよ⁉️

〇〇:か、軽い脳震盪です…母さま。

〇母:何馬鹿なこと言ってるの、脳震盪ならそんな喋れないから。

〇〇:ちょっと転んで頭ぶつけました…

〇母:気をつけなさいよ、あ、朝ごはんできてるから早く降りてきなね。

〇〇:はーい。


顔を洗って制服に着替え、階段を降りて食卓に向かい、母の特製目玉焼きトーストを食べて家を出た。




〇〇:ふぁ〜…

いつにも増して欠伸が多かった。

和也:うっす、〇〇!

〇〇:よー、デビルの因子を持つ三島家の主人〜

和也:いや、誰が三島一○だよ⁉️

和也:ここが貴様の墓場だ❗️ってか。

〇〇:おー、相変わらずノリ良い。

和也:んな事より、俺急がなきゃ。

〇〇:なんで?

和也:藤嶌さんだよ!

和也:今日からビオトーブの当番一緒だからな。

〇〇:あ、なるほど。

和也:ああ、でも緊張するな…

和也:変なことしないようにしなきゃな…

〇〇:大丈夫だろ?藤嶌さん優しいんだし。

和也:だからこそ、幻滅させたりしないかとか色々考えちゃうんだよ。

和也:は〜、お前が羨ましいよ〇〇。

〇〇:なんで?

和也:だって宮地さんと仲良いんだもん。

和也:あんな可愛くて元気な子と仲良いとか最高だろ。

〇〇:いや、それはな…

和也:じゃ、また後でな〜

和也の後ろ姿を見送った。


〇〇:(お前と鉄〇ネタでふざけている方が、俺は良いんだよ…だって…)

ダッ ダッ ダッ

〇〇:⁉️

足音が背後から聞こえた瞬間、嫌な予感がした。


すみれ:〇〇ー、ゲットだぜー!




〇〇:い、や、やめろッてすみれ!

すみれ:もーう、照れ屋さんなんだから〜〇〇はー♪

〇〇:違うって、ぐほぉ⁉️

〇〇:(コイツの腕力どうなってんの?)

華奢な見た目からは想像が付かない程の力で、
すみれが抱きついてきた。


すみれ:はぁー、もう一生離さないからね〜

〇〇:離せばか!本当に死ぬって。

すみれ:え?何?死ぬほど好きって?

〇〇:言ってなぁーーい!

すみれ:しょーがないな〜、じゃあ…

すみれ:付き合お?

〇〇:早い、展開が❗️❗️

すみれ:はっ…はっ…

〇〇:ん?

突然、すみれが鼻を押さえ始めた。


すみれ:はっ…はっ…

〇〇:(い、今だ!)

くしゃみを抑えようとしてすみれが腕を離した。

〇〇:さいなら〜

すみれ:きゅんっ!

すみれ:あ〜、いけないいけない。おっきいくしゃみが出るとこ…

すみれ:ま、〇〇ー‼️



彼方の方で名前を叫ばれた気がしたが、とりあえず教室に避難した。




〇〇:はぁ、なんだってああなっちまったんだ、すみれの奴…

すみれからあのような告白ラッシュが来るようになったのは、先週からだった。



すみれ:〇〇〜

〇〇:おう、すみれ〜

すみれ:一緒に帰ろ〜

〇〇:うん。

その日は、いつものようにすみれと合流して下校していた。



すみれ:もう秋になったね〜

〇〇:だな、気温も下がってきたし。

すみれ:だからさ…

〇〇:ん?

すみれ:すみれと付き合お?

〇〇:え?

突然の告白だった。

何も心の用意も出来ずそんなこと言われたら、
慌てふためいてしまった。



〇〇:いや、す、すみれ?

〇〇:急過ぎないか?そりゃ、俺たちすっごく仲良いけどさ…

すみれ:うん、だから付き合お?

〇〇:いやけどな、こう…そこに行くまでに色々あるじゃん…ほら、たとえば…

すみれ:もう、一生〇〇から離れないからね。

ぎゅっ

〇〇:わっ⁉️

すみれ:ふふ♪


普通こんなに腕に抱きつかれたら、ドキッとする筈だろう…

けど何故か、怖い気持ちが勝っていた。


〇〇:すみれ?

すみれ:ん〜、好きだよ〇〇!

すみれ:だーい好き❤️

〇〇:(なんか、変だ…)




それから1週間、すみれからの異常なまでの愛のアピールを受け続けていた。


〇〇:どうしたら良いんだよ…

〇〇:すみれ、あんなんじゃなかったのに…

〇〇:急に好きだとか、付き合おとかばっか言うようになっちゃって…


?:その話、本当かな?

〇〇:❗️

心の中で呟いていたつもりが、うっかり声に漏れていたらしい…



〇〇:ふ、藤嶌さん?

目の前にいたのは、他でもない和也が好意を抱いていた藤嶌さんだった。

果穂:それ、私のせいかもしれない。

〇〇:ど、どういうこと?

果穂:先週、実験室に置いていた飴が一個無くなっていたの。

〇〇:あ、飴?

