見出し画像

旦那がニートになるまで①

夫はコミュ力と賢さを兼ね備えたスーパーマンだ。
これは惚気でもなんでもなく事実である。

大学時代は大規模サークルの主将を務め上げ、大学院在学中に論文投稿。

どんな会社に就職するのか周りから注目を集めていた彼が選んだ会社は
小さなシステム会社だった。

「システムに携わるなら、小さい会社から始めた方が良いんだよ。」

大企業からの内定を断るという彼の暴挙を、周囲の人間は理解できずにいた。


入社して間もなく、彼は地方へ異動になった。

なんか楽しそうだから、という理由だけで立候補したらしい。

現地での暮らしを満喫しながらも難しい案件をやり遂げ、
期待の新人として社内で一躍有名になった。

そんな彼が東京に戻ってきたタイミングで私たちは交際をスタートさせた。

当時研究しかしていなかった私の話を真剣に聞いてくれる彼に惹かれ、
私から猛アタックした。

多趣味で知識豊富な彼の話は面白く、一緒にいて全く飽きなかった。
ちなみに8年経った今でもそれは変わらない。

そんな彼と付き合って1年が経つ頃、彼に異変が起きた。
朝起きれず、会社に行けなくなってしまったのだ。

完全に鬱の症状だった。
原因は、激務なのに一向に進まないプロジェクト。

会社も彼を失いたくはないのですぐに部署異動となったが、
この一件以降、彼は心のバランスを崩しやすくなった。

「辞めちゃおうかな。」という彼の言葉に、
「辞めちゃいなよ。」と返した。
これ以上苦しむ姿は見たくなかった。

しかし、何度も何度も悩んで意を決して出した退職届は受理されなかった。

希望の部署に異動して良いからと何人もの上司に引き止められ、
結局辞めることはできなかった。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?