ニンジャスレイヤーTRPGソロシナリオ『モータルの智、ニンジャの暴』
はじめに
ドーモ、シニゾコナイザーと申します。この記事は、ニンジャスレイヤーTRPGのソロシナリオです。
このシナリオは拙作の別シナリオの続編に位置付けられており、基本は下記の前編をプレイしていただくと分かりやすいですが、内容を改変すればこのシナリオから始めていただいても問題ありません。
前編と比べると少し短くなっていますが、その分難易度が少し高いかもしれません。ぜひお楽しみください。
導入
あなたの目の前には、妖しくも力強く輝く宝石が埋め込まれたニンジャの石像がある。
あなたは、この謎の物体の扱いに困っていた。
売り払うにせよ、価値も知らないままではもったいない。
どうやって調べたものかと途方に暮れていた時、あなたの下を訪ねてきた者がいた。
「ドーモ、(あなたの名前)=サン。ヨドガワ・キョウミです。
…ワカル?ヨドガワだよ。あなたを雇ってた社長の娘。
あ、弔辞とかはいいから中に入れてくれる?話があるんだけど」
訪問者は、鋭い目つきの女子高生だった。
「ああ、やっぱあなたが持ってた訳だ、そのニンジャ像。
そもそも私が目を付けて買わせたアイテムだからね、アレ。
じゃ、報酬パパっと支払っちゃうから、それ返してもらっていい?」
あなたは消沈すると同時にどこか肩の荷が下りる感覚になった。
正体も分からないガラクタより、今使えるマネーが一番なのだ。
「…と、言いたいところだけど。
どう、ニンジャさん?更にボーナスを上乗せしてみたくない?」
あなたは、その話に乗る。
本編
序曲
数時間後、あなたとキョウミはニンジャ像を持って裏カジノにいた。
キョウミは、ギャンブルに興じている常識や法律が通用しなさそうな者たちに怯みもせず、一つのテーブルに向かった。
「ドーモ、コットー=サン。
約束のブツ、持ってきたよ」
そのテーブルには、いかにも仕立ての良いスーツ姿の紳士がいた。
傍らには、ハンニャ・オメーンの男。
「これはこれは。お待ちしておりました。
おや、そちらはお連れ様ですか、では改めてアイサツを。
ドーモ、イワクツキ・サークルのコットーです。
ニンジャ遺物の収集と研究をしておりましてね。
隣は…」
「ドーモ、デスオウガです」
オメーン男が名乗ったのは、明らかにニンジャネーム。
向こうも恐らく、あなたがニンジャである事に気づいている。
「おっと、あなたにはこちらの方が通りが良いですかな?
…あなたが殺したニンジャたちのボスですよ」
あなたは思わず身構え、オメーンニンジャも構える。
キョウミとコットーが手で制した。
「まぁまぁ、落ち着いて。
お互いただのヨージンボとして連れてきた訳ではないでしょう。
そうですよね、キョウミ=サン?」
「うん、大丈夫だから。
私はここに、ギャンブルをしに来ただけ。コットー=サンとね。
賭けるモノはもちろん、そのニンジャ像」
「…そして、命もですよ」
「あーハイハイ、それからお金もね。
とにかく、あなたには…このギャンブルのタチアイニンになってほしいの!」
あなたは困惑した。
ニンジャを従えるコットーが、ただの女子高生であるキョウミとのギャンブルを受ける理由が無いからだ。
それを問うと、コットーはため息をついた。
「キョウミ=サンに脅迫されてしまいましてね?
他のニンジャ組織を巻き込んだ彼女の手口はお見事でした、あなたにも見せたかったくらいですよ!」
他のニンジャ組織?あなたが訝ると、その答えはすぐに現れた。
…連続バク転をしながら。
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
そのニンジャはあなたと向こうのタチアイニンの間に入る。
「ドーモ、皆さん!
