見出し画像

ZOOMOのニホンツキノワグマと動物福祉への取り組み

 
当園では、現在2頭のメスのニホンツキノワグマを飼育しています。名前は”姫(ひめ)”と”リオ”です。
”姫”は甘えん坊でおてんばな性格で、胸の月の輪模様がコウモリの様な形になっているのが特徴です。


“姫”

 
一方、”リオ”は比較的穏やかでのんびりしていて、胸の月の輪模様がネックレス模様になっています。

“リオ”

 
このツキノワグマの特徴である胸の月の輪模様は、実は1頭1頭違う形をしていて、野生下のクマの個体識別にも用いられます。なかには全く模様のない個体もいるそうです。
この月の輪模様以外にも2頭を見分けるポイントはたくさんあります。表情やしぐさ、お気に入りの場所など、、、リニューアル開園後は、そんな2頭の姿にも注目していただけると嬉しいです。
 
 
そもそもニホンツキノワグマとはどんな動物でしょうか。日本にはヒグマとツキノワグマの2種類のクマが生息していますが、本州にいるのはツキノワグマです。大きくて怖いというイメージから肉食動物と思われることがありますが、本来植物や昆虫、木の実などを食べて暮らす植物質中心の雑食性の動物です。
高いところに生ったどんぐりなどを食べる際に木に登るので、下半身よりも上半身の方がしっかりしています。また、食べるものが少なくなる冬の時期は冬眠する動物です。

展示場ですごす“姫”

 
岩手県にはおよそ3000~4000頭生息しているといわれるツキノワグマですが、九州地方では既に絶滅したといわれ、四国でも確認されているのは数10頭とされています。
体の大きなツキノワグマは、生きるのにたくさんの食べ物を必要とします。そのため、ツキノワグマが多く暮らしていける環境はそれほど食べ物や自然が豊富で、たくさんの動物たちが生きていけるという証になります。
しかし、現在は多く生息している動物たちも、感染症の流行や災害などで、いつその数を減らしてしまうか分かりません。動物園では、そんな動物を研究し保護することもとても大切な役割です。
盛岡市動物公園ZOOMOでは、動物園で暮らす動物たちがより良い暮らしを送れるように様々な取り組みをしています。
 
今回はその取り組みの1つである、ハズバンダリートレーニングについてご紹介します。
動物園ではケガの治療や健康診断などの検査を行うために、動物をつかまえたり麻酔をかけることがあります。しかし、これが時には動物の体と心に大きな負担をかけてしまうことがあります。
 
もちろん、麻酔をかけなければできない治療もありますが、出来る限り無麻酔でできることを”姫”と”リオ”も増やしているところです。こちらの写真は採血トレーニング中の様子です。

自発的に柵の外に前脚を出し、そのままの状態を保つ“リオ”

 
このように、動物に自ら手を出してもらい、獣医さんに手の甲から採血をしてもらっています。
一昨年から少しずつトレーニングを重ね、昨年の10月に“姫”と“リオ”2頭とも無事採血に成功しました。動物もスタッフも怖い思いをしない・させない、お互いが安全に治療や検査を行うことが出来ます。
2頭の採血結果からは健康状態が良好だということが分かりましが、次はこの結果をもとに改善できる部分を見つけていくこと、また定期的に採血を行い病気の予防・早期発見に繋げることが目標です。
 
さらに、サインで口を開けてもらい口の中に問題がないか確認するトレーニングも同時に進めています。”姫”はサインでばっちり口を開け、そのまま維持することができるようになりました。”リオ”もあと少しです。約4か月間の冬眠期間が明けてトレーニングが再開できた時、2頭がどのくらい覚えてくれているのか今からとても楽しみで、少しドキドキしています。

開口トレーニング中の”姫”

そして、現在は体重測定のトレーニングを開始する準備もしています。動物の健康状態を把握するために体重の管理はかかせません。冬眠に向けて、秋にしっかり食べてたっぷり栄養を蓄えるニホンツキノワグマ。夏と比較してどのくらい体重が増えているのか、とても気になります。2頭が冬眠から目覚めたころ、体調を見ながら少しずつ始めていきたいと思っています。
いつも協力してくれる“姫”と“リオ”には、本当に頭が下がる思いです。ありがとう。


展示場の生い茂る緑の中で過ごす“リオ”

 
開園しましたら、ぜひツキノワグマに会いに来てください。新しくなった放飼場で、今までとは違う角度で2頭のことを見ていただけたらと思います。
 
ニホンツキノワグマ担当:河野