新たな挑戦へ ニホンイヌワシの飼育環境改善と保全への第一歩
いつも盛岡市動物公園ZOOMOを応援していただきありがとうございます。もっとブログでお伝えしたいと思いながらなかなか書くことができず更新頻度が低いことが気になっております。それでも、フォローやいいねをいただき本当に感謝しております。
来園するお客様に感謝をし、いろいろなことを体験しているうちに、あっという間にリニューアルオープンから1年が経ってしまいました。満開の桜や春の花々を見て、ああ、去年は花を眺めてゆったりする余裕もなかったなあと1年越しに判明しました。
昨年度は2001年以来の年間入園者数20万人達成を達成することができました。また、4月29日には平成元年の開園以来入園者数が600万人に到達いたしました。皆さんがZOOMOに足を運んでくださったからこそ達成できたこと、本当に感謝しております。
昨年は異業種コラボとして様々なことに挑戦し、PanoPano様とのコラボ「ピューマのニーナのおててクリームパン」販売や、ベアレン醸造所様とオリジナルラベルビール「姫とリオの乾杯ビール」を通して、飼育環境の改善や、野生動物の保全に活用する寄付付き商品の販売に取り組みました。今回は、新たに挑戦するプロジェクトの裏側をお伝えしようと思います。
ZOOMOのロゴマークは岩手を代表する動物や、里山で見られる樹木や昆虫など、多様な生き物たちがつながりを持ち、健全に過ごす風景。そのことに気づき、考える人。この生き物の輪で「One World-One Health」の理念を表現しています。
リニューアルオープンする時にはニホンイヌワシをシンボル動物として、より魅力と迫力が伝わる大きな展示施設にしました。新しく作ったZOOMOのロゴマークには、ニホンイヌワシのシルエットが入っているのもそのためです。今回は満を持して、ニホンイヌワシの飼育環境改善と、保全に取り組む大きなプロジェクトが動き出しました。
このプロジェクトは、飼育スタッフの一言から始まりました。
飼育「さいとう製菓のかもめの玉子でイヌワシの玉子ってできないかな…。」
企画広報「さいとう製菓ですか…。」どうやったらつながれるかな…。昔なんか連絡して全く相手にもしてもらえなかったって聴いたな…。どうしようかな…。
飼育「ニホンイヌワシをただ見るだけじゃなく、旋回して飛んでいるところを間近で見ることができたら誰だってカッコイイ、スゴイ!と感動する。そうすればきっと野生のニホンイヌワシのことも守りたいと思ってくれるし、ニホンイヌワシが暮らす環境を残したいと思うはず。飼育している“空”と“出羽”と“翁”はそのためにZOOMOで展示しているからこそ野生のニホンイヌワシの広報大使。イヌワシの玉子ができたら寄付付き商品にして飼育環境改善に使えるように出来ないかな。」
熱い飼育スタッフの思いを実現するのも企画広報の大事な仕事のひとつです。
その思いをそのまま何とか届けたいと、さいとう製菓の総務部企画の佐藤徳政様を紹介していただき、思いのたけをぶつけました。
正直初めてお会いした時は実現するのは難しいと感じていました。とにかく様々な企画をされており多忙を極めていること、コラボしてほしいという依頼はいくらでもあって…と。それでもあきらめたら終わりなので、必死で伝えました。
「ZOOMOがリニューアルオープンする時にはニホンイヌワシをシンボル動物として、より魅力と迫力が伝わる大きな大きな展示施設にしました。新しく作ったZOOMOのロゴマークには、ニホンイヌワシのシルエットが入っています。魅力的な施設を作ったのに、実はあの展示場には問題があって…。」
佐藤さんはアゴに手をやりながら頭をフル回転させているようでした。
