MELT-BANANAを語る
NO WAVE/POST PUNK以降みたいな紹介のされ方だった様に記憶しているMELT-BANANA(以下メルト)は、その頃ギターノイズを撒き散らすバンドに夢中だったのもあり、フールズメイトに掲載されていたレビューかライブレポを読んですぐに新宿のタワーレコードに買いに走った記憶がある。因みに10代後半頃、初めて行ったタワーレコードの輸入盤の量&熱量に圧倒され、今まで雑誌でしか見た事がなかったSONIC YOUTHのインディー時代のアルバム群をたんまりと肉眼で確認出来た時の感動は今も忘れぬ(確かEVOLかSISTERを買った筈。沢山買える程手持ちもなかったんですよね。後日当然の如くDAYDREAM NATIONなども買いましたよね)。そんな時期だったのでメルトも当然の様に手に取り、再生したらド頭のギターやヴォーカルが渾然一体となって畳み掛けるハードコアスタイルは、ギターノイズを撒き散らす自分がそれまで聴いてきたどのバンド達とも異なる鋭利な音と歌(声、歌唱スタイルも含め)には本当に本当にやられた。
そのファーストアルバムはK.K.NULLのレーベルからリリースされた。全25曲32分、余計なものを削ぎ落とした、最初から最後までただただ衝撃的コアサウンドをこれでもかと畳み掛ける音の塊よ。これを聴いた後は7インチシングルなども片っ端から聴く有様。ゴットコとのスプリット7インチ、スティルアップステイパとのスプリット10インチ等忘れられないタイトルだらけ。この頃から既に海外志向で、スプリットの相手も海外のバンド(この頃は様々なタイプのバンドとのスプリットで、ジャンルレスに横断するメルトもかっこよかった)、リリースも海外からばかりであった。あ、国内ではロスアプソンの開店記念コンピにも参加してましたね。
そして、正に満を持して発表されたセカンドアルバムは、プロデューサーにSteve Albini、ミックスにJim O'Rourkeを迎え、更には国内盤はメルダックからのローファイシリーズの一環としてメジャーリリースという快挙(ライナーは佐々木敦と小林正弘)。前作をさらに推し進める形でのポストハードコア的な疾走だけに留まらず、バックアップする布陣の影響?入れ知恵?もここでは反映されており、ほんのり寄り道的な、新たなメルト色もほんのりと加味された前作同様個人的には堂々たるクラシック作となっている。心なしか前作にはあまりなかった「歌」を聴かせてくれる部分もほんのり伺えたかと思う。
そのメルダックのローファイシリーズの一枚で、「Lo-Fi Electric Acoustic & Radical」というコンピレーションもリリースされていた。暴力温泉芸者の中原昌也とのコラボ、温泉BANANAの録音を聴けるというだけでもこのコンピはマスト。なんて言いたいところだけど、このコンピは他にも聴きどころ満載なのだ。BOREDOMSの面々(主にEYƎ、YOSHIMI、山本精一が流動的に組んでいる)が変名で幾つものバンドで参加していたり(電動歯が聴ける!)、ゴッドコにポルヴォ、ハーフ・ジャパニーズ&ジャドさんなんかをこの一枚で堪能出来るのだ。ここでも佐々木敦はライナーを書いている。温泉BANANAは中原昌也主導と思しき、普段のメルトサウンドとは全く異なる側面を堪能出来る必聴トラック。そうだ。以前伊藤英嗣が佐々木敦らと発行していたインディー雑誌、「SPOOKY」にてその中原昌也がインタビュアーとなり、メルトバナナへインタビューしている記事があるのだけど、このインタビューはとにかく双方共に酷い笑。是非とも一読して頂きたい程酷いんす…。
ファーストアルバムリリース前後に掲載されたインタビューで大貫さんが発言していた、メルト前に組んでいたバンド、「水」(良い名前)時代の音源の存在があったかどうかはわからないけれど、当時も今もそれはずっと気になっている。この時インタビュアーの石井さんに「水です…」と前身バンド名を恥ずかしそうに答える大貫さんにずっきゅんした事も付記しておきます。水はどうもメルトの音とは全く異なるニューウェーブ寄りな音だったそうで(嗚呼聴きたい)。
(セカンド以降もコンスタントにリリースはありましたけれど)そんなメルトバナナが今年、11年振りとなるスタジオ録音盤、「3+5」をリリースした。衝撃的コアサウンドという意味では不変であるけれど、やはり最初期の音に慣れ親しんだ身としてはその変化に戸惑う面も正直あった。と思ったけれど、聴き込むにつれやはり根底に流れるメルト節は健在で、それだけで安心感に満たされ。現在は大貫さんと縣さんによるデュオになっているけれどこの熱量を2人になっても余裕で持続出来ていて嬉しくなってくる。今年の春に行われたライブ映像がYouTubeに上がっていたので是非に。あたいキッズだった頃に瞬時に舞い戻ってしまったよ。それから昨年小野島大さんがロングインタビューされた記事も併せてどうぞ。