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加齢性黄斑変性症に対してのAIでのリスクファクター抽出スキームを製品持ってない製薬企業医師目線でみてみた。

この記事は、デジタルヘルスケア、AIのリスクファクター抽出に興味がある方、製薬企業目線(疾患知識なしの)でこの研究にどのような価値を見出すかについて興味がある方のために記載しています。

本来は扱っている製品関連のスキームがいいとは思いますが、機密情報なのでできません。全く知らない領域を適当に解釈しているだけなので、多分正しくないですが、思考法として参考になれば幸いです。

デジタルヘルス関連の業者、製薬企業に勤めている方、および臨床医の方などを読者として想定しています。

私はメディカルアフェアーズに属しています。売上ではなく、適切な患者さんに適切に薬剤を使ってもらい、薬剤の効果を最大限にすることを目的とした部署です。馴染みがないと思うので、興味がある方は私のブログをご参照ください。

研究については色々な価値の認め方があると思います。一つの視点として考えていただければと思います。

今回のテーマ

今回は加齢性黄斑変性症に対してのAIでのリスクファクター抽出について取り上げます。

私自身は加齢性黄斑変性症をよく知りません。また、AIについて数理学的な知識は持っていないしモデルも組めません。したがって、専門的な話ではなく一般的にメディカルアフェアーズ部員であれば考えるようなことを記事にしています。

疾患についてなにかの治療を推奨する意図は一切ありません。

以下の記事を用いて今回は考えて見ようと思います。

AI Flags Risk Factors for AMD Progression

加齢性黄斑変性症について

加齢性黄斑変性症について簡単に学会ホームページから引用します。

加齢黄斑変性は、欧米では、中途失明の原因疾患の第2位として深刻な病気であることが以前から知られていました。最近日本でも高齢化に伴い、患者数が増加しております。かつては有効な治療に乏しかったこの病気も、最近治療が進歩し、進行をくいとめる、あるいは改善させる可能性が期待されるようになりました。
加齢に伴う白内障は、水晶体再建術という手術があり、治すことができます。しかし、網膜は、たった一枚のカメラのフィルムで、とりかえることはできません。現時点では、網膜の視細胞、すなわち、物を見るための細胞が破壊された場合、再生させる治療はありません。

加齢黄斑変性が深刻な病気である理由は、障害を受けた部分の網膜を再生させることができないことです。しかし、早期に発見できた場合、ある程度進行をくいとめ、被害を最低限度にすることができます。

出典:公益社団法人日本眼科学会HP 知っておきたい加齢黄斑変性―治療と予防― より

ということで、
1.加齢性黄斑変性症を発症した際は生活の質(QoL)を著しく落とす。
2.早期発見できれば治療できる可能性がある。
3.加齢性黄斑変性症の患者数は増えている。

といったところが今回のポイントです。

治療できる可能性がない場合は、早期発見できたところで治療に結びつかないので、発見の意義が薄くなります。加齢性黄斑変性症は早期であれば治療できる可能性があるということで、早期発見がキーになるわけです。

取り上げた記事の概要

Ajana S et al. Ophthalmology. Published online Sept. 2, 2020. の論文が元になっています。論文自体は購入しないと本文が読めません。したがって、今回は論文についてはアブストラクトの範囲で参考にしました。

以下に研究の概略を記載します。かなり端折っているので、原文通りではないです。文脈を私なりに補正したのでその部分は()で記載します。

背景:(加齢性黄斑変性症は高齢化に伴い増加傾向にある。早期発見することで治療可能であり、早期発見することは非常に重要である。)加齢性黄斑変性症のリスクファクターについては既報があるものの、参考としているリスクファクターの数が限られている。今回は、遺伝情報、生活歴なども含めてAIでリスクファクターを抽出する。

方法:3838人のコホートからAIで将来の加齢性黄斑変性症の発生に対してモデルを構築、362人のコホートでモデルの精度を検証。モデルには通常考慮するような因子に加え、遺伝情報、生活歴などの9つの因子を用いた。

結果:AUC(精度みたいな感じ)が0.92となった。

結語:AIでのリスク因子抽出モデルは将来の加齢性黄斑変性症のリスクが高い患者を抽出することができ、早期治療に貢献するスキームと思われる。

今後の流れ:現在、FDAに申請中。
使うデータとして、日常的には取得が難しいものがあり、そこをどのように行うかに課題がある。

1.眼科医による検査
2.日常生活情報
3.遺伝情報

メディカルアフェアーズ的に必要性をどう考えるか?