私はソウカイ・シンジケートの特殊業務部門。
中立的タチアイニンの役割を果たします、○○○○です!」
「勝負の最中、ギャンブルを行う私たちの安全は彼が保証してくれる。
敗者側の参加費はケツモチ代としてソウカイヤに払われるけどね」
コットーは苦笑して言う。
「まぁ、そういう事です。
やむなくハンコを押しましたが、身の安全が保証されるのは勝負の間だけという事をお忘れなく。
石像を得た後は早々に始末させてもらいます」
「あなたが勝てたら、だけどね」
キョウミは目の前の男やニンジャにも一切臆していない。
まるでニンジャなど見飽きているかのように…
「ていうか、あなたこそルール違反で消されないようにね?
そんな勝ち方じゃつまらないもん」
「…ははは、威勢のいいお嬢さんだ。
ご心配なく。そんな卑劣行為はいたしませんとも」
「このニンジャ像に誓える?
勝負をひっくり返したりしないって」
「はぁ?」
コットーはしばし虚を突かれて放心していたが、嘲笑を浮かべて頷く。
「……おっと失礼。
ええ、誓いましょう。勝っても負けても遺恨無しですよ」
静かな挑発合戦の末…ついにイクサが始まる。
智略
これからキョウミとコットーのギャンブルが始まる。
ギャンブルは【ニューロン】の数だけダイスを振り、6の数を比べて多い方が勝つルールになっている。
キョウミの【ニューロン】は13、コットーの【ニューロン】は12。
ただしこの数値は互いのイカサマで変動する。
あなたはタチアイニンとしてこれを補助ないし妨害すべし。
ギャンブルは3回勝負。
流れは自陣のイカサマ隠し→相手のイカサマ看破→実戦。
勝利数の多い方が勝ち、途中で勝利が確定しても3回全て行う。
敗れればキョウミは殺されるだろうが、あなたは辛うじて逃げ延びる。
暴力
「この私がギャンブルで敗北するとは…いやはやお見事!
さあ、その石像はお持ち帰りください!」
あまりにもあっけらかんとした様子に、あなたは眉をひそめる。
「…ただし、ここから出られたらの話ですが」
コットーの横、ハンニャ・オメーンのニンジャが立つ。
ソウカイヤのニンジャは既にケツモチ代を受け取ったものか、消えていた。
あなたは苦々しく思う。
このニンジャ…デスオウガ。明らかに強者。
◆デスオウガ(種別:ニンジャ)
カラテ 6 体力 8
ニューロン 5 精神力 5
ワザマエ 10 脚力 6/N
ジツ 0 万札 20
攻撃/射撃/機先/電脳 6/10/5/5
回避/精密/側転/発動 10/5/5/0
◇装備や特記事項
カタナ
タクティカルヘルム:【体力】+1
タクティカルスーツ:【体力】+1
●連射2
◉◉タツジン:イアイドー
◉ヒサツ・ワザ:ムーンシャドウ
「ゲーム後の安全まで考慮せずルール決めをしたご自分を呪いなさい。
大人を出し抜いた気になってさぞ得意だった事でしょう?
でもね、お嬢ちゃん。社会じゃ正しい者が勝つとは限らないんです。
自分の身は自分1人で守らなければいけないんですよ!」
高笑いするコットーを前に、キョウミの微笑は未だ崩れない。
「でも、あなた誓ったじゃない。このニンジャ像に『勝負の遺恨無し』と」
「誓い?それがなんだと言うのです!」
「この像はね、バクチ・ニンジャクランの遺物よ。
創設者のイチカ・ニンジャとバチカ・ニンジャは仲が悪かったけど、1つの信念だけは同じだった。
…『勝負の結果を覆す事なかれ』ってね」
キョウミ曰くこの石像は、その理念を体現した『平等のトーテム』であるという。
この像の前で不公平な勝負が行われた時、それは是正されるのだと。
「かつて正規の手段でこの像を購入した者が殺された時、これを横取りしようとしたモータルやニンジャは皆殺しにされた。あるニンジャによって。
…そう、あなたのことだよ」
女子高生はあなたの方を見た。
「あなたがあれだけのニンジャを相手に出来たのも、この像の効果があるんじゃないかな?」
実に奇妙である。
なぜモータルであるハズの女子高生が、これほどまでにニンジャ史に通じているのか?
