盛岡市動物公園ZOOMO周辺の野生動物たち~トラップカメラの記録・2024年春~
盛岡市動物公園ZOOMOは、東京ドーム8個分の敷地の中に多くの自然環境が残されており、その敷地の周りは園内の飼育動物の脱柵や園外からの野生動物の侵入に備え外周柵で囲われています。外周柵の周辺は森や林へとつながっていて、野生動物の生息場所となっています。
周辺に生息する野生動物は多種多様で、特別天然記念物であるニホンカモシカをはじめ、ニホンツキノワグマやニホンジカ、ホンドタヌキ、ホンドギツネ、ニホンアナグマ、ニホンリス、トウホクノウサギなど例を挙げればきりがないくらいの種類が暮らしています。近年では、10年ほど前まではZOOMO周辺であまり見かける機会がなかったニホンジカの個体数が増加し、さらにはニホンイノシシの目撃例も出てきています。ニホンツキノワグマについては2023年(令和5年)の6月と7月に園内への侵入があり臨時休園としましたが、ニホンツキノワグマの追い出しと電気柵などによる侵入防止対策を強化して再開園し、その後は園内へのクマの侵入は確認されていませんのでご安心ください。
現在はニホンツキノワグマの侵入対策として、園内の外周柵の数か所にトラップカメラを設置しています。トラップカメラには日常的に外周柵の外を移動する野生動物が写っており、改めて周辺環境の自然の豊かさと野生動物の現在の様子が感じられます。これからもトラップカメラに写った野生動物の様子をお知らせすることで、多くの皆様の自然への関心が高まることを期待したいと思います。
※ニホンツキノワグマも時々写りますが、園内の安全性についてはその都度確認済です。
外周柵の外側を移動するニホンカモシカです。毛並みから、冬毛が所々抜けているのがわかります。換毛は動物の健康状態に大きく左右され、健康な個体はすぐに換毛が終わります。一方で、高齢や健康状態のあまりよくない個体は換毛のタイミングがずれることや、長くかかる場合があります。
外周柵の内側のヤマドリです。ヤマドリやキジなどは、4~6月頃に藪や草むらなどの地面に巣を作ります。この頃になると、田畑や公園などの草刈り中に、草むらの中に卵があるのを発見して近くに親鳥がいないことを心配した方から、当園に問い合わせが来る時があります。鳥類は繁殖期になると卵を1日に1個産みますが、連続して毎日産卵しない場合があります。多くの鳥類は、全ての卵を産み終わってから抱卵しますので、発見された巣の卵が産卵の途中の場合や、抱卵し始めてからも常に親鳥が巣で卵を温めるわけではありませんので、近くに親鳥の姿がなくともそっとしておきましょう。
外周柵の外側のニホンジカのオスです。ニホンジカのオスの角は毎年生え変わります。角は満1才になると生え始め、最初は分岐のない1本角ですが、年を重ねるごとに角の分岐が増えて最大で4つに分岐します。つまり、4つに分岐した角を持つ個体は4才以上の個体ということになり、オスジカの年齢を知る指標になります。角の生え変わりは4月頃で、個体の年齢や栄養状態により角が落ちる時期には違いがあります。(ニホンジカのメスには角がありません。)
外周柵の外側のニホンカモシカです。まだ冬毛の為ふっくらとした体形に見えます。この場所のトラップカメラは柵に近い場所に設置しているので、動物の様子がはっきりとわかります。
外周柵の外側のニホンジカのオスです。角が落ちた部分から新しい角が生え始め、盛り上がっているのがわかります。角はこれから成長していき、7~8月には成長が止まり立派な角が完成します。
外周柵の内側を移動する野生のニホンカモシカの親子。園内には多くの野生動物が生息しており、ニホンカモシカの繁殖も確認されています。この親子は2023年に繁殖した個体です。後ろの少し小さい個体が子供です。まだ冬毛が多く残っています。
園内の野生のニホンカモシカの親子に、外周柵の外側の1頭が近寄って来ました。ニホンカモシカは単独性で、野外で見かける時はたいてい1頭です。ほとんど見る機会がありませんが、2頭でいる場合は親子か秋の繁殖期です。写真のような場面はかなりレアですが、実はこういった場面は生息地では当たり前なのかもしれません。
