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Compumaを語る
Asteroid Desert Songs(ADS)、スマーフ男組、悪魔の沼、ex.渋谷タワーレコードのスタッフ/バイヤー、現Newtone RecordsとEL SUR RECORDSに所属している松永耕一さんa.k.a. Compuma。様々なレコード屋に携わる一方DJとして、音楽家として数多のDJプレイ、MIX、アルバムをリリースし続けている。MIX作品に関してはコンスタント過ぎる程のリリース量があるのだけど(悪魔の沼も含め)、ほぼ聴いてきたマンなのである。その中でも今回はCompuma名義でリリースしている特にお気に入りのミックス群をご紹介(悪魔の沼のミックスも勿論必聴モノ多し)。
MOODMANにL?K?O、KUKNACKEと共に「低音不敗」クルーの一員でもあったCompuma(勿論マジアレさんも)による「BETRAYAL ~随ィ喜!随ィ喜!MIX~」。今でこそ彼のミックスは相当数のタイトルがリリースされているけれど、これは正に最初期のミックスだったのでADSスマーフ男組ラブな自分的には正に待望の一枚であった。彼の柔和な人柄がここでは見事反映されていて(?)、およそレゲエとは言えない(思えない)セレクト群/内容ではあるけれど、ぬるま湯に浸かりながら効く(聴く)一枚として長年(今後も)君臨している。ADSの「Happy Landing」が聴こえてきた時は大変高揚させられたしカモメの鳴き声〜Robert Ashleyのスポークンワード流れなんかもなんとも良い塩梅(ここだけ以前のnoteより転載)。唯1人記されてるサンクス欄は愛漲る表記、「マジアレwiki wikiタカヒロ」です。
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その「BETRAYAL ~随ィ喜!随ィ喜!MIX~」の続編が13年振りにリリースされた。「Cosmic Force - Betrayal Chapter 2」と題されたこちらは、前作よりもルーツレゲエ/ダブ色が色濃く反映されており、「Strictly Rockers」シリーズは寧ろこちらのがしっくりくるのでは、なんて思いながら浸ってみたり(大きな大きなお世話)。最高のレゲエ/ダブミックス。
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この作品からCompumaさんのミックスのリリースが加速していった印象がある。この頃自分もドローンやアンビエント、フィールドレコーディング等に傾倒していた時期だったというのもあり、「Something in the Air」は特に思い入れが強い。美しい長尺ドローンから幕を開ける本作のハイライトは、まさにラスト大団円。ex.HOI VOODOO(以前当noteのこちらで言及してます)がほいに改名し、放った7インチシングル曲をここに持ってきてしまうという反則技。そう、これはドローン的なものではなく、正しく「うたもの」(ここでちょっと聴けます)。このシングルは山本精一が絶賛していた事もあり(そこで山本さんはアルバムを切望していたし自分も切望していたのだけど)。このMIXを初めて聴いた時は本当に驚いた驚いた。反則技、と書いたけど、と同時にどこか腑に落ちる感覚もあったんですよね。
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ADSやスマーフ男組と言えば「エレクトロ」という印象も強いと思うけれど、「Magnetic - Exploring The Future Of Funk In The Universe」でのエレクトロ解釈は、痛快な側面もあるスマーフ等で実践してきたものとは一寸毛色の違う異形のエレクトロファンクその他諸々を提示。トラック2に突入すると、背後からマジアレさんの虫声が重なってくるんじゃないのというスマーフライクなフィールドへと突入してゆく。ある意味に於いてこれぞCompumaさんとも言える作品かと思うし、「Something in the Air」の反動とも言える一枚。因みにCD-Rでリリースされている「MAGNETIC Numa Study Sessions」は対とも言える内容で、ここではロボ宙オンザマイクな瞬間も伺える。
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「A DATE WITH COMPUMA(ADWC)」シリーズは3枚リリースされているが、その官能的なコンパイルからはR&Bに電子音楽、それからスクリュードを多用したりと最近はあまりこの形を披露していないのかもしれないが、この側面も真骨頂の一つの様な気もしている。因みに「2」での個人的ハイライトは、終盤の明菜さんである。「3」のスクリュー全開な部分は、このリリースの前後だったかと思うがECDがBLACK SMOKERからリリースした「四次元墓場」、AIWABEATZがスクリューDJとして頭角を表し始めた時期と共にADWCシリーズも兎に角愛聴させてもらっていた。
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KIRIHITO、GROUP等でも活動する竹久圏とのデュオアルバムは、宇治香園からのリリース。廃園となってしまった茶園での録音/フィールドレコーディングからはお茶、自然、アンビエントといったキーワード、それから竹久さんのギターが重なり合ってとんでもない境地へ。2人がこのコンセプトに共鳴し、録音場所に集ったのって必然だったんだなと思う。双方の紡ぎ出す音と茶園の空気が合わさった美しいサウンドスケープに是非浸って頂きたい。凡百のギターアンビエント作品を凌駕/一蹴してしまう程。
BLACK SMOKERからの一枚、「Lateral Thinking」はKILLER-BONGをフィーチャーした一枚。パート1はフォレストリミットにおけるライヴDJ音源で、後にUKのネットラジオでも放映されたという1時間の音遊泳絵巻。パート2はADS時代の彼のシンセ演奏をミックスし、更にその演奏にKILLER-BONGが音を加えるというマジカルな録音。まず、ADS期の演奏というだけで高揚してくるが(こちら過去に書いたADSのテキスト)、そこにKBという異能が音を添えている。10分間のトラックだけど、もう少し堪能したかったなという本音もあったり。
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2022年に「A View」、昨年には「Horizons」というMIX媒体のリリースが続いていたCompumaが「ソロアルバム」という体裁でリリースした2枚を並べてみると、それまでのMIX作品を経てここへ辿り着いたという思いが。「A View」では内田直之によるダブミックスも収められているのだけど、休日に我が家のFostexのスピーカーで結構なヴォリュームで鳴らすのがほんとたまらなく、休日の昼頃にこれをかけて悦になっている。「A View」はこの年のベストの一枚にも挙げさせてもらった特別な響きであった。「Horizons」では歩く歩幅と音が同期する心地良さ、ここでも自然に溶け込んだサウンドスケープ、そこにビートを照らし合わせてみたりとフロアライクな側面と部屋でゆったり楽しめるリスニングの提案もしてくれる。ちょっぴり不思議な心地良さをも孕んでいるし、シンプルにビートミュージックとしてもかっこよいんですよ。