「そもそもニホンイヌワシは2017年時点で164ペア、そのうちの35ペアが岩手県に生息しているというのは全国的に見ても多い数なんです。確認されている営巣地は、県内の約半分の市や町で盛岡市はもちろん、さいとう製菓の本社がある大船渡市にも営巣地が確認されています。
ニホンイヌワシが数多く生息し、営巣地が確認されていることは、たくさんの多様な生き物をはぐくむ豊かな自然環境が存在しているということになります。ゆくゆくは野生のニホンイヌワシの保全に使える仕組みにして…」
佐藤さんの表情や相槌を見ながら思いをぶつけます…。
「盛岡市に野生のニホンイヌワシの営巣地があり、保全するために盛岡市と日本野鳥の会が土地を買い上げて守ってきました。県庁所在地にニホンイヌワシが営巣しているのは岩手県だけです。ニホンイヌワシを近くで見てもらうことや、飼育スタッフのガイドでニホンイヌワシの魅力だけでなく、野生のニホンイヌワシの現状と保護の必要性を20年間伝えてきました。」
とにかくその場に同席できなかった飼育スタッフに代わって思いを伝えることに必死でした。
佐藤さんは話を聞いてくださった後、「イヌワシの玉子を新商品として作るのは無理ですね…。でも…。」と翼竜の玉子のストーリーを語ってくださいました。
翼竜の玉子とイヌワシを繋げる…どうやって…今度はこちらが頭をフル回転しながら、お話をお聴きします。
お互いに話をしながら共通点、こうやってつながる?こうすれば?これから考えますか。とお話をし、最後に佐藤さんが「いや~飛んでるとこ見たんですよね~あのときは感動しました。見てほしいですよね~。あれは見てほしいです。」と言ってくださったことで、一気に壁もなくなり距離が縮まったと感じました。
その日を境にやり取りを繰り返し、翼竜の玉子を寄付付き商品として販売し、売り上げの一部を活用してニホンイヌワシの飼育環境改善につなげること、さらに共感してくださる企業や皆様と共にゆくゆくは岩手の野生のニホンイヌワシの保全につなげることを目標にしました。
佐藤様からちょうど岩手県立博物館で開催中だった「ポケモン博物館」の展示方法や見せかたについて教えていただき、見に行って知見を高め、解説パネルを作成し…と話は進んでいきました。
同時進行で飼育環境改善を具体的にどうするのかは飼育スタッフが練り上げ、工事業者さんへの連絡もし、思いを伝え見積もりを取るなどしています。
新しくできたニホンイヌワシのフライングケージの、鉄骨むき出しの巣台を野生のニホンイヌワシの巣のように擬岩で覆い魅せる展示にすること。さらに飛翔しているニホンイヌワシの姿を細かい網目越しではなくガラスを通してみてもらえるよう、加工することを目指します。
実はニホンイヌワシの展示場だけでなく、リニューアル工事の中で予算に限りがあったことから、泣く泣く削った部分がまだまだあります。飼育スタッフの思いを実現することで、より動物たちの魅力が伝わり、来園するお客様に迫力と感動を与えることができます。さらに飼育している動物たちにとってもより良い環境を提供することで、掲げている動物福祉について、しっかりと実施していくことが可能になります。
このプロジェクトは先日スタートしたのですが、すでにこの思いに共感していただき、翼竜の玉子を手に取って購入していただいたお客さまがすでに5日間で優に200人を超えています。
翼竜の玉子を通してさいとう製菓とZOOMOの双方の魅力を広く発信しながら、陸の生き物の豊かさを守るというSDGsにつなげ、野生のニホンイヌワシを守り、岩手の豊かな自然環境を感じ、故郷を愛する【心のたまご】を育てていくプロジェクトは始まったばかり。でももうすでにわくわくしています。
想いの詰まったパネルは読みごたえ抜群です。そして、このプロジェクトの進行を一緒に楽しみながら応援して頂ければと思います。進捗はもちろん、発信していきますのでお楽しみに!
企画営業広報 森敦子