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ZOOMOが新たな動物病院に願うこと ~「One World-One Health」への想い~

盛岡市動物公園ZOOMO園長の辻本です。私は平成元年の開園以来、動物公園の獣医師として多くの動物たちを診療してきました。野生動物は、犬や猫、牛や馬とは異なるものが多く、その診療検査も困難な場合が多いのですが、その一方で彼らの形態や生態は不思議で興味深く、それらを考えながら動物に合った診療や野生復帰訓練などを行っていました。
その中で常に意識していたことが「One World-One Health」という考え方です。動物と人と自然環境の健康は相互に関係があり一つであるということを感じながら、飼育動物の診療のみならず、地域の野生動物の保護や保全にも取り組んできました。

アメリカバイソンの治療の様子

動物病院の仕事は病気や怪我の動物たちを診療し元気にすることです。その診療は常にレベルアップを図り、できる限りの診療ケアーを行うことはもとより、その動物がおかれた状況のなかで傷病からの回復をより進めるため、いかにQOL(生活の質)を高める工夫を施すか、これは現代的なアニマルウェルフェアというものを考えることであり、そのためには動物の本来の行動を考える必要があります。獣医師としては診療のみならず、このような動物たちの様子を見て多くの気付きがあり嬉しいことでもあります。
動物たちにより良い医療環境を提供し、アニマルウェルフェアの基本である「健康」を守ると共に、動物本来の行動を考えることは、その動物の自然環境の中での生活(生態)を考えることであり、その動物の生きている世界に思いを馳せること、そして多種多様な生物が暮らす自然生態系に思いを馳せることにつながります。

このような経験を通して我々が実現したいと考えている新たな動物病院では、「One World-One Health」を常に意識しながらアニマルウェルフェアにも配慮した診療ケアーを進める様子を見ていただくことにより、皆様が動物や自然に向き合うことの大切さに気付き実感できる場所を目指します。
動物や自然に向き合う体験は、私たちの健康や暮らしが自然環境とつながっていることを考えるきっかけとなります。動物公園の動物病院で治療されている動物たちを見て、獣医師からのお話を聞きながら、皆さんの中で新たな気持ちや自然に対するイメージが湧いてくることと思います。それは、インターネットや図鑑で目にすることとは違い、目の前で生きようとしている動物からのメッセージを受け取ることができるからです。さらに、生きることの大切さと共に、自然の中では死もおろそかにしていけないこと、つまり命そのものについて考えることにつながります。これは簡単に答えが出るものではありませんが、地球上の多種多様な生き物が共に生きるために必要なものであり、動物公園からの重要なメッセージでもあります。


野生のニホンツキノワグマ

新たな動物病院で動物たちの診療ケアーを見て、学び、自然への思いをめぐらせること、これは大きな一歩となります。そして、自分と動物たちの健康がつながっていると感じることは、実は喜ばしいことでもあります。
新たな動物病院での体験がそれぞれの人の思索につながり、自分が暮らす街の周りの山や海にいる動物たちのことをなんとなくでも意識するようになり、この地域で彼らと共に生きていることを感じられるようになること、これは自然と共生する豊かな暮らしのための大切な感覚になると私は考えています。


里山奥山のある田園地帯

岩手県、盛岡市には豊かな自然環境が残り多くの野生動植物が生息しています。その里山にある盛岡市動物公園ZOOMOだからこそ実践できることがあると考え、そのための拠点として新たな動物病院の建設と他にはない活動の実践を目指しています。
この新たな動物病院を実現するために、皆様からのご支援ご協力をお願い申し上げます。
自然や動物と共生する意識と喜びを多くの方々に感じてもらえるようにするため、どうぞよろしくお願いいたします。

盛岡市動物公園ZOOMO園長 辻本恒徳