絶対浮気しない男 エピローグ
あれから数年後。
あきらと沙織の結婚式が、華やかに執り行われていた。
「あきら、私の初恋の人。今日からよろしくね」
純白のウェディングドレスに身を包んだ沙織が、愛おしそうに微笑む。
「ああ、よろしく頼む。お前を絶対に幸せにするよ」
あきらもタキシードの裾を引き、凛々しい表情で答えた。
パイプオルガンの荘厳な調べが響く中、二人は永遠の愛を誓った。
招待客席では、葵や聖子、まどかが涙を浮かべている。
いおりも「やりやがったな...!」と目頭を押さえていた。
新郎新婦を祝福するかのように、鐘の音が高らかに鳴り響く。
こうしてあきらは、「絶対浮気しない男」としての誓いを果たした。
かつての過ちを乗り越え、真に愛する人と結ばれたのだ。
沙織と手を携え、あきらは人生の新たな一歩を踏み出す。
「絶対浮気しない男」
それがあきらという男の、生涯のモットーである。
輝かしい未来が、二人を待っていた。
春の陽光が窓からさしこみ、祝福のメッセージカードが風に舞う。
あきらはそっと目を閉じ、沙織への愛を胸に刻んだ。
「絶対浮気しない」
若き日の過ちを乗り越えて、ようやくたどり着いた幸せ。
その喜びを噛みしめながら、あきらは妻への愛を新たにしたのだった。
式が終わり、送賓の時間。
あきらと沙織は、一人一人に感謝の気持ちを伝える。
「本当にありがとう。今日は最高の日になったよ」
「こちらこそ、呼んでくれてありがとう。あなた達の門出を祝福できて光栄よ」
笑顔で言葉を交わし、固い握手を交わす。
友人代表のスピーチでは、いおりが二人をいじり倒した。
「あきらの奴、学生時代は尻軽男だったけど、ついに沙織と結婚かよ。隠れた純愛物語って感じだな!」
「おいいおり!余計なこと言うな!」
あきらが顔を真っ赤にして抗議の声を上げる。
それを聞いた沙織は、クスクス笑いながら言った。
「いおりくん、そんなこと言わないの。過去はもういいの。あきらは私だけの、絶対浮気しない男なんだから」
「ま、そうだな。冗談はこのぐらいにしとくよ。あきら、沙織のことは任せたぜ」
「ああ、もちろんだ。俺の全てを捧げるよ」
あきらは沙織の手を取り、優しく微笑んだ。
「みんな、今日は来てくれて本当にありがとう!俺達、必ず幸せになるから。その証人になってくれよな!」
力強い宣誓に、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
「ああ!」「おめでとう!」「末永くお幸せに!」
祝福の声が、新郎新婦を温かく包み込む。
晴れやかな表情のあきらと、幸せに満ちた沙織。
誓いのキスを交わし、二人は新たな人生の門出を迎えるのだった。
やがて月日は流れ、あきらと沙織に子宝が授かった。
元気な男の子と、可愛らしい女の子。
慈愛に満ちた眼差しで、あきらは我が子を見つめる。
「パパ、今日も仕事頑張ってきてね」
「ああ、行ってくるよ。留守中はママの言うこと聞くんだぞ」
「わかった!」
子供たちを抱きしめ、あきらは家を後にした。
「いってらっしゃい、あなた。今日も気をつけてね」
沙織がそっと頬にキスをする。
「ああ、行ってくる。今日も一日、頑張ってくるよ」
微笑み合い、固い絆を確かめ合うように手を握る。
「絶対浮気しない男」
あきらは胸を張って、そう口にした。
妻と子供たち。かけがえのない家族を守るため、今日も仕事に精を出す。
それが、あきらの生きる原動力になっていた。
時は移ろい、あきらと沙織は白髪混じりになっても、変わらぬ愛情を持ち続けた。
「あなた、私達、本当に幸せよね」
「ああ、そうだな。お前と一緒にいられて、心から幸せだよ」
寄り添い合い、人生を振り返る老夫婦。
かつての恋の遍歴も、今となっては遠い昔の思い出話だ。
「孫も、もうすぐ生まれるのよね。楽しみだわ」
「ああ、新しい命を迎えられるなんて、最高の喜びだな」
目尻に皺を寄せて微笑み合う。
時代は移り変わっても、二人の愛情は不変だった。
そして、最期のときが訪れる。
病に伏したあきらの手を、沙織が握りしめていた。
「沙織...俺、最後まで...お前を愛し続けたよ...」
「ええ...私も、あなたを心から愛してる...」
涙ながらに言葉を交わし、固く抱擁を交わす。
「絶対...浮気しない...男でいられて...良かった...」
そう言い残して、あきらは静かに息を引き取った。
「あきら...!あなたは最高の夫でした...!」
沙織は悲しみに暮れながらも、深い感謝の気持ちを抱いていた。
こうしてあきらの生涯は幕を閉じた。
「絶対浮気しない男」という高き理想を貫き通した、一人の男の物語。
その生き様は、多くの人々の心に深く刻まれることだろう。
墓石に刻まれたのは、こんな言葉だった。
「ここに眠るは、絶対浮気しない男」
それはあきらの生涯を表す、最高の言葉だった。
妻の沙織と子や孫に見守られながら、あきらは安らかに眠っていた。
「絶対浮気しない男」
若かりし日に誓ったその言葉を、あきらは最期まで守り抜いたのだ。
(完)