M.O.O.D./donut
MOODMANがDub Restaurantでのリリースに区切りを付け、M.O.O.D./donutをリ・スタートさせた頃のお話し。M.O.O.D.からはCD、donutからは7インチをリリースしていく事になるのだが、もう、なんというか全タイトルを並べて聴いてみるも見事なまでに一貫性がなく、その頃のMOODMAN氏の趣味嗜好がまんま反映されていたり、身近にいた人達(所謂ロスアプソン周辺の音楽やってる人達)をフックアップみたいな思いもあったのかもしれない。そんな一貫性のない様々なタイプの音楽群の、そのどれもこれもが掛け値なしに面白過ぎて、ロスアプソン周辺に集う人達のユニークさ、唯一無二さを知ってしまうわけです。
まずはM.O.O.D.から。CiCi Towでの活動で知られ、細野晴臣を師事していた内田ガクによるWhy Sheep?が羊毛フェイクファーに包まれたアルバムをリリースする。タイトル全てに「Why」が冠されたこのアルバムは、ベートーベンとKLF「Chill Out」なんかを繋ぐ、アンビエント/チルとダンスを行き来する素晴らしい一枚に仕上がっている。
電子の騎士ことAsteroid Desert Songs(ADS)による3インチCDは、まず宇川直宏によるアートワークが冴え渡り、セルフライナーをマジアレ氏自身が手掛けている。リリースは1996年なのだけど、ライナーを記したとされる年が2006年となっており、10年後を予見(?)したかの様な素晴らしいライナーになっていたり、Clearレーベル等を引き合いに出して語られる新旧エレクトロテキスト等読みどころ満載。必読。ゲストのバッファロードーターの山本ムーグさんやロスアプソンヤマベ店長等と共にエレクトロ電子コラージュその他諸々を披露している。
7インチ部門donutの1枚目は、Funnychair名義で2枚のアルバムをリリース、その後Childiscのコンピ等にも参加していたSlug Pharmacyによる一枚。Funnychairにも通じるピュアでチープな室内楽風電子音が身体の隅々にまで浸透していく様な心地良さ。カタログ2番は暴力温泉芸者こと中原昌也によるジャケもタイトルも真骨頂な、辛抱たまらないエロティックワールドを展開。CiCi Towは、BOREDOMSのEYEも彼等のライブで踊り狂っていたという逸話もあるようだ。そういえば昔、初一人暮らしの時の家にJim O'RourkeやMirrorなんかが好きな異性の友人が遊びに来て、これをかけたら「これなに?」「大好き過ぎる」と興奮気味に詰め寄られた事もあった。高揚させられる事必至なトライバルサウンドを是非。CiCi Towですが、Why Sheep?ガクさんは過去のインタビューで、「CiCi Towのライブアルバムをいつか絶対出したい」と発言していた。うーん今からでも実現してほしい。
KUKNACKEさんのデビューシングルは、ストレンジでポップでアヴァンギャルドな、彼らしさが既にこの時点で確立、ぎゅぎゅっと凝縮された一枚。当時もこれ、一体どう聴けば、どの角度から聴けばいいのだ!?と自問自答しながらも繰り返し針を落としていた思い出深い一枚。これは立派なダンスミュージックだと思う。ジャケに記されているホログラムステッカーが封入されてないじゃないのと思ってロスアプソンに電話しようと思ったの懐かしい(未遂に終わった)。因みにあのH.N.A.S.等のChristoph Heemannも大好きな一枚として君臨しているんでしたよね。
カタログ5番はADSマジアレさんによるソロシングル。盟友Compuma氏による熱いライナーノーツがジャケットにもなっているにくい一枚。そのCompumaさんがYouTubeに上げてくれてるマジアレさんのソロライブの動画で使われてるのが、このdonutからのトラック。ちょっと観て&聴いて下さいほんとたまらないですよね。文章も含めほんとにずっと大好きな人。フォーエバーマジアレさん。
6枚目は、何処か似た匂いもするPacific231との共演を過去にしていた浅野達彦の、いやはやな一枚。ハワイアンな香り(加山雄三を引き合いに出す人もいた。少しわかるぞ)もほのかに漂う美メロの素晴らしさに撃沈したのは自分だけではない筈。ロスアプソンでたまたまかかっていたというこのシングルにその日来日していたALEC EMPIREが鋭く反応、後に彼のレーベルからデビューアルバムをリリースするというものすごい流れが。良い曲を聴きたい方、触れてびっくりして欲しい。DOTさんは、後に佐々木敦のUNKNOWNMIXからのアルバムにも収録される二曲を収録。スピーカーの右から左にゴリラや鳥が行き来する忙しない最高のチューンを是非に◎カタログ最後は中原昌也がHair Stylistics名義最初期(最初?)のディスコシングル。この異様なまでのスカスカ感に戦慄させられると同時に踊れる側面も搭載している私的ディスコクラシックでもある。
Discogsによると、他にもM.O.O.D.の型番ではないけれど、MOODMANのMIXCD「Weekender」(因みに今聴きながらこれ書いてます)。KUKNACKE、L?K?O、MOODMAN、スマーフ男組=低音不敗クルーによる「Killed By Bass」なんかも並んでおり、どちらも必聴である。あ、もう一枚。ロスアプソンとM.O.O.D.共同リリースの一枚、ラテンブレイク集もものすごいぞ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?