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Terre Thaemlitz / DJ Sprinkles / Comatonse Recordings

Terre Thaemlitz最初期のリリース群、例えばMille Plateauxからのアルバム等何枚かは聴いてはいたんだけど、そこまでグッとくる事はなかった。そんな中、自身のComatonseより別名義、DJ Sprinklesでリリースしたカラーヴァイナル12インチ、「Sloppy 42nds」をこれまた毎度お馴染み西新宿時代のロスアプソンで買ってから状況は一変する。先日ここのnoteでも記したClearやHerbert、Moodymann辺りに傾倒していた時期にこれもよく聴いた一枚。この頃はテクノもハウスもよく分からず良い/好きという至極単純な理由で聴いていたけれど(素晴らしい音楽との接し方だ)、令和の現在も変わらず初期Herbert、DJ Sprinklesなどをこよなく愛しているので、あの頃の自分の耳にビッグアップ。取り敢えず今日のところはDJ Sprinklesに絞り込んでゆきたい。


そのDJ Sprinklesの「Midtown 120 Blues」(オリジナルはMule Musiqより。後にComatonseからリイシュー)を今聴きながらこれを書いているのだけど、ディープハウス、というよりハウスのアルバムではどの作品もこれには到底敵わない。まさに自分の理想の音が全編で鳴らされている。この作品の背景には、一聴しただけではわからない様々な問題提起を孕んでいたり、シカゴハウスへのオマージュ。ディープハウスのみでは語れない側面も散りばめられている阿鼻叫喚作品なのだ。00年代最後に産み落とされた金字塔なんて書かれていたりもするけれど、正にその通りだと大いに頷きながら今まさに音を堪能している。

どちらも現在入手困難のコンピとMIX、共にMule Musiqからリリースされた「Queerifications & Ruins」「Where Dancefloors Stand Still」(こちらはSpotifyで聴ける)の2枚や、才人Mark Fellとのコラボレーション等どれもこれもが圧倒的なハウスアルバム/MIXで語彙力不足だが、聴かれるべき作品群。それから「Deeperama Module Party」というCD-Rでリリースされているライブミックスのシリーズがあり、例えばシリーズ8番の冒頭にはNina Simone「Sinnerman」が。そう、自分的にこれを聴くと瞬時に浮かぶのはDavid Lynch「インランド・エンパイア」のあの素晴らしいエンドクレジットである。これをDJのピークタイムではなく冒頭に持ってくるDJ Sprinklesよ。このシリーズはComatonseにて直販(一枚1000円)も出来るので是非。

今回DJ Sprinkles縛りと言ったけれど、これだけ。別名義のKami-Sakunobe House Explosion/K-S.H.E/上作延ハウス・エクスプロージョンが2年前にリリースしたレア音源を纏めた編集盤、「SPIRITS, LOSE YOUR HOLD / 精霊、力を落とす」これはリリースされてすぐに聴いて大いに驚かされた。K-S.H.E名義では「Routes not Roots」という素晴らしいアルバムがあるけれど、この編集盤と併せて堪能推奨。こちらもインナーのテキスト必読の事。彼がバイセクシュアル/服装倒錯者(現在は違うのかな)である事実は多くの作品へ投影されていると思うのだけれど、その辺りの背景は作品のライナーやテキストで確認出来る部分もあるので、それを踏まえた上で音に触れてみるとまた違った視点で音を楽しむ事が出来ると思うのだ。そう言った情報が不要な人は単純にこの素晴らしいハウスアルバムにどっぷり浸かってもらうのも全然アリだと思います。テクノが嫌い、ドラムンベースが嫌いとお茶目に笑いながらインタビューに答えていたけれど、でもこれは本音なんだろーなーと彼の色々な作品を聴いてるとそんな思いがよぎる。以前HEADZが発行していたヒアホン創刊号に彼の超ロングインタビュー(iTunesにケンカを売るの巻)が掲載されているのだけど(まだ買えるのかしら)、こちらも必読。そして、今月Comatonseより2枚のニューリリースがあるので、それらも楽しみである。

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