中南米パナマのユダヤ人コミュニティー
前回、パナマのユダヤ系実業家の話を書いたが、今回はパナマのユダヤ人について、私のリサーチや実際に見聞きしたことについて書いてみたい。
パナマには、ユダヤ人コミュニティーがある。ヘブライ大学の2016年の統計によるとパナマに住むユダヤ人の人口は、1万〜1万2千人。コミュニティーは、パナマでも土地が高い中心地に集中している。
そして、パナマの経済はユダヤ人が握っているとも言われている。(最近は中国系も勢いがあると思うけど)これを感じるのが、ユダヤ人の祝日の時。パナマの祝日ではないにも関わらず、ユダヤ系のお店が全部閉まってしまう。
普段賑わっている大型のショッピングモールのお店もほとんど開いていないので、いかにユダヤ人ビジネスが多いかが分かる。
パナマの高級ショッピングモールの普段の様子。パナマ人はショッピングモールが大好き。クーラーが効いていて涼しい、というか日本人的には寒すぎる。
謎な人々
ユダヤ人は日曜日は歩いて礼拝に行くので、ユダヤの帽子やスーツ、独特な髪型をしたユダヤ教徒をよく道で目にした。しばらく気づかなかったが、私の近所にシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)があったからだ。
ある日、通りを歩いていると、近くのアパートからユダヤ人がぞろぞろ出てきた。このアパートは、入り口に大きなゲートがあって中がよく見えないので、今まで気に留めたことがなかった。
しかし、ユダヤ人を見た日から気になって、アパートの目の前を通った時に注意深く見ているとあることに気づいた。「建物のデザインが変わっている。まるでダビデの星みたい!きっとユダヤ人しか住めないアパートなんだ」と色々と想像が膨らむ。
実は、その前からユダヤ人には興味を持っていた。仕事を一緒にしたパナマ人ドライバーから「パナマには、ユダヤ人の安息日に各階で自動でエスカレーターが止まって、扉が開閉するアパートがあるらしい。」
「何故かと言うと、安息日は電気の作動が禁止されていて、ボタンに触れられないから」という話を聞いた。
カナダのトロントに住んでいる時は、これまた近所にユダヤ人の住宅街があったので、休みの日に歩いて見に行ったことがある。超高級住宅街で、家のスケールが凄いので見るだけで結構面白い。
さらに、トロントで働いていた時の同僚にユダヤ系の病院で働いた経験がある子がいて、その子の話が印象に残っている。ユダヤ教は食事の戒律が厳しく、電子レンジNG、肉の処置にも決まりがあるなど食事の準備が大変らしい。
こんな経緯でユダヤ教のことが一時期気になったので、調べてみると「ユダヤの陰謀説」なんかも出てきて、ますます私にとってはミステリーな人々と宗教になった。
こうやって書くと、妄想が膨らんで少しヤバい女な感じがするので、ダビデの星のアパート疑惑を解決してみることにした。
「こういう時は、Google earthが便利。上空から確認してみよう!きっとダビデの星に見えるはず」って、ますます怪しい!?
結果…...。分からなかった!!笑 通りから見ると、上の写真のような外観なんだけど、ダビデ星に見えない? ちなみにユダヤに関する写真が無かったので、見出し画像のダビデ星は自分でデザインしてみた笑
ところで、今までアパートと書いてきたけど、パナマではスペイン語でApartamento(アパルタメント)と言い、日本人がイメージするアパートではなくて、高層のラグジュアリーなアパートである。
Kosher food ユダヤ系スーパーマーケット
パナマの一部の地域には、Kosher(コーシャ)のスーパーマーケットがある。コーシャフードとは、ユダヤ教の食事法に従う食品である。
何も知らずにこのスーパーに行った時の話しをしたい。ある日、私の近所のショッピングモールにスーパーがあると言う情報を聞きつけた。なぜ今まで気づかなかったんだ?
早速、中国人の友人と金曜日の仕事終わりに寄ってみた。が閉まっていた...。店の扉に営業時間が書いてあるんだけど、変な営業時間帯。
金曜日の夕方から閉店、土曜日も閉店で日曜日はオープン。
普通、休みの日に買い物行くし、1番行きたい時間帯じゃん!
近くの警備員に聞いてみたら、知らない単語ばかり出てきて良く分からない。「何買いたいの?」って聞かれたので、「パンとか卵とか」って言うと、「そういうのは無い」って言われ訳が分からなかった。
お店の中は見えないけど、かなり大きそうだし、家から近いし行ってみたい!ってことで、後日再チャレンジ。
そして気づいた。ここは、コーシャを扱うスーパーだったのだ。お店にはユダヤ人が多いし、パナマのスーパーでは見ないヘブライ語?で書かれた食品が並んでいる。
何の商品か分からない物も多いし、期待していたほど惹かれる物はなかったが、肉や魚が凄くキレイだったので試しにひき肉を買ってみた。
早速ひき肉を使ってチリビーンズを作ってみたところ、なぜかしょっぱく仕上がって、美味しくできずにショック...。同じ肉で他の物を作ったけど、その時も出来上がりがしょっぱいし肉の風味がない。何かがおかしい!
これは肉に問題ありじゃない?と思って、コーシャの肉について調べてみた。
「ユダヤ教では血液を口に入れることを禁じています。血抜きをする為に、肉を塩で覆い長時間置きます。」
これだ!しょっぱかった原因は。ユダヤの食事戒律について調べてみると、豚や甲殻類はNG。屠殺の方法に決まりがあったり、乳製品と肉を一緒に食べてはいけないなど細かな制限がある。例えばチーズハンバーガーとか鶏肉入りのクリームシチューとか。
そうだ、以前レストランでパスタを頼んだ時に粉チーズを頼んだら「ここはユダヤのレストランなので、チーズは無い」と言われ特に気にしなかったけど、今思えばコーシャレストランだったからだ。
そして、スーパーの営業時間の謎も解けた。ユダヤ教の教えでは、金曜日の日没から土曜の日没は安息日にあたるのでお店が閉まる。イスラエルでは、公共の交通機関も止まってしまうらしい。厳格なユダヤ教徒は、携帯の使用や車の運転もしない。
海外に暮らしていて面白いと思うのは、こういうことだと思う。日本にいたら日常では体験しないような出来事があって、それをきっかけに他の国の文化や習慣について考えたり知ることがある。
私は海外で暮らしてから、何かを知りたいという「探究心」のレベルがすごく上がった。分からなかったら、とりあえず何でも調べてみる。職業柄、ガイドをすることがあるのでこれも理由の一つにあるが。
ユダヤ教の聖地であるイスラエルにいつか行ってみたい。日本に帰国してから、観光でお寺や神社に行くことが多くなり「仏教や神道」について何も知らないと感じた。
私は無宗教だが、外国の友達に日本の宗教について質問されても、答えられず恥ずかしいと思ったことがある。宗教は国の文化や歴史を知る上で、切り離せないテーマだと思うので勉強して視野をもっと広げてみたい。