園内の野生のニホンカモシカがトラップカメラの前を通り過ぎたところ。
外周柵の外側のニホンカモシカが今年生まれの子供を連れていました。おそらく4月20日に撮影された個体が出産したのでしょう。これとは別に動画のデータもあるので確認しましたが、子供は元気そうに母親の近くをついて歩いていました。
外周柵の外側のホンドテンです。テンは主に夜行性ですし動作が俊敏なので、夕方とはいえ明るい時間帯に活動する姿を見る機会はそう多くありません。動画を確認したところ歩行スピードが遅く、毛並みもあまりよくないことから高齢の個体と推測できます。
外周柵の外側のニホンジカのオスです。この個体は分岐のない1本角ですので1才と推測できますが、写真だと角の様子がはっきりわからないので、これから角が落ちるのであれば、今年2本に分岐した角が生える2才ということになります。
外周柵の外側のニホンジカのオスです。だいぶ角が成長してきています。
夜間に草を食べる園内の野生のニホンカモシカの親子。
外周柵の外側のニホンジカのオスの群れです。シカは群れでいることが多く、1頭見かけると複数頭が近くにいる場合があります。角はまだ成長途中ですが、どれも体格が良く立派な個体です。
園内の野生のニホンカモシカの親子です。すっかり夏毛に生え変わっています。それにしても美しい毛並みです。
外周柵の外側を移動するニホンカモシカの親子。5月4日に別のトラップカメラで撮影された個体なのでしょうか。そうだとすれば、子供が少し成長しているように見えます。
外周柵の外側にニホンジカの親子がいました。周りを警戒しつつ草を食べていました。
園内の野生のニホンアナグマです。アナグマは主に夜行性で、巣穴を中心に生活しているので、見かける機会はそう多くありません。園内でもあまり見かける機会はなく、トラップカメラにもめったに映りません。この個体がタイミングよくカメラの前で柵の外側の様子をうかがっていたので調度良かったです。
写真だとわかりづらいですが、3頭のホンドタヌキが写っています。園内には複数のホンドタヌキが生息しており、外周柵の点検の際には柵沿いにあるタヌキのため糞を踏んでしまいそうになってしまいます。
外周柵の外側のニホンジカの親子です。6月7日撮影とは別の個体で、複数頭のメスの群れと行動を共にしていました。
外周柵の外側を移動するホンドギツネです。2024年は外周柵沿いの5か所にトラップカメラを設置しており、このポイントは動物の往来が比較的多い場所でした。実はこのポイントは、柵の外側が盛岡市の計画伐採で伐採され、その影響で動物の生息状況が変わってしまうのかと危惧していました。実際はこれまでと変わらず、日常的に動物の往来が観察出来ています。きっと、周辺の自然環境が残されているからなのでしょう。
夜間に活動する園内の野生のホンドタヌキです。ホンドタヌキは雑食で、小さな昆虫も食べます。春から夏にかけては昆虫の数が多くなり、タヌキ達の重要なタンパク源となっているのでしょう。
園内の野生のニホンカモシカの親子です。左が母親で右が子供、子供は体格的にも十分に大人サイズです。
外周柵の外側を移動するニホンジカのオスです。
外周柵の外側で柵の支柱にマーキングするニホンカモシカ。
園内の野生のホンドギツネです。夜間に動物の目が光って見えますが、これは目の中で少ない光を反射してため込むこと出来る構造になっているためです。これにより光の少ない暗闇で活動出来るのです。
園内の野生のニホンカモシカ親子とホンドギツネが近距離にいました。別の動画データで3頭の様子を確認したところ、カモシカはキツネの存在に気が付いていないようで画面右から左にゆっくり移動していました。キツネはカモシカが通り過ぎるのをじっとしてやり過ごしているように見えました。わずか5メートル程度の距離ですが、森の中ではこのように片方だけが相手の存在に気がついている場合があります。この時は夜間でしたが、森や林・藪などがある自然下では日中でもこのようなことが起こりえます。野生動物との出会いがしらの思わぬ事故を未然に防ぐためにも、登山や山菜取りなどでフィールドに出かける際は、鈴などで音を立てて人間の存在を周りの野生動物に知らせるようにしましょう。
副園長 村山淳