【S2】11.納車を待ちながら
もう「待つ」と決めたので待つしかないのだが、かなり手持ち無沙汰。
手持ち無沙汰なので色々変なことを考え始める。というか考えるより他に、俺にやれることがない。
これは何をどう言ったか(あるいは言わなかったか)の水掛け論となりこちらにもはっきりしないのだが、何せ五ヶ月前の話である。こまめにやったことやらなかったことを書き留めるなり請求書に書くなりすれば良かったのだが、まさかこうなるとは思わず、話聞くだけ聞いていたが言っていなかったキャラ、それが「岐阜のボーリングじじい二人組」
ここでなんで強気で出ないんだ、という、いわゆる「クズ男に引っかかったダメ女の動き」という烙印をみんなに押されていた俺であったが、俺は「なんでそんなクズな動きするんだ? 何かそれ面白いのか? こっちが提供できるものも大したものじゃないぞ? よそでやればいいのでは? 何でだ?」とずっとそこら辺の背景がどうしても気になった。
単に好奇心というのもあるが、それにしたってこんな異常な状況、何らかの説明とか、真相とかが判明しないとモヤモヤして仕方ない。
何度も言うが(言ってない気もするが)「俺はハリケーンのハンドルを指定していない」「ハリケーンのハンドルってめっちゃたくさんある」の二点が気になっているのであって、別にハリケーンのハンドルをばかにしている訳ではないと、ハリケーン-大阪単車用品工業株式会社-様にはお断りしておきたい。
「その気配はなかった」と俺は結論を出しているのだが、最もシンプルで辻褄の通る解釈がそれしかない。それなら得られるのが小銭も何もない。全ての客からかっぱげるだけかっぱいで逃げるだけ。
一度俺は、それを経験している。
PTSDというやつだな。
正確には「支離滅裂」なのは俺を囲む空間だが。
こっちまで支離滅裂に引きずり込まれていく。
こう「わかんねえよ」ばっかり続くと、分かるものを繋ぎ、分かるものを期待し、ついでに面白もまぶしていく。海道一のの分かり手と言われた俺としても何ももう分からない。分からせてくれ。
これ、「やれる」派と「やれない」派に分かれていた、タイムラインでは。俺もどっちか分からんがやれるかどうか訊いてみたら、秒殺で「あっハイ分かりました」って言われて拍子抜けした。
保険会社によって違うのかね。
というかあの保険屋さんも相当だが。
俺はまさか「物証がない」という状況がこれほど恐ろしい状況だとは想像もしていなかった。ロジックではとても追いつかない。捜査の基本は現場を百回踏んでわずかな痕跡でも掴むことだと言われている。
金の話ももちろんだが、この「具体的かつ確実に物事を変化させた」ことは俺の心を思いのほか、落ち着かせた。五里霧中のまま五ヶ月、彷徨った俺がやっと掴んだわら一本。
「TWをフルレストアとカスタム」みたいなコースを頼む羽目になるとは思っていなかった。ただバイクも昨今お高いので、気が済むまでやってあるバイク、しかも山んなか走る、となると、どうせそのぐらいすぐ行くので納得はしている。そういう問題ではない。
この辺も意味わかんなくて、仮に「バイク屋さんが嘘をついている」なら保険屋さんがもっと怒るなりなんなりしてる筈なんですよ。連絡してみます、ってなんなの。対物の話、ほんとに進める気あるの?
この辺も俺をどんどんフワフワのフワちゃんにしてしまう要因。
この話で俺の味方は今のところ弁護士さんだけ。
ここから俺は小一時間、一人で考え始める。
俺の「分かり手」の部分が増大したとも言えるが、これは上記の通り「具体的な話が出たから心からホッとした」ことによって、台風の目みたいなスポットに気持ちが入り込んだことによる冷静さかも分からない。
客観的に自分を見てしまったのがいいのか悪いのかは、分からない。
何もかも分からない。
これは優しいとかバカとかクズに騙される女とか、そういう話ではなく。
対物超過の金が最大で53万とかなのだが、預けた金がこれで相殺されて~ムヒョ~とかやってたら、この銭勘定自体が浅ましく無意味に思えてきた。相手と同レベルになってどうすんだよというのもあるし、なんかこう、立ち回っているという気持ちになれない。
銭の亡者感が俺をさいなんだ。
何でも「行動を起こしてみる」「何かしら押してみる」は、五里霧中で何も分からない、ときには、やってみるのがいいと思う。それで気持ちの整理が付いたり腹が据わったりする。
解決に繋がるとかではなく、気持ちの問題が大きいが。
ちなみに、この時のタイムラインの反応はおおむねこれだった
そして翌朝。
この件については今、振り返ると色々思うところがある。
上記の理由もあるのだが、もうちょっと根源的な、それこそ野生センサーだと思うのだが。金勘定への嫌悪感とか疲れたとか勿論あるのだが、そもそもこの行動は単に具体的な手がかりが欲しくての行動であり、何かが掴めたら気が済んだところがかなり、ある。
ただ俺はこのとき、変な「危険」を感じていたのもあると思う。
何かを掴みたかったから動いてみて、やっと何かを掴んでホッとしたのだが、掴んだものがキラークイーンの爆弾だったから、てっ手放さなきゃ! 喰らって死ぬ! みたいな。理由は、全然、ワカランのだけれど。
野生センサー。
こうして運命の月日、運命の九月が動き出す。
シーズン3、九月編、制作決定。
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