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スーパーマーケットの買い物体験を変化させ、ニューリテールの形を考える。その2(アイデア編)

 はじめに、このnoteで伝えたいことは、

ニューリテール(新小売)は、サプライヤー(生産)の形も変化させる。

ということである。日常は農業者という生産者サイドに立つ自分だからこそ思う課題とそれに対する仮説のアイデアを書いていこうと思う。数日前に、スーパーマーケットの買い物体験ってよく昔からある大型店や路面店の出店の形から変わっていないよね、消費の形はもっと多様に変化していくにも関わらず、その動きが遅い。という内容のnoteを書きました。お時間があればその1も是非読んでみてください。

前回の内容:これから「どこで買うか?」は関係なくなる

 上のnoteの最後に書いたのは、これからの食材小売の形は、単なる種類豊富な商品(食品)を取り揃えた大きな箱で買う、つまり「どこで買うか?」ではなく、その食材を「誰から買うのか?」が主流になってくるのだろうと述べた。しかし現状、スーパーにいくと誰から商品を買っているのか分かりづらいはずだ。棚に陳列された野菜のパッケージに載っている生産者の顔は、消費者にとっては「生産者の顔が見えるシール」なだけであって、生産者の向こう側ではない。最後の伝え方がイマイチなために一生懸命育てた野菜が鮮度が落ちた状態で、単に安いから、と購入していくことが悲しい。それでは、農家や小売側もハッピーになるにはどうしたらよいか?

食材を買う場所はスーパーやコンビニだけではない?

 小売や消費の変化が農業や漁業等の一次生産の形も大きく変えると考えているが、その生産の形を変えるにはエンドユーザーに生鮮食品が届くまでのチャネルを変化、つまり豊富にしたほうがいいと思っていて、そちらのほうが生産者は需要が見えやすいので変える意思決定をしやすい。より多くの販売チャネルを持っていればいるほど農家の売上は安定するし、お客さんも自由に選びやすい。
 今は大きく分けてオフラインのスーパーマーケットやコンビニ(主に加工品)、オンラインでは生鮮食品EC関連のサービス(SEND、ポケマル、そして食べチョク等)があり、食材のオンラインマーケットプレイスは送料代の高さや鮮度を保ったままエンドに届けるプロセスに課題が残る。オフラインでの食材の購入場所はだいたいスーパーやコンビニが2強を占めるが、実はもう一つ食材や食品を買える場所がある、それはあなたが住んでいる場所のご近所の個人経営の飲食店である。飲食店は、文字通り料理を作り、それをサーブしてサービスとしての対価を受け取るので当然調理をする。そのために卸業者から食材を仕入れる流れはどこでも一般的である。この仕入れる野菜の量を増やし、持ち帰りやすい中食対応や余りの野菜は物販(=つまり八百屋)として売ればよいのでは?と考えた。

食材を売るという行為はブランディングになる

 上記で述べたアイデアは、単に野菜を少し多く仕入れて余りを売る作業ではなく、ブランディングだと思っている。なぜ飲食店で野菜を売る構想に至ったかというと、飲食店を個人で経営しているある知人と話している時に、「地元の野菜で調理したい、そして近所の意識が高めな層にもう少しアプローチして来店してほしいが、どうすればいいか思い浮かばない。」という悩みを聞いたからだった。飲食店が狙った層にアプローチする方法は
①ビラを配る
②一度は来店して食事をしてもらう
③SNSで発信する
くらいが関の山である。そこで話していた際に、その狙った層にお店にきてもらう導線をもう一つ作ったらおもしろそうだ、と行き着いたのが「個人経営の飲食店が八百屋にもなる」モデルだった。これは八百屋の機能を使って飲食店がブランディングをおこなうことに本質がある。

地元で採れたニンジンをお客さんに手渡しで販売し、家庭でも簡単に作れてお子さんも美味しく食べられるキャロットラペをおすすめする。上手くできなかったら今度でいいから食べにきてね~!

ここでは単にニンジンを売っているのではなく、コミュニケーションを通して、「次回ご来店のご招待状+お店のスタイル+ニンジン」を売っているのである。
 現状、八百屋になるために必要なライセンスは必要なく、いつでもどこでも飲食店はマルシェを開催できる資格はあるようだ。(どこでもマルシェと勝手に命名。笑)飲食店だけに多くのメリットがあるように思えるかもしれないが、これは生産者(農家)にとってのブランディングにもなるし、消費者にはより豊かな食生活やライフスタイルをもたらしてくれる。

飲食店が八百屋にもなる、どこでもマルシェモデル

飲食店側から見たメリット

・お店のスタイルと共にターゲットに合った新鮮な野菜を買える
・来店理由の新しい導線により普段来ないお客さんの来店可能性がUP
・飲食店にとっては副収入(スペースに依るが約10〜30万/月を想定)
・お店は調理と販売のため共通の食材を多く仕入れることで単価が安くなる(余れば売ればよい、という選択肢が安心させてくれる)
・既存も新規も含めてお客さんとのコミュニケーションが増える
・購入する食材の良さは、お店の味のイメージに直結しやすい
(お店でお客さんが買う食材は、新鮮であればあるほど、味が良いほど調理する飲食店に大きな信頼をもたらす。これだけ新鮮な食材を使っているのだからもれなくあなたの作る料理も美味しい。と思ってもらえるかもしれない。

