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さかな(のSSE作品について)
遅れてきたさかな(SAKANA)ファンの自分は、以前ここでHOUSESIDEについて書いている事からもおわかりかと思うのですが、SSEというレーベルにはやはり特別な思い入れがある。そこで今回の主役、さかなもSSEからのリリース(更にはPOCOPENさん西脇さんのソロ、さかなの2人を交えたカメラのアルバムもここから)があったわけだけど、当時も、それから2、3年位前までほぼさかなを聴く事はなかった。きっかけはSSEからほぼ同時期にリリースされていた「Portraits」と「Le Rayon = 光線」の2枚を聴き、遅ればせながらさかなの魅力に気付かされた。SSEからの2人のソロ、それからカメラのアルバム。この5枚に関してはこの3年程繰り返し繰り返し聴いた。ただただ素晴らしいの一言に尽きる。
そのフェイバリットの2枚、「Portraits」と「Le Rayon = 光線」リリース前後に、これまたSSEのレーベルメイトでもあったバクテリアの川口トヨキがまるでラブレターの様な、鋭い批評の様な、なんとも素晴らしい長文テストを残している。この2枚のみではなく、それ以前のリリースにまで深く言及した内容。これを読んでよりさかなに興味を持った部分も大きくて。因みにバクテリアの「Cell Division」もSSEクラシックの一枚なのだけど、彼らのノイズギターや、(この頃)ハウスにも傾倒したプロダクションはしかし、さかなの音楽性と真逆のアプローチなのにこの熱烈なるラブレターですからね。
「Portraits」はジャケットにも堂々と「NISHIWAKI GUITAR, BASS, PRG」と記されている様に、冒頭からいきなりブレイクビーツ/ヒップホップ的な側面も垣間見れる、さかな名義としては異端的な作品。が、そこにポコペンさんの歌が被さるとこれはもう立派なさかなになるんですよね。「光線」のアコースティックな作風と並べて聴くとさかなの引き出しの多さを存分に理解できるかと思う。因みに下の「Father Sun」はアコースティックな楽曲なのだけど(若き日のポコペンさんも素敵)。
ここから遡ったりSSE以降の作品を聴いたりもしたのだけど、SSEからのこの5枚がどうしても特別感が強い。それは北村さんのフィルターを通過したからなのか?ディレクションなのか?レーベルカラーなのか?明確な理由はわからないけれど、どれもこれもただただ愛おしいのだ。ポコペンさんのファーストソロ、「Bonjour Monsieur Samedi = ボンジュール・ムッシュー・サムディ」は、ソロではあるけれど西脇さんもかなりの曲でギターを弾いていて(逆に西脇さんソロもポコペンさんがかなりの曲で歌っている)、さかなさかなしてる一枚でもある。因みに4曲目の「たのもしい王子」は、yumboの澁谷浩次さんとコラボした7インチでセルフカバーもしている。
ポコペンさんのソロはヴォーカリストのソロアルバムという感じだったのに対し、西脇さんのソロ、「La Forêt = 森」はポコペンさんが大半で歌ってはいるけれど、さかなのアルバムとは異なる雰囲気が全編で漂っている。何処か室内楽風な、ギタリストのソロアルバムという意味ではとても不思議な響き。西脇さんはギター以外にもチェロやパーカッション、キーボード等を自身で演奏していると言う意味でソロアルバム然としてはいるのだけど。Discogsには「Avantgarde, Experimental」と表記されている程大胆な楽曲群を堪能出来る。動画みつけられなかったので、こちらを。こちらも大変素晴らしい西脇さんのソロアルバム。
Dip The Flagにも在籍していた伊藤正泰、POP鈴木らを交えたCamera(トップ画像はカメラです)は、例えばドラムが加わるだけで重厚感やさかなとの線引きをしっかり確認出来る。カメラからは正しく「バンド」の音を堪能出来る。さかなとしてではなく、カメラとしてインタビューを受けた記事を読んだのだけど(とは言えバンド全員ではなく、ポコペンさん西脇さんの2人の)、兎に角お互い(特に西脇さんが)がお互いを尊敬、時に嫉妬(こっちはポコペンさんが)したりもする2人の関係性が垣間見れる貴重なインタビューだったと思う。
2023年、音楽評論家/音楽プロデューサーとさかなのお二人はTwitter上で長い長いやりとりをしていた。Togetterに纏められているので、興味のある方は読んでみて下さい。これを読むと、どちらにも非があったのかなとも思うけれど、やはりこの評論家は…って思わずにはいられなかった。彼は以前微熱王子とも舌戦繰り広げていたけれど、微熱王子と知り合い云々は置いておいても、この時もこの人やばいなと思いましたからね…。