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【小説】鋼の詩(うた) 〜現場百回〜 2-5

5.若杉の決意


その夜。

自宅に戻った若杉はデスクに向かい、新しいノートを開いた。

そして、そこに一文だけ書き込んだ。

「現場100回」

それは、福山から教わった教訓だった。

「まるで刑事ドラマのセリフみたいや…」若杉は苦笑しながらも、その言葉は何度も頭の中を巡っていた。

ノートを閉じた若杉の目には、今までの迷いが少しだけ減ったようだ。 

そしてその目には、確かな決意が宿っていた。
次こそ、現場で通用する設計を──。

窓の外を見ると、遠くの工場の明かりが静かに瞬いていた。

ーーー

次回、第3章では、新規プロジェクトが本格始動する。福山と若杉、そして新たに登場する黒川美咲(32)。それぞれの思いを胸に、新たな挑戦が始まる。現場を知る者、理論を重んじる者、そしてその間で揺れる者──三者三様の視点がどんな答えを見出すのか。

次回以降も、お楽しみに!

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