繰り返しになりますが、私はこの疾患について知識はないです。だけれど、製品を持っていたとしたらということで一般的に考えられることを述べてみます。

メディカルアフェアーズは先述したように、患者さんのアウトカムにフォーカスする部門です。

したがって、加齢性黄斑変性症が早期発見され、治療効果が高くでそうな集団を明確化できるということであれば、メディカルアフェアーズとしても非常に興味がでるスキームだと思います。

しかしながら、概念的に話をしても、社内外の同意を取るのが難しいです。そこで、必要性を示すようなデータを作ることが必用になります。

データは定性的なものと定量的なものになります。定性的なデータは医師との議論を通じて集めたインサイトになります。定量的なものとしてはReal world evidenceと言われる実臨床のデータを用いた研究です。

今回の事例に合わせると私なら、
1.治療効果は診断の時期(疾患のStage?あるかしらないけど)で違うのか?
2.実臨床下で診断が遅れているのはどの程度の割合か?

などのクリニカルクエッションにたいして論文作成を行います。すでに論文があったらすいません。全く下調べしていないので。

さらに、この段階で、このスキームを発展させて、薬剤の効果が高い患者を同定するスキームを検討します。それについては実際に導入された後にデータが溜まるので、3年後ぐらいでしょうか。

このあたりまでプランを作り、それが製品の全体のライフサイクルに合っているかどうかを検討します。このあたりはどの程度他の製品にも力を入れるか?というところで変わります。

誤解がないように以下を記載します。

効果がない患者さんに使ってもら痛いと思っている製薬企業はありません。なぜなら、本来使われるべき患者さんにすら、薬剤が使われていないのが現状だからです。つまり、無理に使ってもらう前にやることが山積みです。

どの企業も製品のことだけやるという時代ではありません。疾患全体のなかでどこで薬剤を使ってもらうのが最適なのか?それを阻害しているものは何で、どのように乗り越えるのか?という、ことに興味があります。したがって、妥当なスキームであれば、製品と直接関係なくても十分に検討する価値がある題材なのです。

必用情報取得の実現可能性について

元記事に記載してあったように必用なデータ取得にいくつか課題があります。

元記事はアメリカの話だが、日本において可能性があるでしょうか?

まず、眼科医の検査について考える。

現状では、すべての高齢者に眼科受診して眼底鏡を行うのは不可能だろう。

しかしながら、自治医大のベンチャー『DeepEyeVision』

のような眼底鏡の読影をAI + センターで行うシステムも構築されつつあり、こういったソリューションとの抱合せが可能であれば大丈夫かもしれません。

失明の原因として加齢黄斑変性症は欧米では2位と大きなものです。一方で日本では増えてはいるもののそこまではいってません。緑内障と糖尿病が原因としては大きいです。

したがって、DeepEyeVisionのようなシステムの普及の視点から行くと、加齢性黄斑変性症がメインターゲットという可能性は低いです。この場合は、加齢性黄斑変性症の製品をもっている企業だけでは普及についてコントロールし難い状態になります。

2点目の日常生活情報についてはどうでしょうか。

現状では、個人情報保護法により、異なったデータソースのデータを個人レベルで統合することが法的に難しいです。

しかしながら、Personal health recordと言われる患者さんの医療情報をライフスパンで捉える概念がでてきています。一部ではアプリと連動させることも行われているので、不可能ではないです。適切なプレーヤーを選んで調整するため難度はたかいです。

最後の問題は遺伝情報です。遺伝情報は個人が特定できてしまう情報です。すなわち個人情報を消してしまうことができません。したがって、常に個人情報保護法の議論の対象になります。

今回は40個ぐらいの遺伝情報をみています。ここに個人識別コードといわれる、個人が同定できる情報が入っているのかが一つの問題です。わたしはここが詳しくないので立ち入らないことにします。

情報取得のまとめとして、個人情報保護について記載します。

個人情報について、医療系ITベンダーの方に多い勘違いに『個人情報を見なければ個人情報保護法に抵触しない』というものがあります。個人情報保護法はそもそもヨーロッパ基準を日本に持ち込んだものです。欧米では個人情報保護は『個人の情報を使わせない権利』のための条項として認識されています。個人情報を見ないだけでは十分ではありません。

このあたりはICR webなどで勉強されたほうがいいかもしれません。

まとめ

メディカルアフェアーズ視点では興味深いが、実現可能性について課題がある。

眼底鏡検査を普及させること、個人情報保護法を意識した情報取得を行うことが課題。

こういったことをツイッターとかブログでも書いているので、興味があれば登録してください。

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