歯医者と無縁な人生がええのだが

 奥歯が虫歯であり、虫歯は辛い、痛い、ということで歯医者へと向かう。週に一度程度。歯医者さんには感謝である。そりゃまあ無料で治療してくれるわけではないが、なかなかやれる仕事ではない。人の口の中を見る。そして歯をあれこれする。
 好きなものや好きなことがある。私はビールを飲んで寝室で寝転ぶのが好きだ。網戸から風がはいってきたりなんかしたらもうリラックスもいいところ。適度にラジオがあればよいな。そういう状態が好きだ。私はただの一度も人の口の中を見るのが好きだとおもってことはない。恐らく歯医者さんも人の口の中を見るのが好きということはないだろう。職業というのは好き嫌いはさして関係ないように言う人がいるし、それはあるかもしれないが、ちとリンクしている。製造業の人は機械やらバイクやらそういうのが好きな人がわりと多い。やくざは人を恫喝するのが好きな人が多いように思うし、保育士さんは子ども好きが多い。
 歯医者は人の口の中を見るのが好きなのか、どうか。人の口の中を見るのはすかないが、誰かがしないとこの世は虫歯であふれてしまう、と人のことを心配して人の口の中を見て、診て、くれているのだ、きっと。

 とどのつまりが
「歯医者さんありがとうございます」
の思いであの傾く椅子に座り、コップを置くと水がでてくるあの装置を眺めているんだ。はじめはね、はじめは。しかしどうだ、診察、治療を受けるにつけ、時間が経つにつれ、だんだん腹が立ってくる。歯石をとるとのことでがりがりがりしてくる。痛い。うがいをすると血が出ている。歯医者は言う。
「その血は出てもいい血ですからねえ」
ブッチャーの流血は試合を盛り上げるために意図的に額から血をながしているのであるが、私はクリニックを盛り上げる気はない。私はブッチャーではない。当然シークでもない。

「ちょっとチクッとしますよ」
と歯医者は言う。言ってることと実際の事が違う。
「かなりズキッとしますよ」
だ。
痛いのは自分ではないからあまりに表現が軽くないか。後で抗議してやろうかとその時はなるが、結局受付では気の弱いおじさんに戻る。
「次はいつにしましょう」
と聞かれ、あ、ええええと、と手帳を見る。
「さっきのあれねえ、あのねええ、痛すぎるよ」
なんてことは言わない。

 歯医者帰りはとても疲れる。きっと力みまくっていたからだろう。疲れるとビールを飲むようにできている。そして網戸をあけるのだ。歯の治療おわりすぐのアルコールはわりとうずく。

関本佳史コントの会「イカニワレワレガ」
~田んぼも畑も持っていない人達~
日時 2021年7月24日 土曜日
開場19時 開演19時30分
場所 大阪府大阪市西区江戸堀1-4-21
   日宝肥後橋中央ビル2階2号アワーズルーム
(四つ橋線肥後橋駅下車6番出口四ツ橋筋から1本東へ徒歩1分)
出演者 関本佳史
前売り 1500円(プラス1ドリンク500円)
当日  2000円(プラス1ドリンク500円)
ご予約・お問い合わせ先 zubuno_zubuno@yahoo.co.jp

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