果穂:そう、私が実験で作ったの。

果穂:本当はその飴を人に舐めさせると、飴を作った人を好きになるようになる筈だったんだけど…

果穂:多分失敗したんだ、私の作った飴…

〇〇:じ、じゃあ…すみれはその飴を舐めたせいで…

果穂:うん、〇〇君に凄く執着するようになっちゃったんだと思う。

果穂:でも安心して!さっき、解毒薬作ったから。

そう言うと、藤嶌さんは懐から取り出した包みを開けて見せてきた。


〇〇:これが?

果穂:うん、これを舐めれば元に戻る筈。

〇〇:分かった、ありがとう。

果穂:ううん、私のせいでこんな目に遭わせて…

「〇〇ー‼️」



遠くからすみれの声が聞こえ、猛スピードで突っ込んできた。



すみれ:やっと見つけた〜あたしのダーリン😍

〇〇:ぐほぁ⁉️

例の如く、ゴリラみたいな腕力で抱き締めてきた。

果穂:解毒薬を早く!

〇〇:う、うん!

すみれ:しゅき、〇〇♪

〇〇:わ、わかった。わかったから、すみれ。

すみれ:何?

〇〇:これ食べてみて。

すみれ:ふふ、嬉しいな〜〇〇からのプレゼントだね?

〇〇:ああ、そうだよ。(良かったら、思ったより素直に…)

パクっ

すみれ:んふふ、これおいひ…

すみれ:…

バタンッ


〇〇:す、すみれ⁉️

さっきまで暴れていたのが嘘みたいに、膝から崩れ落ちてすみれは目を瞑っていた。

すみれ:ス〜…ス〜…

果穂:寝ちゃったみたいだね…

〇〇:だ、大丈夫なのかな…

果穂:大丈夫、きっと今まで薬で必要以上に体力使ってたからその分が来ただけだと思う。

〇〇:そっか。

果穂:起きたら、元通りになっている筈だよ。


眠っていたすみれをベンチに横たわらせた。




〇〇:助かったよ、ありがとう藤嶌さん。

果穂:本当、ごめんね…


謝った藤嶌さんがそのまま去ろうとしていた。


〇〇:待って!

果穂:?

〇〇:どうして、あの飴作ったの?

果穂:…

果穂:いるんだ、私。好きな人が…

〇〇:え?

果穂:今日ビオトープの当番で初めて一緒になった、和也くん…

〇〇:!

果穂:ふふ、でも薬になんか頼ったらダメだよね。

果穂:でも不安なの、もし告白して振られたらって思ったら…

〇〇:やってみなよ!

果穂:え?

〇〇:だってやらないと分かんないじゃん。相手の気持ちなんてさ。

果穂:ふふ、そうだよね。

果穂:ありがと、〇〇くん!

沈んでいた顔から笑顔になって、藤嶌さんは帰っていった。


〇〇:(上手くいくに決まってんじゃん、アイツだって藤嶌さんのこと…)

そう思いながら空を見上げた。



すみれ:ん…

すみれ:〇…〇?

すみれが目を擦って起き上がった。



〇〇:すみれ、大丈夫か?

すみれ:う、うん…

すみれ:けどなんだろう…なんかずっと眠っていたような…

すみれ:けどすっごく疲れた。

〇〇:良かった、無事で…

すみれ:へ?

〇〇:いや、なんでもないよ。

〇〇:帰ろっか。

すみれ:う、うん!

いつものすみれが帰ってきて、漸く安心していた。




すみれ:なんか、〇〇とこうやって帰るのも久しぶりな気がしちゃう。

〇〇:ふふ、そっか。

すみれ:時々さ、不安になっちゃうんだよね。

〇〇:え?

すみれ:急に〇〇に会えなくなるんじゃないかって思ったりして…

〇〇:すみれ…

すみれ:ってすみれ、馬鹿みたいだよね笑

すみれ:そんなこと考えても仕方ないのに…


そう言いながら、どこか切なそうな目をしていた。


〇〇:…

すみれ:ごめんね、急に暗くなる話して。

〇〇:いや、全然。

すみれ:あはは、夏休み終わっちゃったからかな?不安になってるの。

〇〇:なぁ?すみれ?

すみれ:ん?

〇〇:俺たち…




そろそろ、付き合お?



すみれ:❗️

驚いた目をされた。

そりゃ、そうだよな。

んな急に言われてもって。

自分でもなんでこんなこと言って…



すみれ:それって、好きってことだよね?

〇〇:え?

すみれ:う、嬉しいよ…すみれ。

泣いていた。

〇〇:あ、ごめん!

慌ててハンカチを貸した。


すみれ:ふふ、良いよ全然。

すみれ:だって、すみれも…〇〇が好きだから。

貸したハンカチで涙を拭きながら、すみれは微笑んできた。


すみれ:宜しくね、〇〇!

〇〇:う、うん!

気持ちの整理が付くまで時間がかかったけど、

やっと素直に喜べた。


〇〇:なぁ、すみれ?

すみれ:何?

〇〇:か、可愛いな…

すみれ:ふふ、どうしたの?らしくないな笑

ぽんっ


肩を軽く叩かれた。


〇〇:ごめん、つい…

すみれ:なんで謝るのよ〜

すみれ:すみれ、嬉しいのに。

〇〇:うん、俺もすみれが好きだから…

〇〇:!

すみれ:も〜う、照れるってば♪


飴なんか舐めてない筈なのに…

こんなに気持ちが溢れるのはどうして?


すみれ:すみれも〇〇が好きだからね。


きっとそれが答えなんだろう。



fin.

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