普段は強面で凶暴な彼女は、僕の前では嘘みたいに優しい。2話
〜放課後 校内のグラウンド〜
授業を終えた生徒たちが、それぞれの部活をしていた。
?:はぁ〜きっついわ…
?:あと何周だよ…
?:なぁ、少し休憩しないか?
?:あ、そうだな。今のうちに…
ウォーミングアップでグラウンドを走らされていた二人の男子が、コースから抜けて腰を休めていた。
ヒュンッ!
その二人の前を、高速で影が通過する。
?:え??
?:は、速すぎない!?
?:てか、あれ女の子じゃ…??
瑛紗:オラァあああ!!!!
雄叫びを上げながら瑛紗が走っていた。
〇〇:はぁ…はぁ…速すぎるって、瑛紗…
その瑛紗の後を追うように、〇〇が息切れを起こしながら走っていた。
瑛紗:ああ、ムカつくーー!!あのアマがあああ!!!!
数時間前…
〇〇が瑛紗と下校していると、見知らぬ女子たちが目の前に立ち塞がった。
〇〇:?(誰だ、この人たち…)
?:瑛紗、決着をつけようじゃないの?
その女子たちの首領らしき人物が瑛紗の前に出てきて、瑛紗を睨みつける。
瑛紗:あ?なんのことよ?美空。
美空:50m走のタイム。前回、二人とも同じタイムで勝負が決まってないわ。
〇〇:はぁ??
拍子抜けした〇〇の隣で、瑛紗も興味なさそうにガンを飛ばしていた。
瑛紗:くだらねーな。今更、んなの競う気はねーよ。
美空:そうはいかないわ、貴女みたいな下品な人と同タイムなんて気に食わないの。勝負してもらうわ。
〇〇:(うわ、なんか嫌な性格してるな…)
瑛紗:あ?誰が下品だコラ??
美空:ほら、その言動よ。言葉使いもそうだけど、格好もだらしない。なのに、中学の私たちの担任の先生は、何故か貴女のことを高くかっていたの。ま、今となってはあんな人を見る目がない先生なんてどうでも良いけど…
〇〇:(うわ、プライド高すぎるって…)
美空の性格に〇〇がドン引きしていると、
瑛紗:取り消せ、今の言葉。
美空:はぁ?
瑛紗:先生を馬鹿にした今の発言、取り消せよ。
声を低くして瑛紗が美空を睨みつけた。いつもより静かだが、それがより瑛紗が本気で怒っていることを表していた。
美空:なら勝負しなさいよ?
そして、土手の道で瑛紗と美空の50m走が始められた。
美空の友人が合図を出すと同時に、2人はダッシュで駆け抜けた。
〇〇:(頑張れ、瑛紗!)
瑛紗:うわ⁉️
突然、瑛紗が急ブレーキをかけて止まった。
〇〇:(え⁉️なんで??)
瑛紗が止まってしまった隙に、美空が追い抜きゴールに先に辿り着いた。
美空:ふふ、これで私の勝ちね。
瑛紗:が…ぐっ…
〇〇:瑛紗、なんで走るのやめ…!
瑛紗のもとに〇〇が駆け寄ると、瑛紗の足元をカマキリが通過していた。
〇〇:まさか、このカマキリを踏まないように…
美空:は、たかだか虫ごときに気を取られるなんて。勝負に情けは不要よ。
〇〇:そんな言い方ないんじゃないかな⁉️
美空:何よ、弱そうなアンタは引っ込んでなさいよ。
〇〇:うぐ…
瑛紗:もう一回…
〇〇:え?
瑛紗:もう一回だけ、私と勝負しろ。
美空:ふ、良いわ。カマキリのおかげで勝てましただなんて、私の名が廃るし。次会った時にしましょ?
美空たちがいなくなったあと、
瑛紗:〇〇。
〇〇:何、瑛紗?
瑛紗:特訓するぞ。
〇〇を引っ張って瑛紗は学校に戻り、グラウンドを走り出した。
そして、今に至る。
瑛紗:ぜってええ、アイツには勝つからな‼️
〇〇:はぁ…はぁ…悔しいのは分かるけど、もう…無理…
バタンッ
瑛紗:〇〇‼️
息切れを起こして倒れた〇〇のもとに、瑛紗が駆け込んだ。
瑛紗:〇〇ー、死ぬなぁああ!
