
アインシュタインタイルを愛でる。とにかく愛でてみる。
前回の記事は、毎年恒例のシリーズ企画の16回目でした。
しかも、その前回の記事はシリーズ内シリーズで数回にわたる内容の一区切りでして、他の周辺を見渡せるようになりました。
そんななか、1ヶ月前に大変興味深いニュースが入ってまいりました。
日本テセレーションデザイン協会の代表でもある数学者の荒木義明さんのツイートでした。
今朝ビックニュースが飛び込んできました。ついに数学のアインシュタイン問題が解かたというのです。第一発見者のDave Smithさんはアーティストティックにテセレーションを探究する同志です。非周期にしか敷きつめられない不思議なタイルを自分でも理解しようと描いたが下のフラクタルタイルの図です https://t.co/0VAshCWqSL pic.twitter.com/7KC0cfzBdw
— Yoshiaki Araki 荒木義明 Aperiodic 非周期 (@alytile) March 21, 2023
はい?
アインシュタイン問題?
非周期にタイルを敷き詰める
ツイートがあったのは2023年3月21日。
その後、さまざまな(おもに理系関係の)メディアでニュースになっております。
論文のタイトルは「An aperiodic monotile」。
訳すと「非周期性モノタイル」
非周期になるタイル敷き詰め、といえば、で真っ先に連想するのがペンローズタイルです。
ペンロースタイル(しかも、それを使用したボードゲーム)について、以前記事にしました。
ボードゲーム『Einstein(アインシュタイン)』を紹介した記事ですが、
アインシュタイン博士がテーマなのに
なぜペンローズタイルの敷き詰め?
その疑問が、今回のニュースでなんか納得しました。
「アイン」はドイツ語で「1」、「シュタイン」はドイツ語で「石」。
「アインシュタイン」=「1つの石」……1種類のタイル……モノタイル、なのです。
この記事をあげるまさに昨日、さらなるツイートがありました。
テセレーション協会 杉本さんが、Aperiodic tileやSmith Hatについて渾身のまとめブログを2本リリース。
— Yoshiaki Araki 荒木義明 (@alytile) April 20, 2023
非周期的タイル張りのみ可能なタイルの話https://t.co/TWJDUd4RAK
非周期的タイル張りのみ可能なタイル「hat」を使った
周期性を持つ敷き詰め模様のベルトhttps://t.co/inuSt6JDr4
こちらのブログ記事も熱気ムンムンなので、ぜひぜひ読んでみてください。
非周期的敷き詰めモノタイル「HAT」
長年探し続けていた「非周期的敷き詰めモノタイル」。
その実例となるタイルとは、こちら。

凸凹の13辺をもつ多角形。
形状が帽子に似ているので「HAT」とよばれます。
このタイルを敷き詰めたのが下の図。

https://doi.org/10.48550/arXiv.2303.10798
上の図から「HAT」は、ある1種類の四角形が8個組み合わさった形状だとわかります。
さらにいえば、この四角形は、2つの直角三角形――しかも、正三角形を二等分した――の長辺をあわせた凧形(Kite)です。

30°、60°、90°です。
今回は、「HAT」のタイル1枚だけを、愛でてみたいと思います。
2つの図形の合成?
論文「An aperiodic monotile」を眺めると、興味深い図がいくつかでてきます。
そのひとつが、以下の3.2図です。

https://doi.org/10.48550/arXiv.2303.10798
一番左が「HAT」です。
辺を2色に分けていますが、黒い辺の長さを1とすると、オレンジの辺の長さは$${\sqrt{3}}$$となります。
それぞれの色の辺のみを取り出して平行移動すると、オレンジの辺は右から2番めの図形(正三角形が4個組み合わせ)、黒い辺は1番右の図形(正三角形が8個の組み合わせ)になります。

さて、1番右の図形は、左側の凸っている箇所を取り除いてしまうと、正六角形になります。
それに合わせて、右から2番めの図形も合わせて取り除くと、正六角形を二等分した形状になります。

しかし、「HAT」も同じように上のような取り除き方をすると、(上のような正六角形などとくらべると)いびつになってしまいます。

さて、もう一度論文の3.2図を眺めてみると、左から2番めの図形(2つの凧形がつながったプロペラのような形状)が妙に気になります。
この図形は、「HAT」から取り除くことができます。

(中心点に120°回転すると、元の図形に重なる)見事な点対称図形が残ります。
取り除いた図形をいったん元に戻しまして、それぞれ分割した2つの図形を色分けすると、以下のようになります。

見た目、回転主翼と回転尾翼の2つを備えた「ヘリコプター」です。
基本的に、図形の名称は外辺の輪郭をとらえて名付けるので、ヘリコプターと呼ぶのははばかれますが、図形の特徴をあらわす例えとして使えるのでは、と思います。
こっちが本命?
「ヘリコプター」をみつけてから、あれこれ思案してみると、いろいろと気づきます。
またもや論文3.2図です。
オレンジの辺の図形です。
この図形の辺の長さを若干調整すると、他の図形との相関関係がみえてきました。

「HAT」は、右下の図形を左上の図形へ変形する際の途中であらわれる図形では?と考えます。
右下の図形と左下の図形それぞれにある青色の図形を1単位とすると、それぞれ4単位あります。
これらの単位図形を色分けすると以下のようになります。

下の方に単位図形を取り出しましたが、その中間にある図形が、まさに「HAT(ヘリコプター)」から取り出してきた回転尾翼です。
さらにさらに。
正六角形(上の図の左上)と「HAT(ヘリコプター)」の回転主翼に注目してみます。
すると、正六角形を構成している単位図形を変形、さらに回転移動すると、回転主翼になります。

さらにさらにさらに。
上図の下のように、回転主翼を回転尾翼の形状に三等分して色分けして、これまた単位図形を変形&回転移動(結構頑張って突き抜ける)すると、別の正六角形(2つ上の図の右上)にねじれます。
結論。
面白い。
締め
というわけで、非周期的敷き詰めモノタイル「HAT」を1枚だけ愛でてみました。
1枚だけでも非常に鑑賞のしがいがありました。
もしかすると、まだまだ新たな発見があるかも知れません。
もうちょっと愛でてみます。
では。