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【前編】第96回アカデミー賞のスルーとサプライズ
第96回アカデミー賞の候補から監督賞からグレタ・ガーウィグが、主演女優賞からマーゴット・ロビーが外れたことが議論の的になっています。
Whoopi Goldberg weighs in on Margot Robbie and Greta Gerwig Oscar snubs:
— Pop Base (@PopBase) January 24, 2024
“They’re not snubs […] There are no snubs. That's what you have to keep in mind: Not everybody gets a prize, and it is subjective. Movies are subjective. The movies you love may not be loved by the people… pic.twitter.com/GgF8xmtCx3
このことについてウーピーがコメントしていて、「ほんとそのとおり、ハイ!議論おしまいっ!」という感じなのですが、これはいかに『バービー』が愛された作品なのかということがよくわかる出来事です。
コケる可能性すらあった『バービー』が興行的に成功し、作品賞にまでノミネートされただけでふたりにとっては大成功でしょうと思います。
(マーゴットはプロデューサーとして作品賞にノミネートされています。)
個人的にはこの議論が盛り上がれば盛り上がるほど、『バービー』の逆転作品賞受賞の確率が高まると思います。
(少なくともいまはその風が吹いています)
ただスルー(英語だと"snub")されたのは彼女たちだけではありません。そんな第96回アカデミー賞のスルーとサプライズたちの話です。
まずは話題になっている主要6部門"以外"から。
スルー/Snub
キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(脚色賞)
これはちょっとびっくりした。脚色が素晴らしい作品なので。
まさか『バービー』がこの部門に入ったことで蹴落とされるのがこの作品とは…。
異人たち(脚色賞)
当落線上にいましたが、この作品も『バービー』の煽りを受けたかもしれません。
アカデミー賞の脚本/脚色のカテゴライズはほんとうに意味分からない。
バービー(編集賞)
ノミネート数はトップ4に入っていました。
受賞はありませんでしたが、この部門は『オッペンハイマー』がほぼ独占しているのであまりそこは関係ありません。
作品という目線でいうと編集はかなり重要な部門なので入らなかったのはかなり痛いです。
アステロイド・シティ(美術賞)
代わりに入ったのは『ナポレオン』。
でも確かにいつものウェス・アンダーソンという気はします。
オッペンハイマー(視覚効果賞)
そもそもショートリストから漏れてしまったのですが、ノミネート数だとトップ2に入っていました。
スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(作曲賞)
前哨戦でトップ3に入っていた傑作がスルー。
結局一部門に留まったことを考えると、「続編」というのはかなりネックなのかもしれません。
逆を返すと「君生き」は大チャンス。
デュア・リパ 'Dance the Night'『バービー』(歌曲賞)
一作品から3曲入るのは厳しいのでしょうか。
本職が歌う曲が入らず、俳優が歌う作品(=I'm Just Ken)が入るという…。
ジャック・ブラック 'Peaches'(歌曲賞)
ノミネート数ではトップ3入りだったこの曲もスルー。
作品評価があまりに低いとさすがに厳しいようです。
レニー・クラヴィッツ 'Road to Freedom'(歌曲賞)
『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』からノミネートするならコールマン・ドミンゴじゃなくてコッチだろっ!と思った音楽ファンは少なくないはず。
ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!(アニメーション映画賞)
ノミネート数ではトップ3に入っていましたが、候補には残れず。
キャラクターものはオスカーと相性が悪そうです。
枯れ葉(国際映画賞)
アキ・カウリスマキ監督の復帰作が惜しくも候補入りならず。
この作品が入らず『PERFECT DAYS』が入ったのはちょっと不思議。コメディはやはり難しいのでしょうか。
STILL:マイケル・J・フォックス ストーリー(ドキュメンタリー映画賞)
なんとなく外れそうな気がしていた作品ですが、ノミネート数・受賞数ともにトップでした。
ジョン・バティステ:アメリカン・シンフォニー(ドキュメンタリー映画賞)
ドキュメンタリー映画賞にノミネートされず、歌曲賞にノミネートされたのは映画の特性上正しいのかもしれません。
ノミネート数はトップ2、受賞数はトップ3でした。
ビヨンド・ユートピア 脱北(ドキュメンタリー映画賞)
ノミネート数はトップ4に入っていましたが、受賞はありませんでした。
すごい作品ですが、これが入らなかったとすると他のノミネート作品がかなり気になってきました。
サプライズ/Surprise
伯爵(撮影賞)
全米撮影監督協会賞にはノミネートされていたので実はサプライズではないのですが。
チリの作品ですが、国際映画賞のエントリーは別の作品になっていました。
この作品であればノミネートもあったかもしれません。それくらい良かったです。
The Holdovers(編集賞)
'The Holdovers'が編集賞に入ったことで、この作品がいかに評価されていることがよくわかります。
なのに日本公開が全然決まらない…。
ナポレオン(美術賞)
いつものウェス・アンダーソン『アステロイド・シティ』とリドリー・スコットの超大作、しかも主演はホアキン・フェニックスと比べたときにこちらが入るのはわかるようなわからないような。
雪山の絆(メイクアップ&ヘアスタイリング賞)
ノミネートは親和性が低いヨーロッパ映画賞のみ。
組合賞へのノミネートもありませんでした。
Golda(メイクアップ&ヘアスタイリング賞)
確かに見ればすごい特殊メイク。
ショートリストが公開される部門はそちらを注視すべきと改めてわかりました。
ナポレオン(視覚効果賞)
トップ4に入っていた『哀れなるものたち』を押しのけて候補入り。
組合賞へのノミネートもありませんでした。
ザ・クリエイター/創造者(音響賞)
前哨戦で何ひとつノミネートされず、作品としても評価も芳しくない『ザ・クリエイター/創造者』がなぜか音響賞にノミネート。
逆に候補落ちしたのは'Ferrari'『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』『ナポレオン』。
American Fiction(作曲賞)
トップ7にも入らず、組合賞にも入らなかった作品がノミネート。
この作品もアメリカ人には愛されていると言われていますが…。
インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(作曲賞)
今回ノミネートされた中でベストがっかり。もういいだろ。
The Teachers' Lounge(国際映画賞)
前哨戦のノミネート数は7と平凡な数で、重要な賞へのノミネートはなし。
漏れた作品のひとつであるフランスの『ポトフ 美食家と料理人』と比べると、よりエモーショナルな作品のほうが選ばれやすいのかもしれません。
Io capitano(国際映画賞)
'The Teachers' Lounge'よりさらに少ないノミネート数。
ゴールデングローブ賞にはノミネートされていました。
The Eternal Memory(ドキュメンタリー映画賞)
ノミネート数はトップ9でしたが、ニューヨーク批評家オンライン協会賞で受賞をしていました。
俄然気になる作品に。
To Kill a Tiger(ドキュメンタリー映画賞)
ノミネートは女性映画評価協会賞のみでしたが、受賞も果たしていました。
かなり衝撃的な内容の作品です。
本日の一曲
これはスルーとまでは言えないのですが、やはりノミネートされなかった『カラー・パープル』からの一曲。
ミュージカルからのこの曲がノミネートされなかったことを考えると相当人気ないんだろうな…。
(ミュージカル映画はほかはあまりノミネートされなくても歌曲賞はノミネートされることが少なくないです)
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