医者の前で赤面した話
これは子供が2人いるアラサー女の私に起こった、本当にあった怖い(?)話。
私が今の会社に入社して、半年ぐらいたったころだろうか…
年に一度の健康診断が行われた。
健康診断の内容はいたって普通の内容だった。諸々の測定など終わらせ、次は内科検診となった。
名前を呼ばれ、パーテーションで仕切られただけの個室に通される。
診察用の丸椅子に座るなり、医者が私に問いかけた。
「…調子悪いですか?」
この医者は何を言っているのだろうか。私はいたって健康で、なんなら調子がいいくらいなのだ。
私は答えた。
「いいえ。」
しかし、続けて医者は問いかける。
「具合は悪くないですか?」
…?なぜそんな聞き方なのだろうか。
私は私自身、健康だと思っていたが、何か病気でも見つかったのだろうかと一瞬狼狽えた。
でも、病気だとか、どこか調子が悪いとかいう心当たりが何もない。
何か、宣告されるのかも…
瞬時に最悪の事態も想定する。
覚悟を決めて、私は答えた。
「…いいえ。」
医者はすっと指さした。
その指さした先には私のお腹。
「…これは何ですか?」
あぁ、神様。
毎晩、晩酌した私をお許しください。
350mlの発泡酒1本を毎日飲んだだけじゃないですか。
なぜ、こんな姿に。
黒のスキニーパンツの上には、でっぷりと神が蓄えたであろう、脂肪と言う名の集合体。
この医者は、私が妊娠していると思ったのだ。
たしかに、腹だけ出ている…
客観的にみても、腹だけ出ている。
医者の問いかけは、私の羞恥心をゴリゴリ植え付けた。
だが、私は答える。正直に答えるしか、私に選択肢はないのだ。
「……肉です。」
途端に、自分の顔が赤くなるのを感じた。
いつぶりだろう、こんな赤面は。
なんなら、医者も赤面していた。
そのあと医者が聴診器をあてたり、あてなかったり、何か私に言っていたような気がするが、まったく覚えてない。
そばにいて一部始終を見ていた看護師は、なんとも言えない顔をして、こちらを見ていた。
そんな、ヒートテックを恨んだ日。