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おもちゃとの別れを通して子どもが大人になる瞬間を描いた『トイ・ストーリー3』
美しい映像の中、個性豊かなキャラクターたちが生き生きと動き回るのが楽しく、笑いのセンスも良し。
そして、何より、子ども時代との別れの寂しさと切なさを凝縮したラストが爽やかな感動を呼び起こします。
■美しい映像とキャラクターの活力
もう何年も前ですが、この映画を観る前、私はあまり3Dに良い印象をもってはいませんでした。
ですが、この『トイ・ストーリー3』身を観て、初めてその良さを、初めて理解させられました。
不自然に一部だけ浮き出すのではなく、
映像全体を立体的に見せる、つまり画面の中に奥行きが作り出されるのです。
そして、観ているうちに3Dであることを忘れてしまう。
それくらい自然な映像でした。
画面も、他の映画と違って明るくて観やすいのがGOOD。
3Dにするのであれば、きちんとこういう風に撮ってほしい、そう思わされました。
その3D映像のおかげで、キャラクターたちはより生き生きとしてきます。
彼ら自身が3Dなので、より立体的に、要はちゃんと背景よりも前面にいるように見える。
だからこそ、その動きがリアリティを増すのです。
そうして、より活力を増したキャラクターたちの冒険に観客はさらに惹きつけられ、
進んでいくストーリーにどっぷりと感情移入できます。
笑いのセンスも抜群です。
このシリーズが持っているパロディの味を生かし、バービーとケンのロマンスを作りあげたり、
バズにスパニッシュダンスを躍らせたり、観ていてとても楽しいです。
でも、決してやりすぎない。どのくらいが楽しめる範囲かをきちんと理解しています。
こういうエンターテインメント性はサマームービーには欠かせない要素です。
■大人になる瞬間の心の震え
何より素晴らしいのが、子どもが大人になる瞬間の寂しさと切なさを捉えているところです。
持ち主であるアンディがおもちゃと別れる。
その瞬間の心の震えをしっかりと描き出すことで、
誰もが何らかの形で経験したことのある子ども時代との別れの切なさを、観客の内に思い出させているのです。
ラストで、おもちゃで遊ぶアンディの姿を映し出すところが、 また上手く切なさを最高潮にもっていき、同時に美しい青空の下で感動に近いものを引起す。
「大人になってもずっと一緒」などという陳腐な夢に走ることなく、
誰にでも訪れる成長と別れを描く誠実さが、この映画を秀作としているのです。