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今日という日の絶望と希望について
2024.9.2
今日という日の絶望と希望について
これはとある精神疾患者の鬱の中に現れた
どうしようもないほど
憎い、愛しい
絶望と希望についての記録である。
朝目が覚めると、真っ暗だった。
萌にとってこの光景は、一人暮らしの朝の当たり前の光景である。
早起きだからとかではなく、雨戸を開けていないからだ。
いつも通り、雨戸を開けようとした時だった。
(ずしん)
萌にいつもとは異なる、でも何度も聞いてきた身に覚えのある音が全身に響き、
その瞬間重力に身は悶え、心は一瞬にして絶望のトンネルに吸い込まれていった。
「ああ、まただ。」
ずしん、ずしんと絶望は萌を土足で踏み荒らし、積み上げてきた希望を更地にした。
もう何度もその繰り返しだ。
そこに吸い込まれてしまうようになるまでは、
そこそこ地位も名誉もあった。金はない。常に。
それと伴った苦しいこと、辛いこと面倒なことはそれなりにあったが、心と身体は健やかだった。今はそう思う。
志望した大学に合格し、都市部に身を置きバイトと勉学に励み、成績は学部上位に何とか喰らいついた。
ずっと続けていた吹奏楽も、社会人サークルで続けられた。
そんな生活が続くと思って疑わなかった。
(ずしん)
そしてそれも、その一踏みで更地になったし、
うつ病と診断されて大学やバイトをしばらく休むことになった直後にたくさん友人知人から届いたLINEは、ほとぼりが冷めてからは全くなくなった。
更地の自分の心も、動かない身体も軽薄な人間関係も大嫌いになった。
もうどうでもよくなった。
♪♪♪
着信音が鳴る。
どうやら嫌な夢でも見ていたようだと萌は少し疲弊して、いや元々体なんぞ動かないのだけれど横たわりながら枕元のスマホを覗き込んだ。
「ゆうだ。」
恋人の侑からだ。
不在着信
不在着信
泥のように眠っていたので気がつかなかった。
侑とは萌の通うメンタルクリニックで出会い、お互い距離を縮め、最近恋人になった。
侑は萌の元から去った多くの人とは違い、変な気遣いをして距離を取ったりしない。
それが萌の心を安心させ、癒してくれる。
心配はせども下手な手に出ないことが、萌には何よりも救いだった。
暗がりを照らす、希望という名の月明かりのようだな、と萌は思う。
明る過ぎて敵に見つかったり、眩しく感じない月明かり。
鬱と絶望。
そして愛するということ、愛されるという希望。
そのことに包まれて、また眠りにつく。
蓄えどきだと侑がいう。
それまで待とうと萌は思う。