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農業と工業を掛け合わせた生産の仕組み作り

2019年末から世界中で猛威を振るうコロナウイルスによる経済打撃はいつまで続くのか見通しが立っていない。アフターコロナの世界がどうなるかの世の論調はさておき、このような世の情勢の煽りは地方も受けている。今回中心に話す農業分野においてもこれまで台風などの気候変動という天災に加えて、今年からは「疫病」の項目が加わった形なだけであって、これから懸念する点は本質的には変わらない。今後、これらの変数を常に念頭に置いた仕組みを作る必要がある。

工業分野は多岐にわたるが、地方における製品加工業の多くは内需によって支えられているため人口減少による需要の更なる低下により難しい、そして中長期の目線で金属などの「素材」自体の価値が世界で受け入れられているかどうかは疑問が残る。車の部品一つを例にとっても、自動運転の技術が進むにつれて車体の軽量化、つまりは部品の軽量化・効率化により原材料の代替が起こる可能性もある。そこで、新しい軸をつくる必要があるのでは、と思い立った。

工業と農業の掛け合わせで「素材」を作るファクトリー型生産

工業と農業分野を掛け合わせ、気候変動等の変数を限りなく少なくした状態での原材料や素材の生産が可能となるファクトリーを構築すべきだと考える。地方の農業の主はコメ(一つの例として)であるが、コメの消費量の低下や農家の労働人口現象に伴う、素材(原材料)も人という点も工業分野同様の課題を抱える。農業は国の食料自給を支える産業であるがゆえ、空腹を満たすという需要が無くなることはないし、人口が数百万人とかにならない限り、全てを輸入に依存する選択肢を取らない限り、起こらないだろう。

加えて昨今の情勢を考慮しても自国で食料を生産できることの優位性は高まっている。一方で日本は台風などの天災を被りやすい地理的条件もあり、地域によっては川の氾濫の脅威に悩まされてきた歴史的背景もあるだろう。そこで、長期的な目標として工業技術を活用し、これまでの露地栽培とは異なるアプローチで、ファクトリー型の栽培を目指す。ここでいう「ファクトリー」は植物工場に代表されるような閉鎖型の環境空間ではなく、「台風、干ばつ、異常な寒暖差、そして疫病による消費行動の変化のようなリスク要素を限りなく少なくした空間」であると定義しているので必ずしも四方が壁に囲まれた密閉空間かどうかは検討する必要がある。

何を栽培するかを選べる生産

露地栽培では土壌の条件や土地の気候によって栽培品目が限られてくるが、ファクトリー型の生産を実現できれば、ある品目を安定的に生産することが可能になる。ある瞬間ではコメが求められるかもしれないが、ある時は綿花が必要なケースも出てくるだろう。アメリカからの輸入量が減り北海道でトウモロコシを生産開始する例をみても、需要に応えられる生産体制を作って行く必要がある。この仕組み作りには多くの資源を要するが、工業の領域を組み合わせることで最適なリソースを配分できる。まずは小さな設備から始め、新しく作るより現状持ちうる部品などを組み合わせプロトタイプを作ることが可能である。幸いにも日本は長きにわたり分業制を組織の中で取り入れてきたので部品の調達は一つの地域内で揃えられるかもしれない。

ファクトリー設備を外へ販売

自地域内で消費と生産をすることも可能だが、全ての生産を代替できるわけではない。露地生産も植物工場も継続して生産は続いていく。ファクトリー型の生産設備をサービス化させるほうが売上としても大きくなる。設備の受注を受け、そして栽培管理のマネジメントは別会社で受けることができれば多くのデータを持ち、域外、海外での受注も可能となる。求められるスペースによって設備構築を可能にするのにデータは不可欠。コワーキングスペースを提供するWeworkは一つの空間をWe仕様にデザインでき、通常の建築事務所より半年も早く空間を設計できたが、あれは初期に世界中のオフィス空間を技術でデータ化し、どのくらいの工期でどれほどのコストがかかるのかを素早く提示できたことが拡大の背景にある。スペースによって最適な生産設備の規模、部品の数やコストをはじき出すことができれば需要拡大に繋がる。

課題は誰がするのか、と実現するタイミング

一次産業で起業する人を増やさなければならない。しかし現状とここで提示するアイデアでは現場の考え方が大きく乖離している。なぜなら日本はその土地で食料を生産することを重んじてきた背景がある。簡単に変えることは難しいだろう。全国的に農業で大きく稼げることはなく、先行で何か技術に投資をする農家は、よほど必要でない限り少ないだろう。まして全く別軸での生産方法ともなれば不信感はあるし、当然ソリューションを提示したところで現場に受け入れられるまで時間を要するだろう。現状を良くするものではなく、農家の考え方の異なる方向性を提案し信用を得るまでに時間を要する思う。農業という分野で起業するのは定年を迎えたマネジメント層なのかもしれない、という思惑はある。60歳前後は農業界でいえば若手だ。

参考資料

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食の安定供給 カギ握る意外な作物として原料のトウモロコシ


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