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パナマの実業家、レゲトンで大統領選挙キャンペーン

私が住んでいた中南米のパナマは、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸の境に位置していて、この地理的な利点パナマ運河が作られ国が潤っている。

トクメン国際空港は、各地からの航空路線が集中するハブ空港なので、旅行にもすごく便利。パナマのコパ航空は、74都市に就航していて北米、中米、南米に大きなネットワークを持っている。

コパのホームページを見ていたら、パナマからマイアミで往復189ドル(約2万円強)があった。安っ!ちなみにコパのサービスは、中南米の他の航空会社と比べると良い方だと思う。(単純に他がヤバすぎる)

コパ航空とパナマの実業家

このコパ航空は、Copa Holdings, S.A.(コパ ホールディングス)が母体となるが、代表取締役はStanley Motta(スタンリー・モッタ)。彼はパナマの実業家で、経済雑誌などで中南米の富豪の一人として紹介されている。

中南米の空港20カ国以上に展開する免税店、通信、港、銀行、酒屋などモッタグループの展開するビジネスは数知れず。興味深いのは、モッタがユダヤ系という点。

スタンリーの祖父は、パナマ地峡の最初の発電所を建設する電気技師としてジャマイカからパナマに移民した。パナマでは、モッタはユダヤ系として知られているが何故か検索しても出てこない…。隠しているのか?

かなり探してみたところ、参考になる文献を発見。祖父が、ユダヤ系アメリカ人だったようだ。しかも祖父は息子(スタンリーの父)が8歳の時に亡くなっていて、伝統的な上流階級の家庭ではなかった。

気になってスタンリーモッタについて調べてみた。モッタは前パナマの大統領 Juan Carlos Valera (フアン・カルロス・バレラ)の重要な選挙キャンペーンの寄付者だったらしい。

そして、モッタはバレラ政権時に影響力のある人物だったので、コパ航空の元幹部をパナマのトクメン国際空港のゼネラルマネージャーに任命。別事業の保険会社や自分が株主である石油会社(デルタ)と国の間で契約を交わしたり、ビジネスと政治が絡んだ暗躍が色々あったようだ。

写真の建物は、前大統領のバレラが住んでいた
中心地にあるインターコンチネンタルホテル。

モッタを検索したら、コパ航空がアメリカのボーイングから飛行機を購入という内容で、モッタと前大統領のバレラオバマ前大統領が一緒に映っている写真が出てきた。お金と権力の匂いがプンプンする!

長くなるので今回は書かないけど、パナマの政治家にはよくある話

パナマの選挙キャンペーン

今のパナマの大統領は、Laurentino Cortizo Cohen(ラウンレンティノ・コルティソ・コーエン)。相性はNito(ニト)で2019年に大統領に就任した。
この時の選挙キャンペーンが衝撃的だった。候補者は7人で、キャンペーン内容を見ると明らかにそれぞれの資金レベルが分かる。

パナマ人の友達に「キャンペーンに使うお金の額が凄そうだね!」と言うと、「いっぱいお金を使って、大統領になってから取り戻すよ」と皮肉を言っていた。
前大統領のバレラに汚職スキャンダルがあったので、候補者の多くは、「汚職のないクリーンな政治」をアピール。

キャンペーン中、圧倒的に目立っていたのは、ニト。ある日、私の住んでいた隣のアパートに彼の写真入りの横断幕が垂れ下がっていた。パナマの中心地のメインストリートに面しているので、車から運転していても目に入ってくる特大サイズ。

この顔を見て思った。「66歳なのに肌ツルツルじゃない?ボトックス?」この日から私の彼のイメージは、整形顔のおじさん。ナチュラルでこの肌を保っていたら凄い。まぁ、どうでも良い話だが…。

そして選挙キャンペーン中は、インスタグラムに彼が田舎の地域を訪れて、胡散臭く子供に笑いかけているようなビデオがランダムに出てきた。有力候補者であったRómulo Roux(ロムロ・ルークス)の宣伝も。

何というか、映像がわざとらしい。映画みたいで笑ってしまう。スペイン語になるが、気になる人には見て欲しい。

現大統領ニト

ニトに負けたロムロの娘が歌う応援ソング

ビデオを見て思ったが、彼らの家族を含め全員が典型的なパナマ人顔ではない。明らかにお金持ち顔だ。どちらもアメリカの大学を出ている。
ニトの父親は、スペイン人。母親は、ギリシャユダヤ系のパナマ人。ロムロは、前大統領バレラの従兄弟である。

ちなみに一般的なパナマ顔は写真のような感じ。混血が多く、スペイン植民地時代にやってきた黒人奴隷、パナマ鉄道運河建設でやってきた中国人などのアジア系、スペイン、イギリスなどのヨーロッパ系の混血など様々。センターの男性は、先住民のクナ族。

レゲトン応援ソング

この選挙キャペーンで一番衝撃的だったのは、レゲトンミュージックだ。

ある日、仕事を終えて徒歩で家に帰っていた。大通りで信号待ちをしていたら、なんだか道路が渋滞していて騒がしい。同じTシャツを着た若者が、赤信号になった途端道路に出てきて何か配っている。

そして、車の大音量のスピーカーから流れる音楽。全部は聞き取れないが、今でも耳に残って忘れないフレーズ「ニート!ニート!

そう。彼らは、大統領候補者のニトの支持者。と言うか、いかにもバイトで働いている感じの学生。最初は、なんかのお祭りかと思ったがまさかの選挙キャンペーンだった。日本だったら、確実にクレームものだ。

あのレゲトンソングを紹介したくて探してみたら、Youtubeで出てきた。改めて聞くと笑える。ツッコミどころ満載。

Mr. Saikというアーティストの曲で、タイトルは、「Yo voy a Nito, Casilla 1」意訳すると、「選挙区1番のニトに投票するぜ」的な感じ。

ビデオのチープ感がすごい。注目すべきは、ちゃんと韻を踏んでいるところ。全てニトの語尾 to=トになっている。逆にこの韻踏みが、ダサい笑。

エルマニート(Hermanito)兄弟という意味。ブラザー的な。
ディスティント(Distinto) 異なった、違った。
マス ボニート(Mas bonito)さらに素敵な。

歌詞の内容は、みんなで協力して変化が必要だ。文化やスポーツ、教育の大事さ、家族の将来性など。選挙区1のニトに入れておけば間違いない的な。ラップ調なので、説得力が更に無い。しかも驚くことに、このしょぼMVがニトの公式Youtubeに登録されている。

想像して欲しい。これが菅さんの横断幕が高層マンションから掲げられ、選挙カーから韻を踏んだ菅さんの名前のラップが流れるのを…。もはやジョークである。

そして何と言っても凄いのは、ニトが当選したことだろう。道路であの光景を目にした時は、「日本だったら絶対にあり得ない。ラテンの選挙って真剣味が無い」なんて思っていたけれど。

家に帰って、キャンペーンで貰った物を確認したら、ニトのロゴ入りのスマホリングだった。「こんなん使ってたら、気持ち悪いでしょ」って思ったけど、アクセサリー収納棚にペタッと貼ったら、ヘアゴム掛けになってちょうど良かったので使うことにした笑

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