クマは20年飼っていてもウソをつく
先日、20年飼育していた
ツキノワグマに襲われてしまう
悲しい事故があった。
ここで
問題に思うのは、
事故を起こしたクマが
外に出てしまったこと。
事故に遭われた方のご冥福をお祈りいたします。
この方がどのように飼育していたのか
わからないが、
小さく、可愛かった子グマの時から
飼育していたのだろう。
大きくなった今でも
毎日何事もなく
ゴハンをあげ、掃除をしていた
のだろう。
当たり前の毎日なのに
事故はなぜ起こったのだろう?
飼育している現場を
見ていないので、
推測するしか無いけれど
その日、その時、その瞬間に限って
それまで何の攻撃的なそぶりを
見せて来なかった動物たちが、
突然攻撃してくる。
野生動物を飼育していると
こういうことはままある。
本当は動物の側から
発信されているサイン、
これまでとは違う、
いつもとは違う何か、
それは行動や仕草に
現れているものなのだが、
それを見抜けないことで
事故が起こる。
今回の事故の話をニュースで見て
俺は、
あー、やってしまったなぁ
と俺自身が昔体験した
事故のことを思い出した。
昔、動物園で
クマの担当をしている時、
日本のツキノワグマと近い種類の
ヒマラヤグマというクマを
飼育していた俺は、
このクマに、
指を齧られてしまうという
事故を起こした。
動物に怪我をさせられる事故を
起こすことは
飼育員にとっては
絶対にあってはならないことだ。
その日は檻の修理の為
一日中寝部屋にいて
工事の音や振動で
クマはいつもの落ち着きを失くしていた。
俺は彼に声をかけて
絶対にしてはならないことなのだが、
檻の隙間から指で頭を掻いていた。
しばらくして、
彼の目がイタズラっぽく変わった瞬間
俺の指に噛みついた。
しまった!
と思った時には
事故は起こっていた。
本当に恥ずかしい話だ
この時、自分は大丈夫という
過信があったことで
安全に対する意識が薄くなっていたこと、
それとクマの表情を読めなかったこと。
特にツキノワグマや黒いクマは
顔の表情が読みにくい。
今回の事故のニュースを見て
かつての自分の甘さを
思い出したよ。
動物たちを扱ううえで大事なことは
まずは
〇最悪の状況を常にイメージし、
安全を第一に常に行動すること。
〇安全のための決まりを厳守すること。
〇自分を過信しないこと。
〇いつも同じ作業をしている中で
慢心しないこと。
そして
動物の行動、仕草、表情を、
常に観察して、理解することが
事故を起こさないことや、
幸せな動物たちとの
暮らしを続けることになる。
動物による悲しい事故が
二度と起きないことを
心より願い、
自分への戒めとして
今日の投稿としたい。