生産者側から見たメリット

・規格外も全て平等に扱うためロス少なく飲食店に卸せる
・中規模ロットで飲食店にダイレクトに卸せる
・サイズ別に作物を選別する手間が省ける
・作物を作った後の販売マーケティングを飲食店に任せられる
・個人取引も視野に入る(BtoC向け)消費者から見たメリット

消費者から見たメリット

・スーパーやコンビニでは買えない地元の新鮮な食材を近所で買える
・料理のプロから食材の扱い方やちょこっとレシピ→情報の付加価値
・新しい買い物体験
・自分だけのマルシェがご近所にできる。
・欲しい食材はアプリで注文→買い物の手間を省く→帰り道にピックアップ
・キッチンすらもその手のプロに任せるライフスタイル→料理の趣味化


参考モデル:旬八青果店

 上記アイデアをまとめると、ここでの小売の定義(食材が買える場所)をスーパーマーケットやコンビニという固定された場所ではなく、あなたのご近所にある個人経営の飲食店を、もう一つの販売チャネルとして提唱した。このチャネルだと農家さんは地元の飲食店に多いロットで卸せることで売上増加、時間コストの削減へ繋げることができる。飲食店は仕入れの延長線上で多くの仕入れを行い、差分はマルシェモデルとして販売することでブランディングの差別化を行える。ユーザーはご近所の親しみのあるお店がスーパーになる新しい消費の形を体験できる。
 実はビジネスモデルとして参考にしたのは旬八青果店である。下にミッション図を挙げているが、真ん中のB&C品を一括で買い取り都内に散らばる旬八青果店でブランドとして販売しているのが旬八青果である一方で、「どこでもマルシェ」はB&C品をお店のプロのシェフたちがアンバサダー・インフルエンサーとなって販売するモデルである。料理の道のプロが薦める食材は美味しく聞こえるかもしれない。しかもちょっとした調理方法も教えてくれるかもしれない。実際にハードを持たないので急速なスピードでの展開が可能である。飲食店は普段の仕入れ量より少し多く仕入れれば良いので簡単にスタートできるメリットもある。販売に関するアイテム(棚や値札や決済方法)は運営から無償で提供する。

(https://ascii.jp/elem/000/001/167/1167819/)

考えられるデメリット

メリットしか羅列していないが、これが上手くいかないとすれば
 お店のデメリット
・飲食店側に物販をする時間や余裕がない
・微々たる副収入だとモチベにならない
・お客さんがお店に食べにきてくれないかもしれない
 農家のデメリット
・そんなに細かく注文に対応した発送ができない
・単にめんどくさい(梱包とか)
・そんなに稼げない(ビジネスモデルの問題)
 お客さんのデメリット
・別にスーパーでの買い物で事足りる
・お店にいくと何か食べないといけない気になって気が引ける
・近所に住んでいることを知られたくない
・なんだかお店の人と話すのが面倒くさい

ざっとこんなところだろうか。失敗に至る根本的な原因は単にヒアリング不足から起こるニーズの取り間違いか、マクロ的な視点でしか見ていないがために需要と供給を繋げただけの自己満ビジネスモデルだと思っています。

現状、ヒアリング不足が甚だしいので、どなたかご意見をお聞かせください!もしくは協力頂ける飲食店さんも募集中です!

リテールを変えることは、農業を変えること

農家さんが作ったものはだいたいは農協を通って、多くの中間業者を介しながら最後にスーパーという場所にやってくる。自然環境にも左右されやすい農業における大事な成果物が、現状のプライシングや見せ方(ビジュアル)、伝え方により正当に評価できていないのであればそれはすごく悲しいことである。私はもともとオランダで見てきた最先端の農法を実践しながら広めようと活動していた背景もあり、生産者サイドに立つことを決めた。それは今もこれからも変わらずだと思う。今は農家さんのためのウェブサービスの開発を進め、コミュニティ作りに奔走しています。(こちらも知ってほしいんですが本稿の趣旨とズレるので止めておきます、もしご興味があれば一番下に下記にリンク貼っておくので覗いてみてください。)

さいごに

長々と書いてしまい、駄文が過ぎてしまったが、伝えたいことは最初に立ち返る。

ニューリテール(新小売)は、サプライヤー(生産)の形も変化させる。

この一言に集約される。農家も店も消費者も、みんなWinでいきたいし、みんなが幸せになる方法は生産サイドの意識も変化する必要があるし、その最終成果物を享受する消費者の意識や購入方法も変化せねば、双方にとって良い状況は生まれないだろう。生産者側のポジションにいながらも新しい道への橋渡しのような存在を目指して。


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