仰向けになって倒れた〇〇に心臓マッサージを瑛紗が施す。
〇〇:げほっ、いや死んでないから…
瑛紗:ほっ、良かった〜
〇〇:あ、でも喉がカラカラ…
瑛紗:わかった、すぐ水持ってくるね!
〇〇:ありがと…
瑛紗:それまで死なないでね!
〇〇:うん、死にはしないよ…笑
瑛紗が買ってきた水で、水分補給して〇〇は生き返った。
〇〇:ふ〜、助かった。
瑛紗:ごめんね、無理に付き合わせて。
〇〇:ううん。悔しいよね、あの美空って人にあんな酷く言われた上に、負けたら…
瑛紗:あ、うん…先生のこと馬鹿にされたら、なんかムカツいちゃって…
〇〇:中学の時の先生、だっけ?
瑛紗:うん、いつも私のことをちゃんと見てくれてたんだ。私がこんな見た目だから、何かとあれば直ぐ皆んなが私のせいにしたり、私のことを馬鹿にしてきたけど、先生はいつも味方してくれた。高校受験の時も、先生がずっと応援してくれて。
〇〇:恩人だね、瑛紗の先生は。
瑛紗:うん、だから次は絶対に50m走で美空に勝つから。
〇〇:僕も付き合うよ。
瑛紗:〇〇…
〇〇:なんかあの人、気に食わないし。それに、大事な友だちの恩人を馬鹿にされたままなんて、僕も悔しいから。
そう〇〇が言うと、瑛紗が〇〇の肩に手を乗せたきた。
〇〇:?
瑛紗:ふふ。
そのまま、瑛紗は人差し指で〇〇の頬に突っついた。
〇〇:え?
瑛紗:〇〇が友だちで良かった。
〇〇:うん。
そして、美空との50m走のリベンジが始まった。
美空:ま、どうせ今日も私が勝つけど。
瑛紗:は、言っとけ。
?:よーい、スタート!
合図とともに、2人はダッシュし出した。
?:え⁉️
?:ば、化け物かい…
出だしは2人とも同じくらいのスピードだったが、すぐさま瑛紗はスピードを上げて美空を引き離した。
美空:⁉️
50m走の結果は、瑛紗が6秒20、美空が7秒90だった。
〇〇:やったあああ‼️瑛紗の勝ちだああ‼️
美空:チッ…
瑛紗:へへ、どんなもんだ!
美空:良いわ、アンタの勝ちよ。それと先生への発言、取り消すわ。
不満ダダ漏れな顔の美空は、仲間を率いて居なくなった。
瑛紗:いー、よっしゃあああ‼️
〇〇:いやー、スカっとしたね。
瑛紗:うん、あーもう最高!なんか美味しいの食べたくなってきちゃった。
そういうことで、〇〇と瑛紗はコンビニでアイスバーを買ってきて、勝利の味を楽しんだ。
瑛紗:くー、沁みるー!
〇〇:なんかさ、瑛紗のことを中学の先生がちゃんと見てくれてた理由、わかった気がする。
瑛紗:へ?そうなの?
〇〇:うん、瑛紗って意外と真面目なんだなって。
瑛紗:意外って、失礼な!
コツンっと瑛紗が〇〇の顔を拳で軽く突く。
〇〇:それに、虫でもちゃんと前にいたら止まれるところとか。
瑛紗:だって、踏んづけたら可哀想じゃん。人間の勝手で。
〇〇:まぁ、僕が思ったことだけじゃないと思うけど、瑛紗の先生はさ瑛紗の色んな良い所を見ててくれたんだろね。
瑛紗:んふふ、ありがとう。そう言ってくれて。
〇〇:ん?
瑛紗:アイス、分けてあげる!
〇〇:いやぁ…良い…
瑛紗:水臭いなー、友だちでしょ?笑
〇〇:⁉️
瑛紗が差し出したアイスを半ば強引に頬張るようにさせられた〇〇は思った。
〇〇:(これって…あれじゃ…)
〇〇:(あ、いやいや!そんなこと考えちゃダメだ‼️)
瑛紗:♪♪
隣で瑛紗がニコニコしながらアイスを食べる中、〇〇はのぼせたみたいに顔が熱くなっていた…
2話 完
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?