ものづくりの未来を先取り!展示会「設計・製造ソリューション展2018」
僕が10年ほど前から定点観測している展示会として、毎年6月に東京ビッグサイトで開かれる「設計・製造ソリューション展」(通称DMS)があります。
その名の通り、製造業向けの設計や製造の課題を解決する様々なハードウェアやソフトウェア、ITソリューションに関する最新情報があつまる日本最大の専門展です。
今年はあまり時間がなかったのですが、最終日の6/22金曜に3時間程度視察してきました。
この日は最終日の昼前に到着しましたが、受付はいまだ行列状態。今回の短い視察の中で目にとまったものをさらっとご紹介します。
まずホール3入り口から入ると、目の前には小・中ロット生産向け樹脂型「デジタルモールド」で有名な有限会社スワニーさんのブース。
代表取締役の橋爪さんみずからがデジタルモールドの特徴がわかりやすく伝わるプレゼンテーションをされていました。写真の通りすごい人だかり。
そしてスワニーさんの展示で今回目に付いたのは、新素材として寒天を利用した医療向け素材のサンプルを展示していたこと。
このサンプルは外科手術のオペ練習などにも使えるらしく、これからの3Dプリンターの医療向け需要の高まりをますます加速させそう。
同じブース内には中辻金型工業さん製作の樹脂型によるプレス成形機「デジタルモールドレス」によるサンプルも展示されていました。
写真でも樹脂によるプレスとは思えないきれいなラインがでていることがわかります。スワニーさんが展示するこれらの技術を導入すれば、小・中ロットのプレスや射出成形が従来よりも圧倒的低コストで実現します。これは本当に革新的。
次はデスクトップサイズの光造形方式3DプリンターではもはやスタンダードとなりつつあるFormlabs Japanさんのブース。今回は新しいセラミック用のレジン(出力用の樹脂素材のこと)によるサンプルを展示していました。
もちろん後工程で電気炉での焼成は必要ですが、かなり繊細で複雑な形のセラミック出力がデスクトップの3Dプリンターでできてしまうのは驚き。小型3Dプリンターもここまできたかと感慨深いものがありました。
そして実はもう一つ驚きの新レジンを使った鋳造サンプルが。
それは「キャスタブルレジン」と言われる紫色の鋳造向け新レジンによる繊細なシルバー製のリングサンプル。表現できている線はおそらく0.5mm前後でしょうか。
キャスタブルレジン自体は新しいものではないのですが、今回の素材は光硬化の工程がいらない為、紫外線照射による膨張の寸法誤差がすくないとのこと。このレジンはおそらくジュエリー業界でかなり重宝されるはずです。残念ながらレジンの写真はありませんが、おそらくこの夏にはFormlabs Japanさんからリリースがありそうです。
次に目にとまったのは会場の奥にモノトーンのシックなブースを構えていたCarbon3Dのブース。
Carbon社の商用3Dプリンター「M1」は2015年春くらいからその革新性がネット上でも取り上げられ、投資家から一億四千万ドル以上の資金調達を行ったことでも話題となりました。
このM1という3Dプリンターは「Clip製法」と呼ばれる新方式により、これまでの3Dプリンターのように造形プラットフォームの移動から硬化のための静止、という動作を必要としない点がポイント。
その革新的なスピードの造形の動画はこちら。
Carbon 3D Super Fast 3D Printer Demo!
従来の3Dプリンターに比べて25倍以上の短時間で積層痕のない造形ができる3Dプリンターです。素材としても従来のPLAなどに加えて用途に応じた数種類の素材が選択可能。高靱性や耐摩耗性、高弾性、耐熱性など、それぞれ製品用途に応じた特徴を持つ素材が色々と揃っています。
そういえば少し前にアディダス社がスニーカーのソール部分の製造にこのM1を採用したことで、3Dプリンタの最終製品製造事例として話題になりました。
ちなみにこの3Dプリンタの導入には製品販売ではなく、サブスクリプション契約が必要になるそうです。
またこのブースにはCarbon3D M1で出力したさんぷるに塚田理研工業株式会社さんが金属メッキを施したサンプルも展示されていました。
こうなるとパっと見は金属パーツに見えるより軽い樹脂製モックアップや、金属風の最終製品パーツなどへの応用が期待できます。
またRoland DGさんのブースには金属彫刻ができる「Metaza」シリーズの発展型として、LD-80という新製品が。
これは「半導体レーザー箔転写機」とよばれるもので、ようするに革やアクリルに金属箔を印刷できる機器。
これは今までありそうでなかった製品。
またUVプリンターや熱転写プリンターなどで有名な株式会社ミマキエンジニアリングさんのブースには、UVプリンターの発展型ともいえるフルカラーの3Dプリンタが展示されていました。
従来の石膏素材のフルカラープリンターにくらべて発色がとても鮮やかなのが特徴。
いっぽうダヴィンチやノーベルなどのコンシューマー向け3Dプリンターで有名なxyzプリンティングさんのブースには、新型の3Dプリンターがずらり。
特に目立っていたのは毎分1cmという造形スピードを実現した「MfgPro220 xPF」という日本初上陸の機種。
この3DプリンターもCarbon3Dの方式に近い方式を採用して高速な造形を実現しているそうです。
また京都の国産3Dプリンタメーカーのエスラボさんのブースには、株式会社EXTRABOLDと共同開発したペレット溶解積層方式の大型3Dプリンターが展示されていてびっくり。
このデモは会場内にかなり大きなインパクトを放っていて、なんと造形サイズは幅800x奥行1400x高さ1100という巨大さ。この造形範囲の大きさがあれば、建築部材や自動車のパーツ、家具などの分野にも可能性がありそう。展示品の素材はスチレン系のエストラマーの樹脂ペレットを使ってるそうです。
この3Dプリンターは20フィートコンテナを使って持ち運べるのが特徴。たとえば被災地などにこのプリンターを運んで仮設住宅の部材を製造したりする用途も考えられるとか。素材もフィラメントではなく樹脂ペレットを採用したことで汎用性が高く、廃棄物の再利用や複合材にも対応できるそうです。これは3Dプリンターの実用性を高める革新的なモデルとなる予感がしました。
またステンレスなどの金属素材を出力可能な3Dプリンターも年々精度が上がっています。毎年いろんな機器のサンプルを見くらべているのですが、DIGITAL METAL社の「DM P2500」のサンプルはかなり繊細な造形を実現していました。
以上、短時間の視察のせいかかなりかたよった紹介になってしまいましたが、たった3時間でもこれからの製造業の可能性を感じる新しい技術やハードが盛りだくさんでした。おそらくこのほかにもたくさんの新しい可能性を持つ技術や製品が展示されていたはず。
今後もこの「設計・製造ソリューション展」の定点観測を続けていこうとあらためて思った視察でした。