「あなたこそ、生意気な小娘をやりこめてさぞいい気分でしょうね?
でも、残念。社会じゃ自分の発言には責任を持たなくちゃいけないの。
このニンジャ像の前で誓約までしておいて、そんな卑怯は許されない」
「ハハハ!ずいぶんとその石像に夢と希望を託しているようだ。
ですが私にとってはいくつもある収集品と変わらな……おい、どうした。
何をしている、デスオウガ=サン?」
「チィ…ッ!少し身体が重いだけだ、問題ない!」
序曲の章で【ニューロン】判定に成功していた者は、相手が明らかに大きく弱っている事が分かっただろう。
次の戦闘におけるデスオウガの攻撃難易度はHARDになる。
また、【カラテ】判定に成功していた者は、カラテの隙が目に見えて増えているのが分かるだろう。
次の戦闘におけるデスオウガの回避難易度はHARDから始まる。
デスオウガは、明確に動きが鈍っていた。
弱体版は以下の通り。基礎能力や回避能力がかなり落ち、スキルも機能不全状態にある。
◆デスオウガ(種別:ニンジャ)
カラテ 3 体力 6
ニューロン 3 精神力 3
ワザマエ 5 脚力 3/N
ジツ 0 万札 20
攻撃/射撃/機先/電脳 6/10/3/3
回避/精密/側転/発動 3/5/5/0
◇装備や特記事項
カタナ
タクティカルヘルム:【体力】+1
タクティカルスーツ:【体力】+1
●連射2
◉◉タツジン:イアイドー(不完全)
強化精密攻撃のみ使用可。痛打なし。
◉ヒサツ・ワザ:ムーンシャドウ(不完全)
発動条件が【6,6,6,6】になる。
◇背水の陣(回避が更に-3され射撃が出来なくなるが、強化精密攻撃時のダイスが2増える)
「フ…いいでしょう…こちらの暴とそちらの暴、我を通すのはどちらか決めようじゃありませんか!」
「いいよ。勝った方が正義ね」
さあ、戦いだ!
勝利した場合、あなたはデスオウガを始末する。
キョウミはその手にハンドガンを持ち、コットーの額に突き付けている。
「ありえない…こんな事が…実力ではこちらのニンジャが勝っていたはず…」
「往生際が悪いね。結果が全てでしょ?
石像の呪いを考慮に入れなかったあなたの落ち度でしょう」
「い、いいや!やはり聞いた事がないぞ、バクチ・ニンジャクランなど!」
「あぁ。うん、そりゃ嘘だし」
「……は?」
コットーは唖然としている。
あなたも唖然としている。
「私のゲン・ジツは言葉がトリガーになる。
言葉で思考を誘導し、ゲン・ジツの世界に引きずり込む。
あなたのニンジャが弱ってたのはそれが原因」
「は……!?馬鹿な、貴様はただのモータル……」
「そう見えるって事は、ちゃんと掛かってるんだね。私のゲン・ジツ。
何しろ弱ってるから、あの石像の助けがないとマトモにジツも使えなくて困っちゃうよ。
いちいちモータル相手にこんな回りくどい手段を使わなきゃいけないなんて」
驚愕しているのは、あなたも同じだった。
「じゃあね、傀儡のモータル。
あなたのバックにいるのが誰か知らないけどさ」
キョウミは引き金を引き、コットーを仕留めた。
「あなたもおつかれ。報酬は上乗せしておいたよ。
あっ、石像はまだ持っといてね、使うからさ。
次また呼ぶまで元気でね」
唖然とするあなたを差し置いて、女子高生は去っていった。
あまりに拍子抜けな、イクサの終わりだった。
リザルト
【万札】20、知略の章で全ゲーム勝利していた場合+10
余暇3日獲得。
最後に
いかがでしたか、ステータス次第ではかなりヒヤヒヤする場面もあったのではないでしょうか。
本来は前後編にするつもりでしたが、文章ばかりになってしまうので3つに分ける事になりました。
遊んでいただきありがとうございました。
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