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21世紀の有望産業としての保険

『保険業は世界最大の産業となる』

という言葉をご存知でしょうか。これは、欧州最高の知性の1人として名高いジャック・アタリ氏の代表作の1つである『21世紀の歴史』の一節です。

将来有望な産業を二つ挙げると、保険業と娯楽産業である。この二つの産業は、すでに世界経済を支配しており、今後、さらに躍進する。
保険業について。市場関係者のリスクを回避するための合理的な対応とは、保険に加入することであり(すでに彼らは加入している)、すなわち、これは将来の災いから身を守ることを意味する。保険会社(そして金融市場のリスクをカバーする機関)は、国家の社会保障の補完的役割を担う。そして総売上高と経常利益の観点から、(保険業がまだ世界最大の産業となっていない場合)保険業は世界最大の産業となる。最底辺の人々には、マイクロ保険が不確実性を削減するための主要な手段となる。

『21世紀の歴史』は21世紀が今後の人類の歴史においてどのような立ち位置となるか大胆に予想した作品です。
『保険業は世界最大の産業となる』といえる理由が気になるところです。いったい、ジャック・アタリ氏は21世紀に何が起きると予想して保険業が成長すると語っているのでしょうか。


なぜ保険が21世紀の有望産業だと予想したのか

保険業が成長するというジャック・アタリ氏の予想する背景には、社会保障を提供する国家が弱体化するという予想があります。

21世紀は、これまで文化や科学技術の発展を担ってきたクリエイター階級(注1)がノマド化(注2)することによって中心都市が弱体化し、それに伴って国家の影響力が弱まる。
国家が衰退することによって個人は最低限度の生活の保障を国家に頼ることができなくなり、リスクのカバーを保険会社に頼る傾向が強くなる。
結果的に保険は21世紀に成長を遂げる。

これが『21世紀の歴史』におけるジャック・アタリ氏の論旨です。
では、現時点で本当に保険は21世紀の有望産業と呼ぶにふさわしい成長を遂げているのでしょうか。
また、保険会社は変化する環境に適応することができているのでしょうか。
本記事とその続編では、社会の変化に適応して保険業界全体がどのように変化しているか、また、今後の保険業界が目指すべきポジションについて考察します。

(注1)時代の文化や技術を担う都市(中心都市)に集まる才能ある人たち
(注2)定住することなく、様々な地域を移り住むようになること


日本における保険の市場規模と社会保障予算

日本における保険業界の市場規模は生損保合計で40兆円以上になります。また、国家予算のうち社会保障(教育・医療ふくむ)が占める金額は2020年で35兆円以上です。
単純に足し算というわけにはいきませんが、社会保障の機能を保険会社が補完するようになった場合、相当な市場規模の拡大が見込まれます。

【参考】国内の業界別市場規模
https://visualizing.info/cr/market-size-map/domestic/

【参考】2020年度の社会保障予算を分析する(ニッセイ基礎研究所)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63367&pno=2&more=1


変化を求められる保険会社と保険代理店

保険業界は将来的に今より大きな地位を獲得する可能性がある一方で、変化が求められていることも確かです。
次回は以下のテーマで保険会社の変化について考えていくことにします。

保険会社の変化
・査定や給付などのコア業務のデジタル化
・契約者(個人/法人 両方)のリアルタイムでのデータ取得
・保険のオンデマンド化

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